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娼館の売れっ子さんは最強さん  作者: 綾崎 オトイ
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2

カトリー姉様の低い唸り声が響いた。

「能無しが」と言い放ったカトリー姉様の続きの言葉は自主規制で。淑女らしからぬお言葉ですよ、姉様。と突っ込みたくなる。


それと同時に護衛の人たちが私の前に出てきた。

あー………そんな3人もいらないでしょ、どう見ても。

「シオン様お怪我は?」

「見てたでしょ?何もされてないよ」

「シオン嬢、お下がり下さい」

「もう下がってる」

「殺す」

「ほどほどにねぇ」

大袈裟すぎるよね、ほんとに。

とりあえず、男の人に向かって合掌。お大事に。

こうなるから黙っててくれればよかったのに。


「な、なんだっ。その下女ごときに何が……っ!?」

バチンと光が爆ぜた。

男の人のすぐ目の前で。

小さな雷みたいなものが走って火の粉が散る。

そのすぐあとには周りを風が回る。

「魔法……か……?」

恐る恐る当たりを見回す男の人だけど、多分姿は見えないんじゃないかなー?

そもそも魔法ではないしね。

魔法使いは1人その辺にいると思うけど。

魔法使いはこの国にもいるけど、万人が使えるわけじゃない。その中でも使いこなせる人は少数。

人間ではってだけで、ほかの種族にはいっぱいるんだけどね。魔法自体は珍しいものでもない。

この国では珍しい方。

生活程度に使える人は何人か、それこそ平民でもいるけど、戦闘までできる人はそうそういない。

それなのにこの国にいる貴重な魔法使いは世界でも指折りばかり、ってこの国どうなってるんだろうね。


ざわり、と鳥肌が立った。

風が舞う。

私の周りはそよ風でもそれはすぐに渦を巻く。

蛇が塒を巻くように。

やばい、と思った。

カトリー姉もほかの3人も気にしてない。

これを気にしない一般人もなかなかすごいんだけど。


男の人は無意識か膝が震えている。

だから私は息を吸った。

パン!と大きく1度手を叩く。

吃驚して跳ねるような気配がいくつか。

これでも収まらないのもいるから困る。

「そこまで、だよ」

おいでと手を伸ばせばするりと指先をかする感触。

目には何も見えてないけど。

彼らを撫でるように宥めてカトリー姉様たちに目を向ける。


「その人その辺に捨ててきてくれる?無傷で適当に」

この場合の適当は適した場所ね。

てきとーじゃなくて。

「ちっ」

今の舌打ち誰かな?


不服そうな護衛3人が男を担ぎあげて外に消えた。

多分これであの男の人は命拾い。よかったね?


じゃ、改めて。

「カトリー姉様、行ってきます」

「……あんな奴どうなってもいいのに」

はあ、とため息を吐き出した姉様が私に手を降る。

「行ってらっしゃい」

笑顔で振られた手に背を向ける。

この短い距離なのにかなり時間がかかった気がする。

まあ、よくあることなんだけど。

うちの姉様達は幸せになるためにここにいるんだから、邪魔してほしくないな。

多分あの人はもうここには来れない。

もう二度と、ね。

彼らの感覚は人間と違うから許すなんてことない。

ご愁傷さまです。

姉様を捨てたのがそもそも悪い。


少し歩けばすぐに大通りに出る。

真っ直ぐ伸びた広い道の先には大きな白亜の建物。

見た目も綺麗なこの国のお城。

かなり先にあるそれはここから見てもかなり大きい。

少し歩いたところにある辻馬車の停留所に向かって足を進める。この時間なら間隔を開けずに辻馬車が来るから待つことも少ないし。

なんて思っている間に、一つの馬車が目の前で止まった。

停留所はまだ先だし、辻馬車よりも豪華で大きい。

装飾はあまりないけど、それでも普通の馬車とは違うことがはっきりと分かる。

家を表すようなものもついてないけど、上位貴族以上の持ち物だっていうのはひと目でわかる。正直お忍び向けではないと思う。

パッと見では辻馬車に見えなくもないけど、視界にはっきりと入れば誤魔化しはできないくらいに高級そう。


私の前で停止した馬車の扉がゆっくりと開く。

馬車の中から見知った顔の男の人が降りてきて頭を下げた。


.

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