大好きな敬語系俺様悪役キャラが過去編で出てた幼い頃の姿で逆トリップしてきたのでめちゃくちゃ溺愛します
大好きな敬語系俺様悪役キャラが過去編で出てた幼い頃の姿で逆トリップしてきたのでめちゃくちゃ溺愛します
私は、二次元の彼に本気で恋しています。
はじめましてこんにちは。私は小鳥遊夢。ふっくらとした体格とオタクで夢女子なこと以外はごく普通の中学生です。家族構成は叔父、叔母、叔父夫婦の息子である義弟。叔父一家はみんな揃ってちょっと天然でお人好し。私にも大変良くしてくれています。
さて、話は変わりますが、私はただ今絶望しています。というのも、最近嵌まっていた漫画の大好きな悪役キャラ、リュドヴィック・プロヴァンス…リュド様が漫画の中で死んでしまったのです。私は二次元の彼に本気で恋しています。好きな人が死んでしまったショックで、私は一ヶ月寝込みました。食事も喉を通らない毎日の中、そのまま夏休みに突入してしまいました。
私は夏休み初日、ついに部屋を出て久しぶりにちゃんとした食事を取り鏡を見ると、そこには実の母に良く似た美少女が映っていました。あー、痩せたら母似だったのかー。なんて思いつつ、全然喜べませんでした。だってリュド様が死んでしまったから。
リュド様は敬語系俺様悪役キャラで、見た目は烏の濡れ羽色の髪に黒曜石の瞳。目鼻立ちのはっきりとしたイケメンで、魔術の天才。世界征服を目論む悪役で、数多くの魔物やリュド様を崇拝する数少ない人間の配下を駒のように使い、主人公たちの前に立ちはだかるラスボスでした。性格はえげつないくらい残酷でありながら、信用した相手、懐に入れた相手にはめちゃくちゃ甘く、優しすぎるくらい優しい方でした。
スピンオフ作品である過去編では、幼い頃から顔立ちが整っている可愛らしい幼児で、性格は無邪気で知識欲旺盛。ところが、周りの大人たちに騙され、売られ、奴隷として買われ、魔術師に禁術の生贄にされそうになったのです。そして咄嗟の判断で魔術を発動し、魔術師を打ち負かすと魔術師の能力、知識などを奪って魔術師を殺し、もう二度とこのような悲劇が起こらない世界を作ろうと世界征服を目論むのです。
で、ですね。
今。
家の目の前に、幼少期のリュド様に良く似た男の子が倒れているんです。
ええええええええええええ!これどうすればいいの!?何!?逆トリップ!?逆トリップなの!?どうしてうちに!?ああああああああああ!とりあえず助けねば!
「き、君、大丈夫!?」
「…お、」
「お?」
「お腹が、空きました…」
…可愛いぃああああああああ!
「うちに来る?食べ物あるよ?」
「…?えっと…」
「とりあえずおいで、ね?」
「…、はい。ありがとうございます」
素直な言葉の割に警戒心バリバリです。これは魔術師に殺されかけた後ですね。
「どうぞ」
そう言って家に上げると、リュド様は土足で上がりそうになったので、靴はここで脱ぐんだよ、ここからはスリッパに履き替えるんだよ。と教えてあげると素直に従います。可愛いいいいいいい!
「叔母さーん!」
「はいはーい」
「この子がうちの前で倒れてたの、お腹が空いてるんだって。何か食べ物ちょうだい?」
「あらまあ、大変ねぇ、ちょっと待ってね」
叔母さんが料理を作ってくれました。リュド様は初めてみる料理に好奇心が刺激されたようで、いただきますをした後すぐに食事にありつきました。可愛らしい…天使…!
「あの」
「…?はい」
「私は小鳥遊夢。貴方は?」
「…あ、失礼しました。僕はリュドヴィック・プロヴァンスと申します」
やっぱり逆トリップだよやったああああああああああああ!
「あの、元いたところに帰る目処は立つ?」
「いえ、その…気がついたらここに居たので…」
自分でも不思議そうなリュド様。大丈夫、逆トリップなんてそんなものです!
「叔母さん、この子訳ありみたいだし、私の夏休みの間だけでいいからうちで引き取れないかなあ?」
「あらまあ。それは困ったわね。いいわよ、ちょうどうちの子の小さい頃の服もあるし、大丈夫でしょう」
天然な叔母はあっさり受け入れてくれる。叔母が天然でよかった!
「だって。しばらくうちで面倒を見るから、大丈夫だよ」
「あ、あの…なんで僕にそんなによくしてくれるのですか?」
「それはもちろん、リュド様が好きだからだよ」
「えっ…?」
「今は何もわからなくていいの。ただ、私に甘やかさせてくれないかな?」
「…はい」
ぃやったぁああああああああああああ!おっしゃぁああああああああああああ!
ということで、小鳥遊夢。この夢小説のような展開を楽しみ尽くします!
ー…
ということで、早速あの日から今日、即ち夏休み最終日までリュド様を甘やかしまくりました。
ある日は、髪を梳いてあげたり、ある日は膝枕をしてあげたり。ある日は手作りお菓子をあーんしてあげたり、ある日は一緒に本を読んだり。ある日は一緒にピクニックしたり、ある日は一緒に買い物に行ったり。ある日は耳掃除をしてあげたり、ある日は一緒にお風呂に入ったり。ある日はお祭りに一緒に行ったり、ある日は一緒にプールに行ったり。
とりあえず思いつく限り甘やかして甘やかして甘やかしまくると、リュド様も警戒心を解いてくれ、素直に甘えてくれるようになりました。
ですが今日が夏休み最終日。叔父一家はこれからもリュド様を家に置いてくれるでしょうか?そう不安になりながら私とリュド様の部屋に戻ると、リュド様はこっそりと隠してあったリュド様の出てくる漫画を読んでいました。
「リュド様!それ!」
「ねえ、ゆめ。これは予言書ですね?」
「えっ…えっと…」
予言書というか、漫画です。
「ゆめは、僕を助けるためにこの世界に僕を呼び出したのですか?」
「えっと…いえ、リュド様がここに来たのは私の力ではないです」
「そうですか。でも、この予言書。僕が死ぬシーンが、涙で滲んでいます。ゆめは、本当に僕が好きですね」
いつも通りの甘く溶けそうな優しい笑顔。自分が死ぬと知ってしまったのに…。
「ねえ、ゆめ。ひとつ賭けをしましょう」
「え?」
「もし、僕が元の世界に戻ってこの予言書の内容を覆したら、僕のお嫁さんになってください」
「えっと…?」
「僕は本気ですよ。だって、ゆめは僕の初恋の相手ですから」
「リュド様…!」
私とリュド様は抱きしめ合いました。すると、リュド様の体が突然輝き、宙に浮きます。
「…何者の仕業か知りませんが、そろそろ時間のようです」
「リュド様…っ!」
「ゆめ、約束ですからね」
「…っ!はい!」
そうしてリュド様は、多分元の世界に戻った。
ー…
結局。
漫画の内容は一週間経っても変わりませんでした。やっぱり、運命を変えるなんて難しいのかな。
そう思ったその時。私の体が突然輝き、宙に浮きます。
「リュド様だ!」
そうして私は、異世界転移…所謂トリップをした。
「ううん?ここは?」
「ゆめ!目を覚ましましたね!」
私が目を覚ますと、リュド様大人バージョンが目の前にいました。
「リュド様!」
「ああ、ゆめ!会いたかった!」
私はリュド様に抱きしめられ、されるがままにキスやハグを受け入れた。
「リュド様、漫画の内容は変わっていなかったのですが…」
「…漫画?ああ、あの予言書ですか。予言書ですから内容は変わらないでしょう。でも、僕は運命を変えました。主人公とやらも倒しましたよ。あの予言書に主人公の弱点が書いてありましたし」
「それじゃあ!」
「ええ。僕が死ぬことはありません。ゆめ、僕のお嫁さんになってください」
「はい、喜んで!」
天国のお父さん、お母さん。現実世界の叔父さん、叔母さん、可愛い義弟。私はなんだかんだとありそうですが、異世界で幸せになりました!
結果自分もトリップして溺愛されてます