Weapon12
振り返る少女は銀髪の髪色でロング、眼はパープル、鼻筋は透き通るように長く、口元はそれでいて美しい。
とてもじゃないがかなりの美少女だった。
俺より一つか二つほど年上に感じた。
「私の名はテルミドール。テルミでいいわ。あなたは一人でこの滅びの塔に来たの? 結構大変だったでしょう。見るところそんなにレベルも高くないように見える」
「そうでもない。俺はこれでももうレベル30だ」
「そう、私はレベル28。負けたちょっとくやしい。今度勝つから」
「負けず嫌いなんだな」
俺は少し笑って場を和ました。
テルミは腕を組んで、不満そうな顔をして、俺を少し睨んでだが、別に嫌そうな感じではないようで、俺を見てこう言った。
「名前聞いてないよね」
「悪い、言ってなかったな、キョウヤだ」
「キョウヤはソロで活動しているの?」
「そうだけど……それがどうかしたのか?」
「正直この滅びの塔をソロでクリアしようと考えているのならかなり無謀……考えなしかかなりの怖いものなしねあなた」
「それはお前もだろテルミ」
「キョウヤほどではない」
「まあいいやで、どうするつもりだだったんだ俺が来なかったら?」
「誰か来るまで待っているつもりだった来るまでね」
「お前もしかして実はかなりアホか?」
「アホって!? アホは言い過ぎじゃない、アホは言い過ぎだよ、キョウヤのアホ!!」
「アホって言うやつがアホ……俺がアホだったな。そんなことより勝算はあるのかテルミ?」
「もちろんある。私のスキルを使えばたぶん勝てる。でもこのスキルは一人では意味をなさないから……あなたが必要と言うわけ」
不敵の笑みを浮かべて、テルミは俺に人差し指を向けて微笑する。
小悪魔的な表情をするテルミに俺は少しだが心臓をドキッとさせられた。
「じゃあ行くか。テルミこの俺についてこい」
俺は手を伸ばしてテルミをフォローする。
テルミは少し顔を赤らめて俺の手を取った。
「仕方ないわね、私の力が欲しいのなら喜んで手を貸してあげる」
俺達は滅びの塔の最終階層の階層主の扉を開けた。
雑念のある空間には廃墟よりも空虚な死の匂いがした。
時間が止まっているような虚ろな残骸が部屋の臨界点を降下させ、あまつさえ感慨深いほど芸術的な雑踏で何も無いものがあった。
驚くべきことにそこはダンジョンの中には思えないほど広い空間で、一つの都市のような無限の広がりが見えるほどだだっ広い空間でかつ外を思わせる青空が見えた。
「ここはダンジョンの中だよな……」
俺の思う率直な感想だ。
辺りを見渡すと崩れた建物が積み木を崩したように鎮座しているし、巨大な塔が今にも崩壊しそうなほど劣化していて、まさに終末の世界に見えた。
まさに滅びの後の世界……滅びの塔とはそういう意味だったのかと思えるほどだ。
遥か後方のほうから何やら謎の巨大な未確認生物らしきものが見えた。
全長15メートルはあろうであるその巨大生物はゆっくりと歩を進めていた。
崩れた瓦礫を払いのけてそれはやって来る。
モンスターのその上の名前表示にはギガントリザードグレネードと表示されていた。
一見すると巨大な蜥蜴だがカバのようにも見える。
俺は瞬時にレベル30の時に習得したスキルを使用した。
暗黒の狂皇鎧
全MPの半分を使用する。自身のステータスに全てに5000ポイントの上乗せを行う。
ウェポンスキル:暗黒の血結界……常時相手からの物理攻撃、特殊攻撃を半減の防御スキルを付与する。
たまに狂い意図しない方向に攻撃することがある。
鎧の展開持続時間2時間。
テルミもスキルを使用した。
聖麗女神の白銀鎧《セイントミルストンホーリーシルバーアーマー》
1分間でMPを全体の30分の1使用する。自身のステータスを4倍にする。
ウェポンスキル:聖光結界……常時闇属性の攻撃を4分の1にする。特殊攻撃の威力を5分の2にする。
俺達はギガントリザードグレネードに突撃した。カバトカゲは口を開いた。破壊の咆哮を放ってきた。俺達はその破壊の咆哮を躱す。地を蹴るように跳び、鎧の重さを感じさせない足取りで瞬歩する。
空中をまるで空でも飛んでいるかのように跳躍する。そのまま二刀の剣でカバトカゲに斬りかかった。だが、堅い。堅い。刃があまり通らない。そのままヒットアンドウェイの手法で何度も斬りかかる。
テルミが魔法を使用した。魔法はスキルとは違い職業により取得できる。
他にも魔導書を手に入れて読めば取得できる。
俺の職業だとどうやら魔法は手に入らないようだ。
「ホーリーフラッシュ!!」
目映い光がカバトカゲの目の前で交差するように煌めく。その光の閃光はモンスターの視力を一時的に奪う物だった。
だが、ここでカバトカゲが待機状態に入った。
そして点滅と共に、地が揺れる。そのままカバトカゲが大地を大きく揺らした。
地震。地は崩れ落ちそうなほど、揺れ。建物はさらに崩壊していく。
あまりものの衝撃で立っていられない。そして大きい空虚な歪な塔が俺達に向かって倒れてきた。
「テルミ!!」
俺はテルミに向かって倒れてきた塔を一刀両断する。破片は全てダークネススラッシュで粉砕した。
「ありがとうキョウヤ……」
テルミは悲しんでいるような表情ではなく、ほうけるようにキョトンとしていた。
「あのカバトカゲかなりヤバいぞ、攻撃もあまり通らないし大技も使う。なんとかしないとな」
俺は瞬速に迫る勢いで駆ける。大地の揺れは今は無い。そのまま即興の必殺技を使用しようとする。
「ダークグラウンドバーストレジェンドフルブレード!!!」
カバトカゲの右足を切り裂いた。
だが、カバトカゲはそれでもなお抵抗した。そのまま宙に浮いて、火炎弾を5発放ってきた。
俺はそれを剣でいなす。そして止めの一撃を喰らわそうとするが……
待っていましたと言わんばかり、カバトカゲが口を開いた。
『デスォメガサンクション!!!!!』
強烈な破壊光線が放たれた。
俺はそれを躱すことができなかった。
くっそここで終わりか……
テルミが俺の前に現れた。
「セイントリフレクション!!」
光線はそのまま跳ね返された。
だが、カバトカゲは死んでない。
俺はそのまま二刀の撃滅を行う。暗双激籠斬を放った。
カバトカゲの口が大きく開いた。
全てを飲み込む暗闇の喉に吸い込まされそうなブラックホールに見えた。
そしてそのブラックホールに俺の必殺技が飲まれた。
俺は落胆した、こんなところでMPの残量が切れかかっていた。
だが、まだ勝機はあると確信があった、それほどでは無いが絶妙に。
テルミの例のスキル――ウェポンスキルだと思われるがある。
相手の守りを半減することができる斬撃をはなつウェポンスキルだ。
結果としてはそれで勝った。
レベルは5も上がった。
撃破ボーナスとして蜥蜴王の黒鱗コートを手に入れた。
防御を+800する。火属性と闇属性と風属性の攻撃を半減する効果を持つ。
俺はありがたくこれを装備した。
テルミとはフレンド登録をしておいた。
これで好きな時にチャットで連絡できる。
俺は初ダンジョン攻略に成功した。