三十八、ため息
アイルーミヤが執務室を出ていくと、水晶玉にルフス将軍が戻ってきて言った。
「それで、どう思う?」
先ほどとは違う、心配そうな表情だった。
「まるで子供だが、目の届かない所で何かされるよりはいい」
「それはそうだが、あれを手元に置いておくのも大変だぞ」
ローセウス将軍は頷き、返事をした。
「まあ、飽きないからいい。それに、全く期待していない訳じゃない。ああいう突飛な発想から何かが生まれるかも知れない」
「魔法消滅、それに保存計画、どこまで信じてる?」
ルフス将軍は疑わしそうだった。
「あり得ると思う。全部そのままは受け取れないが、確認はする。秘密研究組織の最初の任務だな」
「それで、事実だったら?」
「無論、我々の管理下に置く。他の力の信者が進めていていい計画ではない」
「頼む。ヒコバエたちの監視は私が行う。こっちに改宗した者を使おう」
「そうか。そっちはまかせる。しかし、上手い時に巨人と獣人が手に入ったな」
「もうすぐ妖精も手に入る。一群れだがな。教えてもらった交渉術、役に立った」
「では、お互いの仕事を進めよう。陛下の御為に」
「そうだ。もう我ら二人だけになったな。陛下の御為に働く者は。じゃあな」
ルフス将軍が消えると、ローセウス将軍はため息をついた。長く、深いため息だった。