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星織りの少女  作者: ハル
3/9

3、クテュール洋裁店

改稿が多くて申し訳ありません。今後もしばしばあると思います、、できるかぎり気をつけますのでよろしくお願いします。

 王都から馬で一日ほど北に行ったところに位置する町、シャブラン。この国で三番目に栄えているといわれているのがよくわかる活気にあふれた町である。町の中心は大きな広場になっており、出店がいくつも並び、しばしば催し物が開催されるなど人々の交流の場となっていた。その広場からは放射状に何本も道が分かれており、その中でも主要な大きい通りは六つ。それぞれ名前がついていた。その一つブランシェ通りにクテュール洋裁店があった。ブランシェ通りにはいくつもの仕立て屋が並んでいるだけでなく、靴屋、宝石店、雑貨店などが立ち並んでおり、おしゃれをするならここに来るといった人が多い。特に多くみられるのは貴族達であった。

 クテュール洋裁店はそんな中でも一際小さい店であった。深い赤のレンガの壁には大きなガラス窓がついており、そこから中をうかがうことができた。正面の壁にはいくつもの生地のサンプルがかけられていて、両側の壁際には仕立てあげられたドレスが飾ってあった。外観にしろ、中の様子にしろ、クテュール洋裁店は小さいけれど上品さを感じられる店であった。


 チリンチリン


 クテュール洋裁店の扉のベルが鳴る。オーナーのエレナが奥から顔をだした。


「いらっしゃい」


そういってエレナが来客に微笑む。そこには大きな荷物をかつぎ、黒いローブをきた銀色の髪をもつ少女がいた。


「こんにちは、エレナさん。」

「こんにちは、リリ。重かったでしょう、手伝うわ。」


エレナがリリに近づき荷物を半分受け取る。


「ありがとうございます。」

「いいのよ!うちの商品になるわけだし。それよりもリリ、ちゃんと食べてる?また痩せたんじゃない?」

「変わってないですよ、先月来たじゃないですか。」

「そうかしら?なにかあったらすぐ言いに来るのよ!」

「大丈夫です。いつもありがとうございます。」


一人となったリリにとって、エレナは貴重なリリのことを気にかけてくれる人であり、お得意様である。というよりも、リリは星織りの布をこのクテュール仕立屋以外には卸していない。2人でリリの持ってきた布を奥の部屋に運び、袋からだし、大きなテーブルの上に広げる。


「今回もすばらしい出来ね、リリ。」

「ありがとうございます。だんだん冬が近づいてきたので次回はもっと質の良いものができると思います。」

「まあ!それは楽しみにしてるわ。ちょっとまってね、お代をとってくるわ。」


そういってエレナは部屋から出ていった。リリの布は星織りの布と名前が付けられていた。まるで本物の星を織り込んでいるかのように見えるからだ。しかし、実際は星で染めたようなものなのになあ、といつもリリは思う。リリはこの布に名前がつく前は夜空染めの布と心の中で呼んでいた。


「またせたわね、はい、これが今回の分よ。」


そういいながらリリに二枚の金貨を手渡してきた。リリは今回二本の星織りの布を用意していたため、一本につき金貨一枚となっている。ちなみに銀貨五枚でリリは一月生活ができる。その倍の価値がある金貨をもらったため、本当ならばしばらく働かなくても生きていけるのだ。それほどにこの布は貴重であった。それと同時に求める人も多かった。そしてこの布はリリにしかつくりだすことができないのものであった。

 

「疲れたでしょう!少し休んでいきなさい、今お茶をだすわね。」

「ありがとうございます。」


リリはエレナの好意に甘えることにし、テーブルと並べられていたソファに腰かけた。


 エレナとリリが初めてあった日のことをリリは覚えてない。それほど小さかったのだ。父と母に連れられこの店によく来ていたことを思い出す。物心ついたころからずっと通うこの店は、リリにとって数少ない心落ち着く場所だ。

 リリの両親はデトワールで小さな小さな仕立屋を営んでいた。しかしリリの母が星織りの布に近いものをつくることができたため、もっぱらそれ目当ての客が多く、仕立てることよりも、生地自体を売ることが多かった。それでも親子3人生きていくには十分な稼ぎがあり、幸せな暮らしを送っていた。

 歳を重ね、リリはそれは可愛らしい女の子へと成長していった。そんな時だった。近所の子どもたちと遊んでいたとき、ふと一人の子がリリに尋ねた。


「なあ、お前ってほんとにおじさんとおばさんの子供なのか?」

「そういえばそうだな、なんでお前だけ銀の髪なんだ?」


リリの母も父もこのあたりでよく見る茶色い髪に飴色の瞳をもっていた。


「えっ…?」


幼いリリは、そんなこと聞かれるまで考えたこともなかったと驚いた顔をした。


「だってお前だけだろ、銀色なんて。そんなやつ他に見たことねーよ!」

「おじさんもおばさんも普通の髪だもんな。お前拾われたのか?」

「そんな、、そんなことないもん!お父さんとお母さんはリリのお父さんとお母さんだもん!」


リリは言いようのない不安を感じついには泣き出してしまった。


「ほんとだもん!…おとうさん、おかあさん…リリのだもん、」


そこへ騒ぎを聞きつけた大人たちがやってきて、その話はそこまでとなった。

 リリは家につくとさっそく両親に尋ねた。


「ねえ、お父さん、お母さん、リリは、リリ、」


また泣き出してしまう。 


「どうしたの?リリ。なにかあったの?」


急に泣き出したリリを見て、両親があわてて心配そうにリリを覗き込む。


「リリ…リリはこのうちの子供だよね?お父さんもお母さんもリリのほんとうのお父さんとお母さんだよね?リリ、違う家の子じゃないよね?」

「当たり前じゃない!何を言っているの!リリはお父さんとお母さんの大切な、1番大切なかわいい子供よ。」

「そうだ、一体どうしたんだ、急にそんなことを聞いて。リリは誰がなんと言おうとお父さんとお母さんの子供だ。」


そう二人が答え、ぎゅっとリリを抱きしめてくれた。そしてやっとリリは安心することができたのだった。しかし、幼いリリはこのとき自分の容姿がめずらしいのだと知ったのだった。

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