大事なのは男同士の気遣い
朝靄が残る早朝に、王都から王城を繋ぐ桟橋が下りて要人の到着を知らせた。
エーデラルから王城へ戻ったウィルロアを、マイルズが出迎えた。
「おかえりなさいませ。随分早く出立されたのですね」
「うん……。どうせ眠れやしないから、早めに出て来たよぉ」
目をしぱしぱさせながら俯き加減に話す主は、一日で戦に出た戦士のように疲れ果てていた。
「随分お疲れのようですね。お部屋でお着替えと湯あみのご用意をしております」
「ありがとー。でも部屋に戻る前に、農園の様子を見たいかな……」
「かしこまりました。朝食は暖かいスープを用意させましょう」
「うん……」
極度の寒がりの主のために、旅先から戻った後の湯あみやスープに、いつものウィルロアなら飛びつくかと思いきや、素っ気ない返事に思わず同行した護衛二人を窺った。
ロイとサックスは肩を竦め、先に進む。
よろよろと農園に向かうウィルロア。いつもの、きらきらと輝き美しく整った身なりの完璧王子は一体何処へ行ってしまわれたのか。
「別荘で何かあったのか?」
先を歩くウィルロアと距離を取り、聞こえないよう小声で二人に訊ねた。
ロイとサックスは顔を見合わせ、神妙な面持ちで「あった」と答えたが、先程からどうにも歯切れが悪い。
まさか、またカトリ王女とすれ違いがあったのだろうか。
「すれ違いって言えばすれ違いだな」
「認識の違い?」
「……どういうことだ?」
「殿下が苦行に耐えたってことだよ」
「邪念をはらうのに忙しくて一睡も出来なかったってこと」
「?」
説明を求めているのに二人は顔を合わせ頷くだけで、これ以上の情報は得られなかった。
よくわからなかったが、とにかく寝不足だ、というのは分かったので、朝食の後は休んでいただこうと頭の中でスケジュールを立て直した。




