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とある商人の追想禄

時系列がごっちゃになってますがこれはBefore Storyの方の短話です

 俺は食事をしながら感傷に浸っていた。


『俺は行商をしながら様々なところを回っていた。その過程で様々なヒトを乗せることもあった。』


 二十数年前、そいつらに会ったのもただの偶然だった…。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「悪い!ちょっと匿ってくれ」


 金髪のチャラ男は開口一番、俺にそう言って馬車の下に器用に張り付いた。


「そのまま馬車を走らせといてくれて構わない。もし俺の事を聞いてくるやつがいたら知らぬ存ぜぬを決めてくれ頼んだぜ?」


 チャラ男は俺の答えを聞く前に馬車に張り付いた。仕方無く俺は男の言う通り知らぬ顔を貫いた。

 話を聞けば非合法の賭博場であまりに稼ぎすぎたために追われたらしい。

 さすがに顔が割れてしまった為その土地で稼ぐのは厳しいと考えたチャラ男は強引に俺の馬車に乗り、しばらく旅をすることになる。その際博打におけるなんたるかを教わった。

 季節が一巡し、ある国で今度はフードを被った女性が言った。


「すみません!少し馬車の下をお借りできませんか?出来たら私のことは他言無用で…」


 俺とチャラ男は一旦顔を見合わせ、笑って言った。


「構わない」


と…。それが始まりだった。成り行きでその女性を馬車に乗せ、国を出たところで女性は素性を明かした。驚くことにその国の王位第一継承者様だった。

 話を聞くと暗殺続きの毎日で疲れたから王位など継ぎたくないと言う。それから外の世界を知ると言っては、やれ夜遊びを覚える王女…いつしか「国の運営は賭博と同じ」とのたまった時は2人して大いに笑ったものだ。

 チャラ男を賭博の師、俺を世渡りの師とあえいだ王女は性格の合うチャラ男とくっつき、俺に気を使ってか俺の馬車から降り、チャラ男の賭博で稼いだ金で隠居生活をするようになった…

 翌年の春過ぎから伝書鷹を使って記録結晶が届くようになる。2人は親バカになっていた。

 しかしそれはある時からトンと途絶える。伝書鷹を飛ばしても手紙を受けとられることなく帰ってくる。俺は一抹の不安が(よぎ)り、以前記録結晶と共に添えられていた手紙の場所に馬車を走らせる。

 到着した場所は廃墟と化していた。屋根は焼け落ち、井戸は枯れ、辺りの村も瓦礫が散らばっていただけだった。俺はこの状況を知っている。赤竜の襲来である。ヒトを喰らう生き物の頂点に立つ存在…そんなものが村を襲ったのだ。誰も生きてはいるまい…。

 絶望半ばで家の足元の違和感に気付いた。辺りが土だったのは木の床が張られていたからだ。だが家の一角だけ石床である意味は無い。

 俺はいちるの希望にすがり、岩板をどかす。

 岩板の下には石造りの階段があった。大きさは大の大人が一人ギリギリ入れるくらいの小さいものだった。

 松明を持って入るのも厳しいくらいの狭さなため、暗闇に目を慣らしながら降りていく。一段…一段…壁に手をやり、降りていくと小さな部屋に出た。左右には肉や魚がぶら下がっているなか目についたのは正面でこちらを見つめる一対の瞳だ。

 怯えたその瞳を見つめながらゆっくり歩み寄る。

 俺は生き残った幼い少女を静かに抱き締めて言った。


「よく頑張ったな…」


 少女はせきを切ったかのように泣き出した。

 少女の話を聞くと父親が自分を食料貯蔵庫(ここ)に隠し、


「迎えに来るまで静かに食料貯蔵庫の食料で食いつなげ」


と言い付けたらしい。チャラ男は賭けたのだ。


「森林で生き残れる」か

「食料貯蔵庫の食料がつきる」か

「俺が異変に気づく」か


の選択肢の中でもっとも生存確率が低い「俺が異変に気づく」ことに…

 俺は行き場の無い少女に尋ねた。


「一緒に来るか?」


 少女は小さくうなずく。

 外に出るとすでに日は落ち、空は星が輝いていた。

 少女の第一声は…


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「『おうちの屋根に星が一杯』か…」

「ばっ!父さん一体いつの話をしてるの!10年以上前のことを蒸し返すな!」


 養女として迎えた娘からスプーンが飛んできた。

 うっかり口にしてたか…


「父さんボケーとしてるから何かと思えばそんな昔のこと思い出してたの?」

「いんや」


 娘の問いに俺は首を振る。


「お前が生まれるずっと前の話を思い出していたのさ…フォス」


読了感謝です。

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