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王様とわたしの秘密の賭け事  作者: 美汐
第八章 発覚
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発覚 1




「門を開けてくれ。これから次の町に商売に行くことになっているんだ」


 行商人の馬車が、王都の門の前で足止めされていた。その馬車には多くの荷が積まれている。王都で仕入れた品物を他の町や村に売りに行くところのようだった。

 文句を言う行商人の男に、門兵は言った。


「ならん。まずは物品をあらためさせてもらう。これは王の勅命だ」


「お、王の……? いったいなんだってんだ?」


 目を白黒させる男をよそに、門前で控えていた兵士たちは、すぐさま行商人の馬車の荷をあらためていった。


 その日、王都にあるすべての門は閉じられ、そこには兵士たちが配置されていた。そこに配置された兵士たちは、王の勅命により、そこを通るものみなの荷を、徹底的に調べ上げていた。

 その目的は、そこに偽の貨幣が紛れていないかを確かめるというものだった。

 それは、門でのことに限らず、王都全体で一斉に行われていた。

 突然の兵士たちの訪問に、王都で暮らす人々は驚いたが、王の勅命ということと、偽の貨幣が紛れているかもしれないという話に、ほとんどの住民は、兵士たちの調査に協力していた。




 そんなことが市井で行われているということを、王宮にいる人々は、まだあまり伝え聞いてはいない様子で、後宮内はいたって平穏だった。

 わたしは昨日リーシンが思いついたことが、現在王都で行われているであろうことを想像し、胸がドキドキとしていた。

 リーシンが考えついたという作戦は、無謀とも思えるほどに、大胆極まるものだった。

 それは、王都全体を捜索し、その中から丞相が隠したお金を見つけ出すというものだった。

 昨日、彼はこう話していた。


「丞相の屋敷から横領の金が見つからなかったということは、どこかに移動させたという可能性が高い。しかし、それはそう遠くまでは移動させられていないはず。王都のどこかの屋敷に隠されていることが考えられる。きっとあの日、事前にこちらの動きを知っていた丞相側は、金庫を持っていくふりをして、どこか違う場所へと移動させていたのだろう。まんまとこちらの目を欺いたと思っているのだろうが、まだ手はあった。それは遠くても王都内のどこかには存在しているはず。つまり、この王都にある建物すべてを調査すれば、必ずそれを見つけることはできる!」


 そんな馬鹿な、と最初は思った。そんな大がかりな調査、聞いたことがない。

 けれど、確かにそうすれば、どこかに必ず横領したお金及び、偽金の入った金庫は見つかるはず。

 わたしはリーシンの大胆な発想に、驚嘆していた。


 まず、事は迅速かつ極秘に行われなければならなかった。

 リーシンは夜中のうちに王直属の近衛兵長に声をかけ、兵を動かすことを指示した。そして彼らを使って、今朝から王都の門を閉鎖して検問をし、そして都内の各家々を捜査にあたらせているはずだった。


 リーシンが去ったあとその後の報告は受けてはいないが、うまくいっていれば、今王都内では大規模な捜査が行われているはずである。

 いずれそのことは丞相らの耳にも入るに違いないが、すでに封鎖されている王都内から逃げることはまずできないだろう。

 きっと早々に横領のお金は見つかるに違いない。

 そして事態は、わたしの予想よりもはるかに大きく動いていたのだった。


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