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やさぐれ王子と無表情な婚約者  作者: 千山芽佳
第三章

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合流

 

 ウィルロアはカツラで金の髪を隠し、その上からフード付きの外套を目深に被って王都の街を歩いていた。

 下手に動き回って見つかっては元も子もないが、今すぐ王城に乗り込むには情報が少なすぎた。

 先ずは動けるうちに下町に向かい、見知った仲間を訪ねてみようと思う。

 キリクはオルタナ領から王都に戻っただろうか。ゼンの行方が分かれば尚いいのだが……。

 ウィルロアが周囲を警戒しながら角を曲がると、走って来た集団の一人と肩がぶつかった。


「わり!」

「おい急げ!」


 次から次へと人々が教会の方へ走って行く。ウィルロアは戸惑いながら顔だけは見られないようフードをきつく絞って耳を傾けた。


「カトリ様がお祈りにいらっしゃるそうだ」


 下町に向かっていたはずのウィルロアの足が止まる。

 旅の間はカトリのことを極力考えないようにしていた。両国民のこと、デルタ城へ無事潜入すること、キリクとの交渉、やるべきことだけに集中しようと努めた。

 不本意な形で婚約者であるカトリと引き裂かれた。久しぶりに聞くその名に心動かされてしまうのは仕方がなかった。


「……」


 駆け出したい衝動を賢明に抑え込む。

 頭では分かっていても、心は簡単には言うことを聞いてはくれない。

 ロイとサックスもいない中で、いつ捕まってもおかしくない状況。作戦が失敗して命を落とす可能性があるのなら、せめて、最後にもう一度だけ、遠くからでもいい。彼女の姿を見るくらい許されるのではないか。

 身勝手な解釈は縛りを解くのに都合が良かった。

 ウィルロアは振り返り、方向を変えて感情の赴くままに歩き出した。

 ずっと荷馬車で移動していたので体は強張り鉛のように重かった。それなのに、今は背中に羽が生えたように軽い。肺に飛び込んでくる鋭い空気さえ心地良く感じた。

 会いたい。

 カトリに、会いたい。

 ゆっくりとした歩調は徐々に速くなり、気付けば駆け出していた。



 教会の前には多くの市民が集まっていた。

 規制が掛けられ、王女の出迎えに聖職者や貴族が待機し、沿道は市民で溢れ厳重な警備が施されていた。

 デルタ兵に見つからないよう、後方を移動しながらウィルロアも群衆に紛れる。

 まだカトリは到着していないらしい。喧騒の中で人々の会話が否応にも耳に入った。


「ラステマの第一王子が服毒自殺したんだと。王女は追悼の祈りを捧げるらしい」

「謀反を起こしたらしいな。粛清されたんだろ」

「キリク王子は戻られたがユーゴ殿下はどうしたんだろうな」

「伯爵の急死には驚いたな」

「国境付近の住民は住む家を捨てて移動したとさ」


 人目を避けて荷馬車で移動していたウィルロア。人々の話はほとんどが預かり知らぬものばかりだった。

 兄上……。

 心臓が抉られたように締め付けられて胸を押さえ付ける。

 目的であるキリクは王城におり、ユーゴの婚約者シシリ嬢の父親が急死した。牢獄に捕らわれた兄アズベルトの自害を耳にし、ウィルロアは歩く事さえ困難になる程動揺していた。

 耳を塞ぎたくなる話ばかりなのに、関係なくざわめきは大きくなってウィルロアの心を抉る。

 依然両軍は国境付近で睨み合いをし、いつ開戦の火蓋が斬られてもおかしくない状況。ウィルロアと護衛二人の手配書が国中にばらまかれ、懸賞金が掛けられている。そして、ウィルロアとカトリの婚約が破棄されて――。


「オルタナ公子様がご一緒とは仲睦まじいな」


 カトリに、新たな婚約者が浮上していた。


「婚約破棄で失意の王女様に寄り添って差し上げたそうだ」

「それなら近々お二人の婚約話も聞けるな」

「それはどうかな。首都の貴族は誰もが空席を狙っていると聞いたぞ。ほら、王女様と接点を持とうとあそこで待ち構えているのは年頃で未婚の男性ばかりだ」

「なんだ一波乱ありそうだな」

「まあ、和睦の中止と戦争で世間が暗い話題の中、王女様の婚約は明るい話でいいやな」

「おい来たぞ!」


 王都に一際大きな歓声が響いた。

 先導する護衛の騎馬隊が悠々と登場し、馬車を守るように囲む。王家の紋章入りの馬車の後ろには、オルタナ公爵家の馬車が続いていた。

 体が拒絶しているのか、歓声は徐々に遠ざかり、ウィルロアはその場に一人で立っているような、静寂に包まれていた。

 目の前を通りすぎていく馬車を眺める。

 手を伸ばせば届く距離なのに……、遠かった。


「……」


 来るべきではなかった。

 迷いが生まれるくらいなら見に来るべきではなかった。

 ウィルロアは視線を落とし、その場を立ち去ろうとした。

 馬車が止まり一際歓声が上がる。カトリが馬車から降りたのだろうか? 悪あがきに一目、カトリの姿が見られたならと振り返る。

 視界の片隅で一瞬だけ、カトリではない、デルタ兵と目があった気がした。


「!」


 ――まずい!

 正気を取り戻してフードを被り直し、踵を返して急いで群衆から離れた。


「待て!」

「!」

「あの外套の男を追いかけろ!」


 気付かれてしまった!

 後方でデルタ兵の叫び声とざわめきを背に、とにかくこの場から離れようと急ぐ。

 曲がり角を使って路地をひた走る。

 懐から自害用の長針を出し、万が一に備えて強く握った。


「はっ!」


 追手を撒くのに夢中で闇雲に走った結果、高級店の並ぶ大通りに出てしまった。

 この見通しのいい大通りを無事に抜けられるだろうか? ウィルロアの着ている平民用の旅装では悪目立ちしていた。


「どこに行った!?」

「あっちだ!」


 門の向こうから声がする。

 どうする!? デルタ兵はすぐそこまで来ているのに隠れる場所がない!

 逃げ場を失ったウィルロアが彷徨っていると、前から走って来た男に突然腕を掴まれた。

 軍人ではなかったが、頬に十字傷のある男は洋装店の扉を開け、ウィルロアを中に押し込んだ。


「ーーっ!」


 勢いのまま尻もちをついてしまい、驚いた顔の店員と目が合う。咄嗟に静かにしてほしいと人差し指を立てた。

 ウィルロアを店内に押し込んだ男は扉を閉め、自身は外の扉の前で佇んでいた。

 直後デルタ兵が男を呼び止めた。ウィルロアは間一髪で姿を見られなかったようだ。


「すみません。こちらに茶色の外套を纏った碧眼の男を見ませんでしたか?」


 店員と目が合う。ウィルロアに人差し指を立てられた店員は言われた通り口を抑え静かにしていた。


「……」

「……」


 店員はウィルロアを上から下に見て、「はっ!」と目を見開いた。

 人差し指に力が籠る。今この人に声を上げられたら一貫の終わりだ。


「茶色の旅装ですか? 見ていませんね。この辺り旅人がいたら目立つと思いますけどね」

「そうですよね」

「何かあったのですか? 私は公爵家の護衛をしているバラゴです。身分証はここに」

「それは気付かず失礼しました。実は手配中のウィルロア王子に似た者を見まして、追っているところです」

「そうでしたか。私もお手伝いしたいところですが用事がありまして、お力になれず申し訳ない」

「いえいえ」

「あの、バラゴ殿はどうしてこちらに?」

「公子様に王女様へのプレゼントの下見を頼まれました」

「そうでしたか!」

「王女様と公子様がうまくいくといいですね」

「ありがとうございます」

「ご協力感謝します」


 兵士達は「こっちには来ていないようだ」「反対側の下町の方に行ったかもしれないな」と言って来た道を戻って行った。

 ほっとしたのも束の間、目の前の店員と再び目が合う。静かにしてくれたお陰で難を逃れた。

 人差し指をゆっくり下ろし、どうしようかと考えていると店員がラステマの儀礼に則ったぎこちない礼をとった。


「?」

「こんなに美しいお方に出会ったのは初めてです! どうか私のミューズになっていただけませんか!?」


 は? ミューズ? 男がなれるもんなのか? 聞いたことねぇぞ。


「……無事に、ここを出られたら?」


 とりあえず店員は何とかなりそうだった。

 十字傷の男、バラゴが店内に戻り、店員に声をかけると奥から出て来た店主に話を付けて衣裳部屋を借りた。

 ウィルロアと共に中に入り、扉を閉める。


「無茶をしますね。追われる身という認識はあるんですか?」


 男は開口一番に苦言を呈した。まるでウィルロアと知って助けたとでもいうように……。


「バラゴ……、あのバラゴか?」

「お互い名前は知っていても、初めてお会いしますよね」


 ウィルロアは頬に傷のある男、バラゴをじっと見ながら頷いた。顔は知らないが名前は知っていた。

 バラゴ。かつて下町のリーダーだった男で、ドナが憧れていた。彼は兵士見習いに受かって貴族の私兵になったと聞いた。


「オルタナ家で働いていたのか」

「はい」

「そうか……。名前だけではない、おぼろげだが記憶がある。崖から落ちた私を助けたのは君だな?」

「はい」


 ウィルロアはずっと気がかりだった友の事を訊ねた。


「あそこにドナもいたんだ! ドナは怪我をして――」

「ドナは無事です」

「本当に!?」

「私が小屋に着くと小隊長とドナが気を失っていました。二人共軽症だったので隊員に任せ、急いであなたを探し崖下で発見したのです」

「そ――」


 そこにゼンもいなかったか?

 出かかった言葉を飲み込む。

 バラゴが発見したのはドナと小隊長だけで、ゼンの名前は出てこなかった。ドナだけではなく小隊長も気を失っていたのなら、二人を寝かせていたのはその場にいないゼンなのだろう。

 余計なことは言わない方がいいと判断し、口を噤んだ。


「お静かに」

「!」


 二人が衣装室を使っていると、今度は店内の方が騒がしくなった。

 追手が来たのかと身構えた瞬間、大きな音と共に扉が蹴破られた。


「わっ!?」


 目を開けた時には背中が目の前を塞いでいた。

 ーー早い!

 侵入者はバラゴを床に倒し、剣を突きつけてあっという間に制圧した。


「っしゃあああああ殿下ああ!!」

「!?」


 まさか――!


「ぃやっと見つけたぁぁ!」

「ご無事ですか!?」


 本当に!? 生きていたのか!? 


「ロイ! サックス!」


 俺の護衛は見捨てずここまで追ってきてくれたのか! 嬉しい心から感動――。


「クソが死ねーー」

「わぁ!! 待て待て待て待て彼は私の知人だぁ!」


 感動に浸っている場合ではなかった。慌てて二人を止める。


「え?」

「マジ?」

「彼は私を助けて匿ってくれていたのだ!」


 ロイが塞いでいたバラゴの口を離し、剣を下ろした。


「……失礼、しました」

「ごほっ、いや、大丈夫」


 気まずそうにロイが手を差し出し、バラゴを立ち上がらせる。

 背中を向けていたサックスが、「お怪我は!?」と言って振り返った。


「――っ」


 間抜けな顔の二人を見て、ウィルロアはくしゃくしゃに顔を歪めた。たぶん俺も間抜けな顔になってる。


「っ無事でよかった!」


 嬉しさのあまり子供の様にサックスの背中に抱きついた。


「……泣くなよ?」

「こんなん泣くだろぉー?」

「まあ、殿下も泣いてるしいいか」


 一週間ぶりの二人の軽快なやり取りに懐かしさを感じて笑みが零れる。

 粗暴で少し抜けた護衛は、ウィルロアの中でいつの間にか頼りになる存在になっていた。


「王子の護衛二人ですか。何故ここが分かったのですか?」


 感動の再会も束の間、バラゴが二人に訊ねた。


「店の前に殿下の長針が落ちていました」

「長針?」

「あ」


 握っていた長針は、バラゴに引っ張られた拍子で店の前に落としてしまったようだ。


「唯一の武器落したら駄目じゃないですか」

「帰ったらがっつり稽古しましょうね」

「はは、は」


 軍にはまだ居場所を悟られてはいないようだが、時期に追手は迫るだろう。


「殿下。兵士が戻ってくる可能性があります」

「安全な場所に移動しましょう」

「しかしどこに……」


 ウィルロアが王都にいるのが知られてしまったなら、デルタ軍は街中をしらみつぶしに探すだろう。


「あのー」

「!」


 四人が考えていると、蹴破られた扉から金髪碧眼の少女が顔を出した。


「ファナ!?」

「俺達を追って来たのか」

「どうしたんだ」

「あの、私にも何かお役に立てることはありませんか? お困りなら劇場に来てください!」

「……気持ちは有難いが、劇団の皆さんにこれ以上迷惑はかけられない」

「殿下、それなんですが――」


 サックスから、商人はデルタ兵によって殺されたことを聞かされた。張り込んでいた二人が殺害の現場を見たそうだ。その限りではウィルロアを逃がしたのが劇団員達だとは知られていないようだ。

 そしてバラゴも、兵士三人がウィルロアを王都に呼び寄せた事を口外しないだろうと言った。軍命に背いて自分達の利益を優先した奴らだ。保身のために黙っているだろうと。


「それでも私が王都に入り込んだことは既に知られている。どこにいても探されるだろう。それなら今すぐにでも王城に向かうべきだ」


 どの道一人でも王城を目指すつもりだった。ラステマを出た瞬間から決意は定まっていた。それはロイとサックスも同じで大きく頷く。


「街中に警備が張り巡らされている中ではさすがに無謀です。王城に辿り着く前に捕まって終わりですよ」


 バラゴが苦言を呈す。ファナが「それなら私を使ってください!」と身を乗り出した。


「私が殿下の振りをしてデルタ兵を引き付けます。その隙に皆さんは王城へ――」

「だめだ。大事な民を巻き込むわけにはいかない」

「……いや、ありかもしれません」


 反対するウィルロアにバラゴは名案を思いついて提案する。


「この子に協力してもらいましょう。私が身の安全を保障します」

「どういうことですか?」

「王城とは反対側に向かってデルタ兵を引き付けるのです。後は私がこの子を保護したと言います。デルタ軍が見たウィルロア王子は、この子だったと思わせるのです」

「なるほど。金髪碧眼のファナなら、華奢な殿下と見間違ってもおかしくはない」

「軍の勘違いだったとするんですね」

「はい。この子に害が及ばないよう、私が最後まで付いて守ります」


 確かにそれならファナの危険も少ないし、デルタ軍の捜索を撹乱できる。


「それでも王都の警戒が解かれるには数時間はかかります。正直、解除を待っている暇はないと思います。軍が睨み合いの中、王弟派にも動きがあり戦争を止めるなら直ぐにでも動いた方がいいです」

「任せてもいいのか?」

「これ以上の手助けは難しいですが」


 バラゴにも立場があるというのに、既に十分すぎる手助けをしてくれていた。


「何故デルタ人のあなたが協力を? 殿下を助けて下さった理由はなんですか?」


 ロイが疑問に感じて訊ねる。バラゴを信用してもいいのか確認も兼ねていた。何故協力してくれるのかはウィルロアも疑問に思っていたことだ。


「もしや、私の友人が君に助けを頼んだのだろうか」


 下町のリーダーだったバラゴ。同じ下町の友人だとドナがいるが、山小屋で身を呈して逃がしたならドナにとっても予期せぬ事態だったはず。それならゼン? あの時、ウィルロアとドナを助けに小屋に駆けつけてくれたのはゼンだ。


「いいえ。どちらでもありません。私の主人があなたを気にかけておいでだったので、独断で実行しました」

「オルタナ公爵が私を?」


 まさかのオルタナ公爵が関係しているとは思ってもみなかった。


「ご本人が指示を出したわけではありません。閣下は公爵にして将軍の任があるので国の命令に背くわけにはいきません。しかし交流のあった王子をなんとかラステマに帰したがっておいででした」


 だからバラゴは主の意を汲んで独自に動いたという。しかし何故オルタナはウィルロアを帰そうと思ったのだろう。


「私の感じるところでは、閣下は王子に二つの恩を感じているようでした」

「恩?」

「一つは王妃様を救っていただいたこと。もう一つは、ご子息のお心を変えてくださったことです」

「小公爵には……会ったことはないはずだ」


 オルタナ公子は現在カトリが最も頼りにしており、婚約者の最有力候補だと聞いた。心の中で舌打ちをする。


「王子の国を想うお姿に感銘を受けたのでしょう」


 そういうものなのかと、複雑な思いで受け止める。


「閣下はウィルロア王子をラステマに送り返すつもりでした。山小屋を囲んでいた小隊長には保護を命じていたはずです。折を見て私が逃がすつもりでしたが、護衛にも逃げられ行方が分からず、王子が足を捻挫していたので一人で逃がすわけにもいかないと、正体を伏せて急遽商人を雇いました。まさかラステマではなく王城に向かってくるとは思いませんでしたが……」


 バラゴが苦笑する。


「では最初から殿下に危害を加えるつもりはなかったと?」

「はい。あなた方も同様に捕えて追い返すつもりでしたが……、随分と暴れてくれましたね」


 ロイは目を反らし、サックスは肩を竦めた。


「だが頼んだ商人は悪徳だった。殿下を軍人に売ったんだぞ」

「それは申し訳なかったです。商人を選定している暇もなくて、完全に私の落ち度です」

「ファナ達の機転のお陰で助かった。もちろん、バラゴにも感謝している」


 ファナはウィルロアに微笑みかけられ、色白の肌を赤く染めた。


「街に降りたらいるはずのない商人が死体となって転がっていたので驚きました」


 そこではじめて商人が裏切り、ウィルロアがラステマへ帰らず王都にいると知った。


「王子が捕まったという知らせもなかったので、身を隠しているのだと探しておりました。デルタ兵よりも先に見つけてよかったです」

「その後に俺達が来たってわけか」

「はい。乗りかかった船でここまでは協力しましたが、これ以上は国を裏切る行為になります。最後に、この子の願い通り王子の安全を少しでも払拭して引かせていただきます。勿論、これまでのことも口外はしません」


 ロイとサックスは話を聞いて納得し、ウィルロアもファナに危険が少ないならとお願いすることにした。

 サックスが店主を呼び、三人分の服を見繕ってもらうよう頼んだ。王城へ向かうのに旅人の格好のままでは悪目立ちしてしまうからだ。


「店主、殿下に着替えを用意してくれないか。王城にいてもおかしくない格好だ。行政官か貴族に見えるよう頼む」

「それなら打ってつけの変装があります!」

「そうか。では頼む」

「我々は侍従に扮します。逃亡中に拝借したものがあるので」


 店主が用意している間にウィルロアはファナに外套を渡した。 


「どうかご無事で」

「成功を祈ります」

「ありがとう。二人も気を付けて」


 バラゴとファナは王城から離れた場所までデルタ兵をおびき寄せるため、先に洋装店を後にした。

 ウィルロアは振り返り、ロイとサックスと自らを鼓舞した。


「さぁ目立たず急いで王城を目指そう!」




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