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お友達のイカれ恋愛相談

(まじかよ……)


リルイットは、服を着替えたアデラから詳細を聞いた。


とんでもない、実にとんでもない話だった。


『俺……あの子のことが好きなんだ……』

『アデラ……』

『好きの使い方……合ってるかな……』

『あ……合ってると思う…』


もちろんわかった。彼の顔を見て、ひと目見て。


別人かと思った。

信じられなかった。彼があんな顔をするなんて。



アデラは俺に全てを打ち明けた。彼がリネって子の話をする時の、照れるような恥ずかしがるような顔といったら!!


(嘘だろ……あのアデラだぞ……)


俺が寝ている間に、何が起こったというのか…。


アデラは俺の同士だと思っていた。恋多き人間たちの中、こいつだけは俺と同じで、女を好きになんてならないと。


まさか先を越されるなんて、思ってもみない。というか…


『リル……あのさ……』


リネって子を好きになった挙げ句、あの子の寝てるそばでオ○ニーしただと?! 何じゃそりゃ!! 何やってんのこいつ!


と、けなしたいところだったが、どうやらそういうわけにはいかなかった。なんでかって言うと、このアホ、その自慰行為が何なのかもわからないっていうんだ。


(魔族はしねえんかな。そもそも性欲がねえんかな。知らんけど)


アデラはその事をすごく怖がって、病気かもなんて言い出したから、俺ももう顔を引きつらせるばかりで、当然笑えなかった。「男は皆やってる、普通だよ」って言ったら、安心した様子だったんだけど、またハァ…とため息をついたから「今度はどうした」と俺が聞いたら、またとんでもないことを言い出した。


「リネは、男が嫌いなんだ」

「はあ? 何だそれ。あのリネって子、お前のことがすげえ好きなんじゃねえの?」

「リネは…俺が女だと思ってる」 

「はぃい?」


(俺はまだ寝ているのか。こんな変な話ばっかり聞かされて、これは夢か。夢ですかい)


ほっぺをつねって確認したくなるレベルだけど、まあさすがに夢ってことはなさそうだからつねらないよ。さすがに夢と現実の違いはわかる。俺でもな。


俺は、アデラとリネの出会いから、リネがアデラを女だと勘違いしている経緯なんかも、まとめて話を聞いた。よくわかんないけど、うまいこと勘違いしたようだ。


「女が好きって…リネはレズなのか」

「何だそれ」

「女しか愛せない人間をそう呼ぶんだよ。同性愛者ってやつさ。生まれた時から女が好きなんだ。そういう人間なんだよ」

「じゃあリネは…俺が男だとわかったらやっぱり…俺から離れていくのか…」

「離れるかはわかんねえけど…好きにはなんないんじゃねえの?」


俺がそう言ったら、アデラは半泣きになりながら俺の肩をガシっと掴んで、激しく揺さぶった。


「それは嫌だ! どうやったら女になれる?!」

「はぁ? ちょっ、やーめーろっ!! 落ち着けって!! 男は女になれねえよ!」

「何故だ!! どっちも同じ人間だろ!! 何で俺は男なんだぁああ!!!」


(頭おかしい奴が恋愛して更にイカれやがったああ!!!)


俺はしばらくぶんぶん頭を揺さぶられた。俺は単純に首がイカれそう……。やっとアデラは手を止めると、俯いた。


「おい…落ち着けって……」


アデラの顔を覗き込んだら、彼が完全に泣いているのを見て、目が飛び出そうだった。


「な、何で泣いてんの…」

「うっ……ぅっ……」


(まじかよ…誰だよ……誰だよ、こいつぅっ!!)


涙に濡れながら真っ赤になっているアデラの顔は、やっぱり女にしか見えなかった。


失礼な話、彼に涙があることだって正直信じられなかった。


俺の知らない間にアデラの心は、人間に近づいているんだ。


俺よりも。


はるかに。


「アデラ様?! 一体いつになったら……」


再びバンっとドアが開いて、リネが部屋に戻ってきた。

ベッドの上で、アデラが俺に泣かされてでもいるようなこの光景。


「ぅっ…ぅっ……」

「いや、リネ……これは……違うぜ?」

「〜〜〜!!!!」


リネはふるふると拳をふるわせた。




「……何ですかそのケガは」

「リネに殴られた。50発くらい」


食堂にて。ラスコの前には、顔が真っ赤に腫れたリルイット。右耳を机につけて倒れ込んでいる。


少し離れたテーブルでは、アデラとリネが楽しそうにご飯を食べている。相変わらず気持ち悪いとりわけをしている。

リネはリルイットと目が合うと、鬼のように怖い顔で、左手の親指を下におろしてくる。


「メリアンさんに治してもらったら?」

「いい…。何かもう、それよりも、意味がわかんないことだらけだ…」

「そうなんですね」


ラスコは淡々とステーキを頬張っていた。


『とにかく、俺は…いや、()は、今日から女のフリをする!』

『はあ? 何わけわかんないことを…』

『私が男だと知ってるやつに口止めしてくれ! 頼む! リル!!』

『はぁああ?!?!』


おまけに変な頼み事までされた。どうせすぐにバレるっつうの。


まあでもこのわけわからん恋愛相談を、俺1人で抱えるには荷が重い。


「なあラスコ」

「何です?」


ということで、俺はまずラスコに、アデラの話を打ち明ける。


「えええええ!!!!」


(うんうん。その反応! 他人のを見てると、冷静になってくるな…!)


ラスコが発狂したので、周りのテーブルでご飯を食べていた騎士たちに、変な目を向けられた。すみませんとペコペコしながら、こそこそと2人は話を始める。


「あ、あのアデラさんが……」

「そうなんだよ…信じらんねえだろ」

「びっくりですね…」

「まあとにかく、アデラが男だってことは、口にしないようにしてくれ、って本人が」

「なるほど…。というかリネさん、レズビアンだったんですか」


思い当たる節はあります。男が嫌いというのもわかります。可愛いラッツさんにも愛想を振りまいていたし、男のゾディアスさんやトニックさんとはほとんど話をしようとしませんでした。


私に対しては……まあ、普通でしたね。


(レズビアンさんも、ブスに興味はありませんよね…。やっぱりモテるのはイケメンと美人! それはこの世の条理ですね!)


「ラスコ?」

「いえ、何でも!」


(ラスコのあの顔…また勝手に変な自虐してんじゃねえの……)

(まあ私には関係ありません! 恋愛なんて、もうしませんから! だってもう興味ないですから!)


「まあでも、ちょっと嬉しかったかな」

「え? 何がですか?」

「アデラが俺に、悩みを話してくれたこと」


義理も人情もないやつだと思っていた。違ったんだな。


「友達だからじゃないですか」

「え…」


ラスコはにっこりと微笑んだ。


「エーデルナイツの皆さんは、もちろん仲間ですけど、リルとアデラさんのことは、私、お友達だと思っています」

「っ!」


(そっか……俺たちはただの同士じゃない…。もう、友達なんだ…)


「リルは違いました?」

「ううん! 俺も思ってる! アデラは友達!」


リルイットが微笑んでそう言った。


「ラスコもな!」


ラスコは目をパチパチとさせたあと、にっこりと笑った。


2人はご飯を食べ終わって、食後のコーヒーを飲んでいた。


「そういやラスコ…」

「何です?」


リルイットは、改まったようにラスコに話しかけた。


「俺さ、眠ってる間に、変な夢見たんだ」

「夢ですか?」

「俺の顔が、すっげえブサイクなんだよ」

「ふふ! 何ですかそれ!」


(何の話かと思えば!)


ラスコはふふっと笑って話を聞いた。


「それで、すっげえ美人が出てくるんだけどさ、俺そいつのことが好きになるみたいなんだよ」

「……へぇ。知ってる人ですか?」

「ううん。その夢で初めて会うんだ。何かその美人と色々あったんだけど、夢だったからもう忘れちゃったんだよなぁ」

「そう…ですか……」


ただの夢の話なのだけれど、ラスコは何となくつまらなそうに、その話を聞いている。


「だけど覚えてるのは、そいつの声がさ…」

「はい……」


リルイットは、少し照れくさそうに言った。


「ラスコと一緒なんだ」

「え……?」


ラスコはびっくりした様子で、彼を見た。正直ラスコは嬉しかった。嬉しくて、心臓がバクついていた。


「な、何ですかそれ!」

「知らねえよ。夢だよ、俺の」

「わ、わかってますよ!」


(な、何焦ってるんですか私! たかが夢に!!)


「すっげえ美人なんでしょ! それは私じゃありません」

「だから、夢だって言ってんだろ。そんなに怒んなよ」

「怒ってませんよ!」


(本当に美人になれたらいいのに。だったら私……)


あれ、私、何を……。


「あ、そういや1つだけ思い出したわ!」

「何をですか? まさかまだ夢の話?」

「そうそう!」

「もういいですよ、その話は」


ラスコはそう言ったが、リルイットは構わず続けた。


「その美人がくれたトマトを食べたんだ!!」

「はあ?」


(夢だ。彼が見た、ただの変な夢)


まあ、彼の夢の中に声だけ出てきただけでも、光栄だ。それでいいか。


リルイットは自分でそう言いながらあははと笑って、それを見たラスコももう笑うしかなかった。


















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