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Silver tails ―少女は禍星の下を駆ける―  作者: 百七花亭
【Ⅰ】 クトリの呪詛
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10 館内探検

 ったく、ここは油断もスキもありゃしない。変な連中が多すぎる。


 一瞬たりと気は抜かない方がいいと、肝に命じた。


 ここで、ひいじーちゃん以外に信用できるのは、サディスぐらいだ。

 口は悪いしつんけんしてるけど、ゆいいつ敵意がないし、助けてくれるし、おかしな見返りを要求しないし……そういや、あのグレイとかって若白髪、おかしなこと言ってたような……


「せっかくアイツが自分から出て行ったってのに、連れもどしやがって……!」


 おいらを助けにくる前は、旅に出ていたと聞いた。

 それが、おいらともどってきたことに腹を立ててるってことなのか。

 あれ? でも、サディスはここに住んでないと言っていた。弟子なのになんでここに住まないんだろう? 部屋なんていくらでもありそうなのに……しかも修行もせず、長期にわたって音信不通の旅をしてたなんて……連絡ぐらい魔法でちょいちょいとできそうなものなのに。


 考えごとをしてたら、視界に紺色がひっかかった。急いで石柱の影にかくれる。

 ルーはなるだけ弟子たちを避けつつ、館内をめぐった。

 修行場らしき棟などは近寄らず、曾祖父が利用しそうなところを見てまわった。

 曾祖父専用の書斎や居室、寝室、そこからつながる中庭や温室、実験室。

 そのほかに、首をかしげたくなるような場所が多々あった。

 廊下の天井に扉があるのでなんだろうと、庭師から借りたハシゴでのぼって開けてみると、なぜか地下の枯れ水路に出たり、煙突のない暖炉があったので頭をつっこんで何もないやと出たとたんちがう部屋にいたり、地下へつづく滑り台があるのですべってみたら屋上に出たり。

 そんなことをいろいろ試していたらすっかり陽は暮れて、ホコリとクモの巣だらけで庭を歩いてたら、帰ってきた曾祖父とばったり会った。

 今度は彼の私室でいっしょに夕食を食べてから、東棟の客間にもどった。



 その日、サディスは館に戻ってこなかったらしい。

 ブラウスについたホコリでくしゃみが出るので、とりあえず浴室で洗い流してさっぱりした。衣装山から見つけた夜着を着た。フリルはすごいがリボンはなかったし、だれに見られるわけでもないので、まぁいいかと。

 長椅子でうとうとしていると、扉の向こうで開けてよとアスターの声がしつこかったが、鍵をこわしてまで侵入する気はなかったようだ。





 翌日、また曾祖父と庭の四阿で朝食をたらふくとった。

 出かける彼を見送ると、こちらも昨日のつづきをすることにした。

 とにかく敷地は広大、館は増築のてんこもりなので、ふつうに歩いてるつもりでも、いつのまにか迷宮じみた場所に出ていることもある。

 昨日はあえて見過ごした修行場ものぞいてみた。もちろん、窓からこっそりと。

 光がどんぱち飛びちっていて、対戦練習をしているところらしい。顔つきも真剣だ。

 お化粧ばっちり、髪にはリボン。いかにも育ちのよさそうな女の子たちが一対一で行っているが、顔や腕にかすり傷を負っている。


 魔法士って戦いがメインの職業ぽいから、生傷も多そうだな。


 それから、またあちこち覗きみた。

 ここの人たちが気にもとめないような、不思議な位置にある扉や窓、階段にばかり興味を示してしまうので、結果、いつもおかしな所へ行ってしまう。

 屋根裏の天窓を開けたらすごい眺望が見えるんじゃないか、と思ってよじのぼり開けたら、なぜか庭の大樹のウロの中にいたし。

 そうやってうろうろしては陽が暮れて、帰ってきた曾祖父と夕食を食べて、客間にもどり寝る。というパターンをくりかえし、キャラベ脱出の翌朝からかぞえて、かれこれ四日目になる。

 たまにもどってきたサディスは曾祖父と話しこんだあと、ルーの顔をちらっと見ただけで、またどこかへ出かけてしまう。話しかけるヒマすらないし、声すらかけてくれない。


 なんか淋しいな~……おいらのために、サディスもひいじーちゃんも呪詛をとく手がかりを探してくれているから、文句なんて言えるわけもないけど……


 しかし、そんなサディスにそっけなく対応されても、めげずに声をかける女の子がいた。

 ノア弟子の一人カトリーンだ。歳は十六、七ぐらい。背の高い金髪巻き毛のつり目美少女。どうやら五十人近い女弟子らのまとめ役というか女王様というか、そういう存在らしい。時々、殺気を感じてふり返ると、離れた場所から、カトリーンがすごい顔でこちらをにらんでいる。だいたい一日に五、六回ぐらい遭遇する。

 初対面で一方的な挨拶を受けたが、あれはひどかった。


「輝かしいノア師の唯一の汚点のくせに! あまつさえドーマ様のお手をわずらわせるなんて! このまっ黒のブスザル! おまえなど禁忌の海域でくたばって、二度と帰って来なければよかったのよ!!」


 いかに、この館で〈魔力なしの大魔法士のひ孫〉が肩身狭いか、よ~~~くわかる台詞だ。特にサディスは女の子たちに大人気のようで、嫉妬がハンパない。

 たしかに、日焼けしているので肌は黒いが、サルではない。

 一体なにを根拠に言っているのか腹立たしい。


 だいたいではあるが、館の間取りもつかめてきた。

 東棟がルーの泊まる客間と、薬草および魔法に使用する材料庫。

 北棟が弟子の居室や修行場。

 南棟が曾祖父ノアの書斎、および居室や実験室など。

 西棟が書庫と手術室。まだちゃんと見てないのは西棟だけだ。

 本はなんとなく眠りのツボを刺激しそうなので、外階段をつかって八階にある手術室とやらへ行ってみた。だが、ここには大陸でも二つしかないたいへん貴重な救命機材があるとかで、関係者以外立ち入り禁止だと白衣の男に追いはらわれてしまった。

次話の更新は8/5です。

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