バレンタイン(後編)
さぁバレンタイン当日!みなさんいくつもらえましたか?
私は0個ですw
クォクォの実がトキの手に渡り、6日の時がたった。
憩いの狩場は話題が話題を呼び、噂に尾ひれが付き、『トキが“初めて”を好きな人に上げる』ととんでもない事態にまで発展しており、ソワソワしている。
当然2人の従者も気が気じゃない。
当の本人は夜な夜なトーナの許可を得て厨房でチョコレート菓子の試作に励んでいた。
そして来る14日…
「おはようございま〜す」
珍しく酒場は朝から静まり返っていた。
可愛らしい澄んだ声に視線が集中する。冒険者達の視線の先には2人の地上最強の従者を伴って現れたトキがいた。
トキは普段通りシンプルな薄い青のワンピースの上から茶色の丈の短いジャケットを羽織り、あまりくびれていないウェストに2丁の銃を収めたホルスター付きの太めのベルトを巻き、飛んでも跳ねても問題ないようにワンピースの下に黒のレギンスを履いている。
トキは朝食を頼むべく、カウンター席に座ろうとするが椅子が高く、悪戦苦闘する。その様を見てセラが優しく抱き上げ、ゆっくり座らせる。トキは頬を若干膨らませながら礼を言う。
普段ならこの一連の流れで冒険者達は和み、笑みをこぼすが今日に限ってそんな余裕は無かった。
トキの一挙手一投足に注視する冒険者達の視線気づきトキが振り返った。すると冒険者達は振り返りきる前に視線をそらす。
「ね、ねぇユネ?今日酒場がやけに静かなんだけどなんかあった?」
「さあ?なんなんでしょうねぇ?」
銀髪の従者は棒読みでとぼけながら黒髪の従者に目配せする。
黒髪の従者はキッと後ろに目配せしながら殺気を飛ばすと冒険者達は慌てて席を立って受付のクエストを受けていく。
とある冒険者のチームはチーム内の斥候役に大金を積んでトキの監視を任せ、近付きすぎてユネに撃沈させられた。
またソロで活動中のとある斥候はトキが魔物と勘違いして足を撃ち抜かれた。
そんなこんなで1日が過ぎていった…
すっかり日が暮れ、夜の帳も降りた。しかしトキは誰にもプレゼントらしきものを渡していなかった。
3人は夕食を食べ、風呂に浸かった。
「ご主人様?ちょこれーとなるもの誰に渡したんです?」
「渡してないよ?」
ユネの質問にトキが即答する。
「何故です?」
セラの質問にトキは問いを返した。
「もし渡したらその人をどうするの?」
「「…」」
トキの真剣な眼差しは2人を見据え、2人は何も言えなかった。
『私達が過保護すぎるとご主人様の自由が失われてしまう…』
銀髪の従者は黒髪の従者に背を預け、夜空を見上げる。
『かといって護衛の手を緩めると危険な目にあってしまう…』
黒髪の従者は俯きつつ、乳白色の泡を見つめる。
「それじゃあ私は先に出るね。2人は今のこと、しっかり考えてから上がること」
「「…」」
トキが風呂から上がろうとして2人の従者はそれに続くように出ようとしてトキに釘を刺された。
――30分後…
すっかり茹で上がったユネとセラはふらふらと風呂から上がり、タオルで水気を拭う。
ユネの発する火と風の複合魔法でしっかり髪を乾かして着替えに袖を通し始めた時、袖からポロリと箱状の何かが床に転がり落ちた。
「?」
丁寧にラッピングされ、綺麗なピンクのリボンが結ばれた箱に2人
は首をかしげる。
「これは…」
服をしっかり着て箱に鑑定をかける。
2人はそれぞれに対して《天瞳》による《鑑定》をかける。
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主の贈り物…従者に対して労いの気持ちを主が込めた手作りの品。中身は――――
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2人は思わず《鑑定》を切った。
「今ほど《鑑定》をしたこと後悔したことは無いわね…」
「姉さんに激しく同意。」
2人は部屋に戻り、箱に結ばれたリボンを解き、丁寧に包装された紙を剥がし、箱を開ける。
セラの箱には剣の形の、ユネの箱には杖の形のチョコレート。そして2人箱には共通のメッセージカードが入っていた。
メッセージカードには拙い字でこうあった
――いつも ありがとう
あ、あれ?ギャグを目指して書いていたはずなのにしんみりしたものになってしまったぞい?(動揺)
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