表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰色の勇者は人外道を歩み続ける  作者: 六羽海千悠
プロローグ・終焉の大陸
8/134

第5話 『部屋創造』

 「これは……『部屋』なのか……?」



 「部屋です」


 

 「いや、でも空とか地面とか」



 「部屋です」




 春のごり押しの説明に納得のいっていない俺を見かねてか、春は「天井と壁がありますので」と一言付け加えた。いや、違う。そういう問題じゃあない。



 まず、今俺の目の前に広がっているのは草原だ。オーストラリアとか北海道の写真で見た事ありそうな、どこまでも見渡すことができる緑の絨毯。水平線にまで続いている。

 そしてその草原の中を、のそのそと動物たちが歩いて草を食べている。動物の種類は軽く見た限りでは牛や羊などか。遠くに空を駆け上がっている牛が見えるが気のせいだろう。



 そう、見ての通り『牧場』だ。



 目の前に広がっているのはどこからどう見ても『牧場』だった。

 春がいうには天井と壁があるらしいが、草をかきわけると地面には土があり、上を見上げると真上には太陽が輝いていて、その周りを雲がただよっている。

 本当に天井や壁があるのかどうかすらも疑わしい。




 しかし、このどこからどうみても『部屋』には見えない『部屋』を作りだしたのはまぎれも無く俺の能力【部屋創造】だった。





 ♦︎





 まず春に説明されたのは【部屋創造】の能力についてだった。


 春は、俺の【部屋創造】の能力をこう評していた。



 『万能であるが故に万能でない能力』と。



 最初に聞いたときは正直言葉の意味がわからなかった。

 だがその後、春に【部屋創造】の能力の説明を聞いて俺はその意味をについて納得する。











 ──【部屋創造】。それは文字通り『部屋を創造する能力』。




 ではどのようにして作り出すのか?



 俺は頭に作りたい部屋のイメージを想像してその部屋を作りだす。そんな風なやり方を思い浮かべていた。


 だが実際は全く違っていた。

 いや、部屋を作るという点では同じ。ただ、その方法が違ったのだ。



 俺はそのとき、玄関で春に「実際に使ってみた方が早い」と言われ能力を発動した。すると『ルームメニュー』という文字の書かれた『画面』が空中に現れたのだ。それはステータス画面に似ていてぼんやりとした半透明の画面だった。


 春に聞けばこの『ルームメニュー』こそ【部屋創造】の能力のすべてらしい。


 そのルームメニューには『メニュー』の名の通り、『カスタマイズ』や『ルール設定』などいろいろな項目があるのだが、その中に『部屋創造一覧』という項目がある。

 この項目には現在作ることのできる部屋の名前が、びっしりと書かれていた。『リビング』や『トイレ』など『部屋』と聞いて思い浮かべるものから、『庭園』や『サッカー場』なんていう明らかに部屋の外にまで出ているだろとつっこみたくなるようなものまであった。

 その大量にある一覧から選んで作り出すのが、いわゆる【部屋創造】の『部屋』の作り方らしい。春が言うには能力のレベルが上がればもっと部屋の種類や能力の機能は増えていくとのことだった。



 大量にかかれた部屋の名前を見て、一瞬あの白い部屋で大量のスキルを読み込んだ悪夢をフラッシュバックしたのは内緒だ。










 そんな豊富にある部屋の種類。だったら今からすべて作り出せばいいじゃないかと思うかもしれない。だが部屋を作ったりなどの能力の機能には、ある『ルール』が存在した。


 

 それは『RPルームポイントが必要』ということ。



 『部屋を作る』にしても、『カスタマイズ』するにしても、『ルール』を設定するにしても、ほぼすべての機能に対して『RP』が必要になる。



 そのとき俺が持っていたRPは全部で『17000RP』だった。部屋と聞いて浮かぶようなもの、さっきあげた『リビング』や『トイレ』なんかは、大体作るのに『2000RP』が必要だ。

 なのでこのポイントの量は『そこそこ』多いほうだろう。

 しかし逆に言えばそこそこでしかない。今のこの状況は何もかもが不足している状態。そうすると必然的に作らなければならない部屋というのがどうしても出てくる。なので贅沢にあれやこれも作り充実させるなんてことはできないわけだ。『工作室』なんて興味のそそられるものもあるが作るのは難しいだろう。

 そんなもどかしい気持ちを抱いて俺は春が初め言ったことを思い出した。



 『万能であるが故に万能でない』


 


 RPとは、まさに【部屋創造】の能力そのもの。あれば『なんでもできる』し、なければ『何もできない』。まさに『万能であるが故に万能でない』とはこのことだったのだのだ。








 それでは『どうやってRPを増やすのか』というのはとても重要な問題になるだろう。むしろそこがこの能力の本質になるはずだ。

 

 まず春が言うにはRPは1日に1回、『10RP』増えるらしい。これが一つ目のRPの増やし方だ。

 

 そして二つ目の増やし方。能力には『LV』がある。その能力の『LV』をあげ、『1』あがるごとに『2000RP』が増える。これが二つ目。



 今分かっているRPの増やし方は残念ながらこの二つのみだ。



 増やし方自体はまだ存在するらしいのだが、春は俺の知識しかもっていないため『RP』の増える条件に『異世界にしかないもの』が関係するとなると分からないらしい。これは、今後調べていくしか無いだろう。




 とりあえず今RPを増やすためにできることは『能力のレベルを上げる』事と『RPを増やす方法を探す』ということだ。



 なので俺はまず春に「どうすれば能力のLVがあがるのか」を聞くことにした。それが分かっていればより効率的に能力のレベルが上げられ、RPが増やせる思ったからだ。






 しかし春から返ってきたのは、思っていたよりも厳しい『回答』だった。





 ──『知らない』





 春はそのときこう言っていた。


 

 「スキルが『体』や『頭』や『精神』の力だとしたら、能力とは『魂』の力です。『魂』がどのように成長するのか。仮に『人の魂はこうすれば成長する』という共通の条件があったとして、秋様はその事実に納得致しますか?

 人が、『同じ条件で成長する』というのは、つまり『過程』がすべて同じになることだと私は思います。『過程』が同じになれば自ずと『結果』も同じになる。世界はきっと似たような人に溢れかえることでしょう。 

 男性や女性、大人や子供など人は文字通り千差万別です。ならば個々の成長の条件もまた、人それぞれです。秋様には秋様の成長の方法があります。そしてもし、それを知るとしたら、それは私ではなく秋様自身です。故に私からの答えは『知らない』ということになります」

 


 成長の条件を知るのは俺自身。

 俺はそのことを頭の片隅でずっと考え続けていたのだが答えは未だ見つかっていない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] >万能であるが故に万能でない 文脈からすると、 必要なRPがあれば万能だが、RPに限りがある故に万能でない、といったところでは? この表現だと収まりが悪くなりますが。
[一言] 魔石だろ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ