宝石商
頭に浮かんだイメージのまま書いたら、短編になってしまいました。
ギャンブルで大勝ちし、一夜にして大金を手に入れたとある男が、宝石商の露店に立ち寄っていた。
「お客さん、今日はどんな物をお求めで?」
「俺は昨日から金持ちになったから、そんな俺に相応しい宝石を探しててね。このダイヤが本当に綺麗で素晴らしいんだが、値段が生憎値段がなぁ。旦那、未来の大富豪に投資だと思って少しばかりまけてくれねえか?」
そう浮かれきった事を言う男に対し宝石商はこう返した。
「ではお客さん。1つゲームをしましょうや」
そう言って懐から1つの箱を取り出す。
「ゲーム?」
「はい。こちらの箱には今お客さんが気になっておられますダイヤモンドに良く似た人工ダイヤが入っております。この2つの中から見事天然のダイヤを当てて見せましたら半額でお売りしましょう」
「半額!?それは良い!是非やろう!」
男の決断は早かった。
「わかりました。それでは………どうぞ」
宝石商は目にも止まらぬ早業で2つのダイヤを混ぜ、男の前に置いた。
「それじゃあ……コイツだ!」
男は自信満々に右のダイヤをつまみ上げ、掲げてみせた。
それを見た宝石商は深いため息を吐く。
「完敗ですお客さん。お見事ですよ」
こうして、男は半額で目当ての宝石を買うことに成功した。
ギャンブルの勝利と目利きの成功で有頂天の男は、ダイヤを指でつまみ、散々眺めた後に眠りについた。
次の日、男はドアをノックする音で目が覚めた。
「Aさん。Aさん。少しお話を伺いたいのですが」
迷惑な客もいたもんだと、寝惚け眼でドアを開ければ
そこにいたのは2人の警察官だった。
「………あのー。一体何の御用でしょう?」
「今から1週間程前、◯◯宝石店の最高級ダイヤが盗まれたのですが、その犯人が貴方であると通報がありまして———」
「見つけました!このダイヤです!」
1人目の話し始めと同時に家に入ってきたもう1人が持
ってきたそれは、昨日男が宝石商から買ったダイヤであった。
「………これは一体どういう事でしょうか?」
「……知るか!俺は昨日このダイヤを買ったんだ!」
「ではその証拠になる物は?」
警官からの冷静な返答で、男はあの宝石商から契約書も何ももらっていない事を思い出した。
「ねっ……ねえけど!じゃあその店まで連れてってやるよ!来い!」
男は寝間着姿のまま警官の腕を掴み露店街まで全力で走った。
両者息も絶え絶えに、露店のあった所まで辿り着く。
「はぁ、はぁ………それで?その店ってのはどこにあるんだ?」
しかし、露店街にその宝石商はおらず、跡形もなく消え去っていた。
どんな事に対しても安価で手に入るのは喜ばしいものですが、しかしそれ故の落とし穴もあったりする訳です。
ネット通販だと特に。
例えば、送料が安くならない。とか。
そんな感じのお話でした。
お互い気をつけて行きましょう。