1周年記念
トキ・ヴェルカルト(呼称トキ)…本編の主人公。従者に甘い。被害担当。
ユネ…銀髪の猫の獣人でトキの従者。ギャグ担当。
セラ…黒髪の猫の獣人でトキの従者。ツッコミ(物理)担当。姉のユネと比較して至ってまともな感性の持ち主。
ハーベナー=フォーレグロウ(呼称ハーベナー)…常に片手に酒をもった『憩いの狩り場』の女将兼女医。トキの治療担当。
本編から来た方はキャラ崩壊にご注意ください
「ユネ!セラ!1周年だよ1周年!この話、いろいろアレだけどもう1年経つんだよ」
トキははしゃぎながら2人の従者に言う。
「本編では未だに半年も経ってないのに…」
「でもめでたいことには変わりないですね!お祝いしましょう!そして、こんなこともあろうかとこのユネ、ケーキを焼いてみました!」
ユネが指を鳴らすと冒険者2人がゆっくり布のかかった巨大な何かを持って部屋の扉をくぐってくる。
「い、いつの間に…」
「わぁ!ユネすごぉい」
「すべて魔法で作りました!クリームの泡立てるのも均一に泡が行き渡るように風魔法で、スポンジに均一に火が通るように火魔法と雷魔法で、フルーツもどんな農薬や害獣の糞尿が混ざってるかわかったもんじゃないので土魔法で畑を作り、魔法で栽培、収穫しました。」
トキは魔法でどこまでできるのか気になって訊ねた。
「クリームの原料は?」
セラは口元を引きつかせながら確認するように訊ねる。
「スポンジの卵は?」
「全部自前で…」
直後ユネの視界が真っ黒な何かで遮られた。
「…」
その何かを察したユネは顔を青ざめさせた。
「嘘です!狩ってきました!ゴールドドラゴンの卵とブンバノタウロスの乳で…「時間切れ」ちょい待…ぎぃぃあああ!」
セラの手がユネの頭を容赦なく締め上げた。
「それより早くケーキ食べよ?」
巨大な布のかかったケーキを見てトキは期待の眼差しでセラに催促する。
「…主様…私は念のためケーキを買ってきますので待っていてください。すぐ戻るので絶対に姉さんのケーキには手を出さないでください」
セラは屈んでトキと同じ目線になって懇願する。
「う、うん」
とりあえずの返事を返したトキの内心は…
『フリかな?』
「絶対ですよ」
そう言ってセラは後ろ髪がなびく思いで部屋を出ていった。
これを好機と思ったのかユネが口を開く。
「厄介払いもできたので、ごかいちょー」
そう言って取り除かれた布の下にあったのはウェディングケーキのように巨大な3段に積み重なったタワーケーキだった。
「ど、独創的なケーキだね…」
「ありがとうございます♪」
その異様なケーキを見て後退りしながら精一杯のお世辞を言うトキ…。
「ユネ?何でクリームが紫なの?」
「綺麗ですよね?」
トキが震える指でクリームを指差しながら尋ねるとユネは屈託のない笑顔で返す。
「何で表面ポコポコ泡立ってるの?」
「さぁ?」
毒沼のように浮いては弾けるケーキの表面の泡について問うとセラは肩をすくめ、小首を傾げて返した。
「何でてっぺんの飾り、手なの?」
「え?お祝いって両手を上げた感じになるじゃないですか?それを砂糖細工で表現しました♪」
てっぺんに生える人の手と遜色ない色白な手がワキワキと指を動かし始めた。
「砂糖細工だと思ってたてっぺんに乗ってる手、動いてるよ?」
「魔力を注ぎながら作ったからではないでしょうか?」
ニコニコとしながら答えるユネ。
「…最後にユネ、味見した?」
滝汗を流すトキの問いに銀髪の少女の姿をした3000歳オーバーの従者は断言した。
「一口目はご主人様に食べてほしくて摘まみ食いをしてません♪」
期待の眼差しで見つめられ、トキは滝のように流す汗の量をさらに増やして思う。
『このキラキラの期待の眼差し…天然だ…ダメだ…裏切れない』
トキは震える手を抑えながらシューシューと煙を吹く殺傷兵器をフォークで掬い、口へ運んだ。
――この日、宿屋『憩いの狩り場』の看板娘と化しつつあった少女が“食中毒”で救急搬送された。
また、「ステータスが低い患者が容疑者の作った料理を食べて“あの程度”の食中毒で済んだなんて奇跡だ」と語っていたことが医療関係者への取材で分かった。
少女の命に別状はなく、現在順調に快復に向かっているとのこと。
また、事件の原因となった容疑者 ユネ(3133歳 従者)の顔面は何者かによって強く掴まれた痕があり、捜査関係者によると「現在捜査中」とのこと。
読了感謝です
皆様のアクセス1つ1つが励みになっております。
感想とかいただけるとなおいっそうの励みになります。
もし誤字脱字がございましたらこっそり報告していただけると幸いです。
また本編は『人生補填につきチートで転生!?~でもなんか話が違うぞ天使様~(Nコード;N6846DT)』で連載しています