絶対領域
王都の一角に位置する、そこは貴族たちが通いつめる高級店が並ぶ大通りの1本裏、娼館やらが立ち並ぶ通りにあった。
外見はその辺りの貴族の邸宅にしか見えない。それでもそこは確かに娼館だった。
貴族の屋敷に勝るとも劣らず、煌びやかかつ趣味のいい外観のそれは紛れもなく、この国一の娼館である。
王都に留まらず、国内でその名を知らぬものはいないほど、それどろか隣国にまで名を轟かせている高級娼館。
しかし、この店は普通の娼館とは言えない、異質なものでもあった。
その店の中に案内されるものは、一目で高位貴族とわかる者から貧困層のような者までと統一性もなく、それどころかこんな場所には似つかわしくない女性や子供までいる。
いかに整えられ、高位貴族とわかるような物腰のいい人間だとしても入口で止められつまみ出されることも多々あるというのだから不可思議だ。
この娼館では娼婦たちの立場が1番高い。それはどこの国の王族であっても覆せないルールとなっている。
娼婦たちの機嫌しだい、娼婦たちの気分次第。
いくら金を積んだとしても、選ばれなければ一目見ることさえ叶わない。
娼婦たちの絶対王政など普通ならば許されるはずがないが、ここを利用するものがあまりにも多すぎた。各国の権力者、実力者、どこにも属さないと言われる魔女たちまでが足繁く通っているなどと噂されているのだから、誰も反論などできるはずもなかった。
世界1危険で、なおかつ世界1安全な場所であると言えよう。
国王であろうとも娼婦に無理と言われれば従わざるを得ない、犯罪者であろうと娼婦に気に入られたのであれば大きな顔で居座れる。ここはそんな場所だ。