2話
夏休み中はどう過ごしたか、事故はなかったか。校長先生はどこへ行って何を学んだのかなどの、夏休み終了後の始業式特有の話を聞きながら私は考える。
なぜいきなり避けられたのか。
可哀想だったから、保護してあげたとはどういう意味なのか。
何か私に原因があるのかと今までを振り返る。残念ながら見つからない。
小中学校と、集団生活を営む上で同じことが無かったかどうか聞かれたら、どちらかといえばある。
でもそれは私が約束を破ってしまったり、たまにひどい言葉を言ってしまったことがいけなかったという原因がわかっていた。だから私から謝ってまた仲直りできた。それどころか謝らなくても翌日にはいつも通りの距離感でいられることさえあった。
今回はそう簡単に拗れた仲を良くすることは出来ないとすぐにわかった。
あの3人にとって、私は必要なかったわけだ。
保護してあげていたということは、私から見ると一緒にいてくれていた、ということだろう。
そう思われて当然だということだろう。
長く息を吐いて、立てた膝に顔をうずめた。
私は昔から友達を作るのが下手くそだった。
声をかけても話は続かない、話せても友達とまではいかずにカップルが自然消滅するように離れていく。
あとは一緒に遊ぶ仲になったと思ったら、その後は私が気まずくなってそのまま話さず、みたいな。……これは私がいけないんだけど。
でも、これは過去の話だ。
高校に入ってから、入学式当時に少し派手な見た目と性格の子として見ていた玲美ちゃん、優紀ちゃん、紗那ちゃんから話しかけられて順調な日々を送っていた。それも今では自分が舞い上がってただけだと気づかされたけど。
記憶の引き出しを開ける度に嫌なことが思い出され、頭を抱える。
もう少し別の性格だったら、別の行動をとれていれば。
今後悔したって後の祭りってことにはもうわかっているのに。
うううと唸っていると、後ろから腰を軽く蹴られた。
ハッと顔を上げて周りを見る。みんな立ち上がっていた。
考え込んでいて周りのことが見えてなかった。
「立てよ」
「校歌、歌うってよ」
みんなの顔に苛立ちが見えていた。
恐くなり、うんと返事だけし、顔を背けて立ち上がった。
舌打ちが聞こえる。音のするほうを見ると紗那ちゃんがこっちを見ていた。
紗那ちゃんは口をパクパクと動かした。よく見たが、何を言っているのかわからず前を向いた。
生徒会長がステージに上がり、指揮を担当する副会長とお辞儀をした。
それぞれの持ち場につくと、軽快なピアノの音が聴こえた。
私が高校を選ぶにあたって、友達がいるいないで決めたわけではなかった。かといってやりたいことも無かったし頭も良いわけではなかったから、少し余裕を持って授業に臨める学校を選んだ。
先生からはお友達も作りやすいんじゃないかしらと言われ、親からもお友達を家に連れてきなさいと言われた。
今までは友達がいなければいないで寂しかったけれど1人でも苦ではなかった。
影が薄い子となら、話そうと勇気を出せば話せたし。
なのに、なんで今はこんな辛いのだろう。