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魔族討伐騎士団・エーデルナイツ

「リル! えっと……ア、アデラさん?!」

「ラスコ…?」


全身打撲で動けなかったアデラの元にやってきたのは、ラスコだった。リルイットは未だに気絶している。


(か、髪が短いので…一瞬誰かと……。いや、それよりも)


「何ですかそのケガは!」

「ラスコ、何でここに……」

「術で植物の皆さんに頼んで探してもらったんですよ! お2人が全然帰ってこないので心配になって!」

「……」


(助かった……か……)


アデラは一安堵すると気が抜けたのか、そのまま眠ってしまった。


「ちょ、ちょっと……」


リルもアデラさんも2人共……一体何があったというのでしょうか……。


ドワーフたちはリルイットが燃やしきってしまった。その地下空間には自分たち以外は誰もいないようだ。


やむなくラスコはポニーを呼び出すと、2人を乗せて、出口へと向かった。





すごく心地よかった。

すごく懐かしい感じがしたんだ。


俺の身体中に巡るのは、彼女の血と相違ない。


身体が熱く…いや、温かくなるんだ。

例えば安らかな春の日差しみたいに、俺の心をポカポカと温めてくれる。


『スルト』


彼女が俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。

彼女はすごく綺麗な人で、俺はそれがすごく、嫌なんだ。


だって俺は、すごく、醜い姿をしているからさ…。


『生まれ変わったら…この姿にはなりたくない』


彼女に釣り合う…姿になりたい……。


『リル……』


(そうだよ。俺はリルイット……)


そう。俺はリルイット。俺は生まれ変わった。

俺はもう、醜くなんてない……。



悪夢にうなされるように、リルイットは顔をしかめている。


「リル?」


(彼女と同じ……声がする……)




「リル? 大丈夫ですか? リル…?」

「っ!!」


リルイットは目を覚ました。


「リル……!!」


目を開けると、ラスコが顔を覗かせていた。


「あれ……俺なんで……」


リルイットは起き上がった。どこかの部屋のようだが、最後に泊まった宿屋ではなさそうだ。


「良かった…目を覚ましてくれて。もう起きないのかと思いましたよ!」

「あれ……? 俺また気絶しちゃってた…?」

「はい。1ヶ月近く眠っていました」

「い、1ヶ月ぅ?!?!」


その期間の長さに、リルイットは顔を引きつらせた。


(この前も2週間気絶したって言ってたよな……。一体何が起こってそうなったんだ……くそ……)


腕にはラスコの植術らしき点滴がついている。これでまた俺に栄養を送り続けてくれたに違いない。


そんなにも長い間眠っていたから、記憶がぼやける。

だけど確か、ドワーフたちに拉致されて地下空間にいたような……。そうだ、そこでアデラが……。うん? アデラ…?!


「あ、アデラは?!?!」

「アデラさんなら魔族討伐の依頼から帰ってきたところですよ。今報告に行っているので、もうすぐ報酬をもらって帰ってくると思いますけれど」

「……?!」


すると、ガラっと部屋のドアが開いて、アデラが入ってきた。


「ア、アデラ……」

「やっと起きたか、リルイット」


アデラは袋にたんまり入った金貨を、机の上に乱雑に置いた。


「な、何だその金……」

「報酬金だ。魔族を殺してもらってきたんだ」

「へ……?」


(何の話なんだ……? さっきから……)


「ちょおちょお、さっきから何なの! 依頼とか! 報酬とか!」


ラスコはふふっと笑った。


「私たち今、魔族討伐騎士団【エーデルナイツ】に所属しているんです!」

「エーデルナイツぅ?! 何だそれ」

「魔族討伐騎士団と言っただろ」

「いや、だから何なんだよそれ!」


すると、再び部屋の扉がガラっと開いた。


「おおお! ようやく起きたんだわね! イケメンリル!」


ひょうきんな様子の見知らぬ女の子が中に入ってくると、リルイットと顔を見合わせた。

明るいクリーム色の髪のツインテールが、クルクルとカールしている。お人形みたいなぱっちりとした目を、さらにぱちぱちと瞬きさせる。


「良かった良かった! メリアンの療術をかけたってのに一向に目を覚まさないから、心配したんだわよ!」

「だ、誰だこいつ……」


やたら背の低いそのツインテールの少女は、どんっと腕組みすると、何だか偉そうに答えた。


「あたしはラッツ・マクラス。エーデルナイツの幹部なんだわよ!」


リルイットは白けた目でその少女を見ていた。


(こいつがあ〜? すげえ弱そうなんですけど……。ていうか子供だし)


「起きてすぐのところ悪いんだけどもねぇ、大陸西部の氷山ブルーバーグの魔族を討伐してほしいんだわよ」

「ひょ、氷山ですか…」

「どうしたのブスコちゃん。寒いところは苦手なんだわ?」


(ぶ、ブスコちゃん?!)


リルイットは顔をしかめた。


「だから、ブスコじゃありません! ラスコです!」

「ブスなんだからブスコでいいんだわ。このあたしに口出しするんじゃないんだわよ」

「むむ〜……」


(おいおい、何だこのガキ……)


ラスコはムスっとしていた。

自虐はよくても、人に言われるのは嫌である。


そんなにラスコはブスでもねえとは思うんだが…。まあでも、このガキが性格ブスってのは間違いなさそうだ。


「報酬ははずむんだろうな」とアデラ。

「モチのロンだわよ! この前のダイアウルフの5倍は出るんだわよ!」


ラッツは手をパーにして、5倍の5をドンッと表してみせた。


「よし、すぐに向かうぞ」


アデラは何故かわからないが乗り気で準備をしだす。


「ちょっと…意味がわかんないからさ、なにもかも…」

「説明はむかいながらするんだわ、イケメンリル!」


さっきからなんだよ、その呼び方……。

喋り方変だし…。


ラッツはリルイットに近づくと、ニヤニヤしながら彼の腕を引いた。


「ちょっと…」

「うふふ! 早く行くんだわよ!」

「ラッツさんも来るんですか?」


ラスコが驚くと、ラッツはうんと頷いた。


「そうだわよ〜ブスコちゃん。ブルーバーグにはどうやら大物がいるみたいなんだわね」


ラッツはにんまりと笑ってそう言った。




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