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星織りの少女  作者: ハル
1/9

1、銀色の髪、瞳

初作品、初投稿になります。お話はゆっくり進みます。日本語もおかしいところがあると思われます。それでも完結させたいと思ってるので、読んでくださる方がいらっしゃいましたら、暖かい目で見てくださると幸いです。

 星織りのドレス―五年前、エルドラド建国150年の記念舞踏会にある貴族が着てきたことで知られるようになったドレスだ。まるで夜空を切り取ったかのような漆黒の布がまとうのは無数の光。星のように輝くその光を見て人々はそのドレスを星織りのドレスと呼んだ。



 冬が近づいていた。



 この国の北に存在する小さな村デトワール。その村のはずれには森があり、ヨルの森と呼ばれていた。村に面している部分が木でできた柵で囲まれており、森への入口は人気のない場所に二か所ほどあった。ヨルの森はどんなに天気のいい日の昼間でも常に薄暗く鬱蒼としている上、魔物がいるという言い伝えがあるため、村人は好んで近寄ることはなかった。しかし、そんな森に一人の少女が住んでいることをルスは知っていた。


「そろそろか…」


その森をぼうっと眺めながらルスがそう独りでにつぶやいたとき森の中から一人の少女が現れた。


「リリ!」


ルスがその少女に呼びかける。その少女は黒いローブに身を包み、フードを深くかぶっていた。そのため顔をうかがうことはできないが、銀色の髪だけがローブからこぼれているのが見える。


「ルス」


リリは顔を上げルスのほうを見、それからホッとしたように微笑んだ。


「おはようリリ、今日も相変わらず早いことで。」

「ルスこそ、もう仕事?」

「おう、今日は王都まで行く用事があってな。それで早起きしたんだが、ついでにリリに会えないかと思ってここで待ってたんだ。」

「そういえば会うのは久しぶりね。2,3ヵ月ぶりくらい?」

「4ヵ月くらいだよ。お前もう少し顔見せろよな。うちの親も気にしてたぞ。」

「それは…ごめんなさい、その、忙しくて、」


リリはその銀色に輝く目を少し曇らせ困った顔をした。


「ま、元気そうならいいけど。」

そういってルスはこしかけていた柵から腰をあげ、リリと並んで歩きだした。

 ルスは横に並んで歩くリリの顔をそっと覗き見る。銀色の髪、銀色の瞳、長いまつ毛に、うすい桃色の唇。そのどれもがバランスよく配置されたリリは間違いなく美少女である。どこか儚げでこのあたりでは珍しい色合いをもつリリ。幼いころからよく知るルスには見慣れているはずだが、その銀色の輝きは年々増しているように思われた。


「なに?」


急に顔をのぞかれたリリが首をかしげる。


「いや、」


ルスはふいと目線を戻した。そしてリリに尋ねる。


「今日はシャブランまで行かないのか?」

「うん。食材の買い出しだけだから。」

シャブランはデトワールから馬で半日ほどの大きな町である。エルドラド内で三番目に栄えているといわれている。

「そっか、次はいつ行くんだ?」

「明後日かな。今日、明日の夜は晴れそうだし、多分仕上がると思う。」

「おー、明後日か。ちょうど暇だ。俺も一緒いこうか?」

「大丈夫よ。もう何度も行ってるもの…でも、ありがとう。」


ルスがこの申し出をするのは今日初めてではないのだが、断られなかったことは今までにない。

そうしていると少しひらけたところに出た。道が何本かに分かれている。


「じゃあ俺一回家戻るから。またな」

「うん、またね。仕事がんばって。」

「おう、近いうちに顔だせよ。」

「…わかったわ。近いうちに。」


そういってリリは朝市が行われている町へと歩いて行った。



 デトワールから一番近いあまり大きくないその町では週に3回朝市が開かれていた。村にも食料を売る店はあるものの、リリはこの朝市に来るのが好きだった。新鮮な食料に出会えるももちろんだが、道のあちらこちらから聞こえる店主の客を呼ぶ声、訪れている人々の何気ない会話。この活気あふれた空気がリリにすがすがしい晴れやかな気持ちをもたらしてくれるのだった。それにこれだけ人が多いとリリに注目する人などいない。それもありがたかった。リリは今日も持てるだけの食材を買う予定であった。週に3回朝市があるといってもリリが訪れるのはだいたい週に一回ほどである。週に一回リリが持てるだけ食材を買いこみ、万が一足りなくなったら村の店へ向かう。しかし村の店に向かうことは滅多になかった。リリが朝市について少し足を止めた。何、買おうかな。…魚にしようかな。ここしばらく食べてないし。そう思いリリは新鮮な魚を売っているほうへ足を運ぶ。するとどこからかささやくような声が聞こえた。


「あら…見て、あの子銀色の髪だわ。」

「ほんとね、珍しいわね」


その声は別に侮蔑を含んでいるわけでもなく、ただ珍しいものを見たといった風に聞こえた。それでもリリは一瞬体を固くし足早にその場を離れた。



 目当てのものをすべて買ったあと、リリは真っすぐ家へとむかった。


「ふう、つかれた。」


そういいながらもリリは満足そうであった。週に一度の朝市での買い物は、今日はなにもなかったわけではないが、基本的にリリがリフレッシュできるものであった。もうこの時間にはほとんどの人が活動をはじめていた。リリの家はヨルの森の中である。リリは森に入るときは必ず誰にも見られないよう細心の注意をはらう。そして森に入ると、森の中をリリは迷わずどんどん進んだ。しばらく進むと急に薄暗かった森に光が差し込む。明るい開けた場所に出た。そこにはレンガ作りの小さな少し細長い家と、その家からすこし離れたところに小さな湖があった。リリは荷物を一回おろし、レンガ造りの家の扉を開ける。そしてすべての荷物を中に運び込むと一息ついた。


「んーーー、がんばった。おなかすいたなあ。」


朝はやくに家を出たが、すっかり昼になっていた。リリはすぐに立ち上がり荷物を片付け、昼食の準備にとりかかった。午後からはなにしようかなあ、夜まで時間あるし。しばらくしてなかったし、2階の掃除でもしようかな。リリの家の2階は使われていない寝室と物置になっていた。まずは腹ごしらえしよう。買ったばかりの魚が調理されいいにおいがリリの家に漂う。

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