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死神の群れ

「ふっ。どうだ? ()の馬の乗り心地は」

「なかなかいいじゃねえか! 気に入ったぜ!」


ラスコは内心ビクつきながら、アデラとゾディアスの様子を伺っている。

アデラは自分を()と呼ぶことだけは守っていたが、それ以外はいつも通りだった。


(確かに初見だと女の子に見えますよね……)


ゾディアスは何だか妙にデレデレしている。先ほどまでの威厳は、どこかに消えた…。


(顔がいいって、得することばっか……)


アデラさん男なんだし、私と交換してほしいですよ〜…。


「なあアデラ! お前付き合ってる男とかいんのかよ」

「いるわけないだろ。馬鹿か?」

「だったら俺の女になれよ! 一生楽して可愛がってやるぜ?」

「断る。私は誰のものにもならない。一生な」

「いいねぇ〜! ますます気にいったぜ!」

「ふん」


(……やっぱり嫌。このキモイおっさんに、たかられたくないですし)


「ラスコ、グラナディアを出せ」

「え? あ、はい……」


ラスコはしぶしぶグラナディアの果実をいくつか作り出す。

アデラはもちろん礼などなく、何も言わずにむしゃむしゃと食べ始めた。


「お! グラナディアじゃねえか! 食っていいのか?」

「ど、どうぞ……」

「便利だね〜植術ってのは。いただきますっと!」


(このおっさんの方が礼儀正しい……)


3人はグラナディアをガリガリと食べながら、話をする。


「そういや私たちが行くところって」

「ラスコだっけか? お前何も知らねえでついてきやがったのか?」

「そうですけど……」

「しょうがねえ嬢ちゃんだな」

「はぁ……」


(一応私のことも、女の子扱いはしてくれるみたいですけどね…)


ゾディアスはロクターニェについて話をした。


ここから南東に進んで、ポニーの足なら丸3日といったところらしい。

ロクターニェは美術概念の強いことで有名な国だ。その国自体が美術造形物のようにデザインされていて、建物は何と全て石で出来ているそうだ。

どこを切り取っても絵になるように、見事に造形されたその国は、観光地としてもあてがわれていた。

中でも有名な観光名所は、パルーヴ神殿とサファーヴ橋だ。


「問題はその橋だぜ」

「橋……ですか……?」

「ああ。サファーヴ橋の長さは3キロメートルほどある」

「なかなか長いですね」

「ふうむ」

「その橋の下は崖になっててな、ずっと絶壁が続いている。橋を越えねえと、それより南東の大陸にはいけねえんだと」

「そ、そもそも誰がどうやってそんな橋作ったんですか?」

「俺が知るかよそんなもん。ただサファーヴ橋はな、何百年も前からあったらしいぜ。自然にできたのか遥か昔に誰かが作ったのかわからねえが、その美術センスに惹かれた芸術家の男が、橋の造りを真似て、建築士たちと共にその場所にロクターニェ国を造形したらしい」

「国より前に橋があったということなんですね」


アデラはグラナディアを5つほど食べきると尋ねた。


「で? 橋に何の問題が?」

「は? アデラお前、依頼の紙読んだんじゃねえのかよ」

「私は文字など読めない!!」


ドヤぁっとアデラはゾディアスを見据えた。


「えっ、じゃあ今までどうやって1人で依頼受けてたんです?!」


依頼を受けると、その場所を受付人が読み上げてくれるのだ。

アデラはそれだけ聞いて、そこにいる魔族を手当たり次第に殺していた。らしい。


「がーっはっは! これまた驚いた! どれ、アデラ、俺が読み書きを教えてやろうじゃねえか」

「必要ない。読めるやつに読ませればいい。何か書きたいときは、書けるやつに書かせる」

「がーっはっはっはぁあ!!! おんもしれぇなアデラは! ますます気にいったぜ!!」

「………」


ラスコはハァとため息をついた。


(アデラさんが何か言う度、ゾディアスさんの中で彼の株が上がっていく…)


「橋を破壊した魔族がいる。崖の下に住むサンドゴーレムだ」

「が、崖の下?!」

「普通の人間じゃあたどり着けねえぜ。まあシルバにロッソを借りてもいいが、ここは南軍、つまり俺の領域よ。俺達南軍でカタをつけるのが筋ってもんさ」

「そういう……もんですか………」


(シルバって北軍のリーダーでしたっけ。ブルーバーグから帰った時にラッツさんに話しかけてた人だったはずです…。ロッソとは誰なんでしょう……)


「ふん! どんな魔族だろうと、私が皆殺しにしてやる」

「お! いいねぇ! アデラ! 強気だねぇ!」


アデラのいつもの調子づいた文句も、ゾディアスが囃し立てる。

ラスコは1人不安そうにしていた。


(サンドゴーレム……砂の魔族……)


砂だけでは本体に植術はかけられない。マッドゴーレムの時のように倒すことは無理でしょう……。

というか、アデラさんの矢もすりぬけてしまうのではないでしょうか……。


「まあ心配すんなラスコ!! この俺がついてんだ! 万が一にもやられるなんてことはあり得ねえよ! がーっはっはっはぁ!!!!」


そしてこのおっさんがどれだけ頼れるのかは未知だ。


(大丈夫だといいのですが……)


ラスコは進行方向を見据え、ふぅっと息をついた。

ポニーは足を止めることなく、南東に進む道を駆け抜けた。




「見えてきたんだわ」


ラッツはロッソからその滅んだ帝国を見下ろした。

リルイットもロッソの羽に手をかけると、おそるおそる景色を見下ろす。


「っ!!」


ひどい有様だ……。


崩壊した城には腐敗した巨人が未だに倒れ込んでいる。

街は粉々に破壊され、建物はどれも跡形もなく崩れ去っている。


(俺の家……)


俺が兄貴と、そしてシェムと住んだあの家も、もちろん跡形もない。

だけどこれを見ても、涙1つ出やしない。どうしてなんだろうか。俺は唖然とするばかりだった。


「リル……」


ラッツはリルイットがシピア帝国の出身だと、ラスコたちからも大体の話は聞いていた。ここは彼の祖国。


(酷い有様なんだわ…)


帝国は巨大なドーム状の、目に見える結界に囲われている。ラッツの聖結界だ。読めない文字が何やら書かれているが、その合間を縫って中を見ることはできる。


「ロッソ、ぎりぎりまで近付いてくれ」


シルバに命じられ、ロッソは帝国に向かって降下していく。


「あれか……デスイーターってのは……」


街中には、黒いローブをまとった何かがうようよ漂っている。そいつらは宙に浮いていて、結界の中をうろついている。


「死体が1つもない…」

「デスイーターに冥界に連れていかれたんだわね。そこで魂を食い殺されたに違いないんだわ」

「あの巨人は食わねえのか?」

「デスイーターは魔族は食べないんだわ。奴らのエサは昔から、人間の魂なんだわよ」

「……」


あいつらに食われたってのか…皆……。


「これ以上近づくと気づかれるよ。どうするラッツ」

「結界を狭めてあいつらをひとまとまりにするんだわ。そこに落とすんだわよ」

「おっけー!」


シルバは親指と人差し指で丸を作って、にこやかに答えた。


(ラッツが言っていた呪術か……)


「さぁ! 迫ってくるんだわよ〜聖結界があっ!」


ラッツが力を行使すると、白い結界は帝国の真ん中の城に向かって円を小さくしていく。

それに気づいたデスイーターたちは、焦って結界から離れていく。


「結界って、中にいると効果がかかるんだろ? 防寒結界みたいにさ」

「それとはまた別の種類の結界なんだわ。聖結界は言うなればバリアみたいなものなんだわ。白い光が目に見えるでしょ?」

「見えるけど…」

「あれは、聖なる光属性の力を持つんだわ。デスイーターは触れるのを嫌がるんだわよ」

「ふぅん……。じゃあそのままデスイーターに触れさせて倒したら?」

「結界はあくまでバリア。あいつらを殺すほどの力はないんだわ。だけどアホなあいつらは、痛みを負ってまであそこから出ようとはしないんだわよ」

「そうなのねぇ…」


そうこう言ってる間に、結界は城壁の周りを囲うほどになった。デスイーターは城の内部にうじゃうじゃと集まった。俺が毎日訓練した場所にも、あんなにたくさん…。ったく、どこからそんなに湧いてきたんだか。この数……もはや数え切れない!


「このくらいでいいんだわ?」

「うん! ちょうどいいね!」


シルバは微笑むと、ロッソの上からデスイーターの群れを見下ろした。


「全員倒しきれなかったら、リルイット君、あとは頼むね!」

「えっ?」


シルバはそう言うと、その手のひらを空に掲げた。

そのタイミングで、聖結界の屋根の部分をラッツは消し去った。


「……!!」


瞬く間に帝国の上部に暗雲が立ち込める。真っ黒な雲は稲光を帯び、バチバチ…っと音を鳴らしている。


(これか……!)


「落とすよ!」


激しい光と共に、デスイーターの群れに向かって巨大な雷が落ちた。耳を塞ぎたいほどの音が目の前で鳴り響いた。


(ひょお〜……)


想像以上の迫力だった。


何本もの目に見える稲妻が、次々に降下して大爆発を起こした。大きな煙が上がって、その風圧が空の上のリルイットのところまでも届いていた。目をつぶりたくなるほどの風だ。無意識にリルイットは顔の前に腕をやった。


雷を受けたデスイーターたちが、瞬く間に倒れていくのが見える。彼らのローブは黒焦げになってボロボロになり、彼ら自身はバラバラの砕かれた骨となって、やがて灰のように消え去った。



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