4. 『ブログ部』へようこそ……あれ?
帰宅部から帰宅……まぎらわしいな。
そして、ネットの世界へ――――
家に帰ってからの活動も『帰宅部』って部長が言ってた!(そりゃ名前的にそうだよね)
◇
結局、あのあと俺たちは、ダベるだけダベって帰宅してきた。
ああ、素晴らしきかな、人生の浪費。
実に無意味な一日であった……。
考えてみれば――いや考えるまでもなく、やはり無意味すぎる。
それもそうだ、朝は謎のストーカー女。昼まで花壇に刺さって気絶。そして部室で再気絶。そして帰宅し、今に至る。三分の二が気絶ってどうよ? 何かおかしくないか?
全く、これはひどい――と同時に、やはりどこかでこういう時間を求めている自分が居ることにも気付く。
これが青春なのか、平和なのか――平和というには、気絶したけどな。
◇
帰宅後、俺はさっそくPCの電源を入れる。と同時に、カップ麺にお湯を投入――
――――そして、立ち上がったPCでサイトを見る――――頃に、丁度出来上がり。
パソコンが立ち上がって、湯気もたちあがる。どうよこの効率の良さ。趣深いだろ?
って違うか。
――――こんな俺にも、パソコン上にではあるが、至極真っ当(?)な趣味がある。
いわゆる『日記』ってやつだ。別に、現実の友人が居ないからとか、特につながりを求めてやってるってわけでは無い。
無いけど、何か『俺』というものを残しておく手段がほしい。そう思って始めた。
もちろん中身が――マジメに語った人生論から、すぐに下らない日常の内容へと――シフトしたのは言うまでもない。だってダルいし。
――とか考えつつ、立ち上げたネットの画面で、アドレスとパスを入れて……SNSって言うんだっけか? SNSサイト『ブロング』へ、ログイン――――ちなみにパスもアドレスも、一回一回手入力だ。ブログ始めてすぐに『下手に入力情報残すと、色々乗っ取られる』なんてうわさも聞いたしね。用心に越したことはない。
『ブロング』というのは作ったやつからすればブログ+ロングって事なんだろう、俺としては足が飾りのロボット的な物体が思い浮かぶけどね。
しかし、マヌケなサイト名の割に、そこそこに利用者が多かったりする。シェア的には――どうだか知らないけどな。
さて、今日もニュースやら何やらチェックしよう――って、お、新着メッセージが二件。
二件ってのは珍しいな……どうせ一件は雪乃だろうし。
『<<差出人名:SNOW>> 今日は……その、悪かったわね。でも……悪いのは全部……アンタなんだからね! 次に同じ事したら、承知しないからね!!』
二本のシッポをぴょこぴょこさせて――表情もころころ変えながら――キーを叩く様子が目に浮かぶ。
一件目は案の定雪乃さんでした。
――ってあれ?
内容を要約すると、『悪かったけど全部俺が悪い』の? なにこれ? 論理展開が新しすぎませんか?
いや、もう一度良く考えよう。
アイツの性格を元にした正しい解釈は、こうか――――
『今日は……その、(アタシがアンタを蹴ったりして、アンタが)悪かったわね。でも、悪いのは全部――(ここからは一緒だな』
――――ってどんだけ悪魔!? 論理展開じゃねえよ。もう道徳的におかしいだろ! なんとかしろサツども!
そして続く文章は――
『追伸、どうせアンタ寝るんだろうから、ムリに返信しなくていいわよ。』
おや、後ろは意外と普通でした。一安心。
――って、俺がもう寝ると思ってるのかよ……今はまだ午後六時半ほどですからね……まだ寝ませんよ。
この娘っ子は俺のことを幼稚園児とでも思ってるんだろうか。全く、人のことを子ども扱いしやがって……むしろ自分こそ幼稚園ってほどではなくとも、チビッ子のくせに――――
――――ヴヴヴッ
マナーモードの携帯がブルブル震えて着信を知らせる。
『新着メール:一件』
携帯にメールか。差出人は、どれどれ――――
『<<蘇芳雪乃>> ねえ、アンタ今失礼なこと考えなかった? なんていうか……違ったらハズいけど、今、アンタがアタシのこと馬鹿にしたような気がするの。……まあ明日素直に言えば許してあげるから、教えなさい。あと明日はちゃんと授業出なさいよ。それじゃ。』
――――――――ブルブルブルブル
携帯の次は俺が震える番でした。いいホラーですねHAHAHA。
ていうか、そんなことより。このピンポイント具合――――
――――大丈夫だよな? 次電話鳴ったら『今、アンタの後ろに居るの……』とか無いよな!?
……。よし、着信なし。念のため後ろも振り返るが、さすがに居ないようだ。
だが、ここに居ないという事は――――どうやら、アイツの第六感(?)は、少なくとも監視カメラか盗聴器と同レベルのようだ。……こわっ。
――――とりあえず、アイツに軽くメッセージを返信しておく。なんだかんだで、返さないと次の日拗ねる。それでも放っておくと、しょんぼりとして、それより先は――――多分蹴られるんだろうな。試してない。
ちなみに返信の中身だが、勘違いで終わらせるために『素直に言う』なんてことはしない。まだ死に場所を見つける歳ではないし。
さて、気を取り直し、俺はもう一つの新着メッセージをチェック。差出人は――
『<<差出人名:KYO>> よう。最近更新無いが、生きてるのか? たまには生きてるかどうか位書けよ。』
KYOさんは、俺のネット友達。一時期――俺が寝ている間見た、下らない『夢』を日記のネタにして更新していた頃――に、その夢が面白いとかって食いついてきた人だ。
その後何度かやりとりする間に盛り上がって、フレンド登録した流れだったりする。
口調はぶっきらぼうだけど、何となく優しいオーラを感じる。年は近そう。一個上くらいだろうか。
ちなみに、メッセージやら、日記のやり取りで盛り上がってるうちに、一度『是非KYOさんと会ってみたいですね』と伝えたときは『昼夜逆転慣れすぎて夜中以外は寝てっからムリ』との返事が来たので、二人オフ会は企画倒れということになった。
しかし、少なくとも俺とは気が合う人だということは間違いない。
俺も夜は――象が踏んでも起きないくらい(謳い文句)――眠いから、いくら頑張っても日付が変わる辺りからは、全く起きられないし、相手が『起きられない』ってあたりも、良くわかる。なんだかスゴい親近感。
ちなみに、恥ずかしながら『ブロング』の友人はこの二人のみだ。
来るものは拒まず。と、思ってるから、大体の日記は全体公開だけど――――今のところ、どうみても『出会い系』以外の申請は来ていない。
人望がないのか、日記がつまらないのか……後者だと思うことにする。
<<KYO>>さんは、先の『夢』の話で話しかけられて以来、純粋にネットの知り合いだ。
そして、雪乃の場合は、俺に『ブロング』を教えると同時に、自分のアカウントにアクセスし、勝手に登録申請⇒承認だけやって、フレンド<<SNOW>>を残していった。
蛇足だが、『そういや、お前ってスノーとか言われるの嫌いだったんじゃないのか?』って聞いたら蹴られた。『アタシはスノーじゃなくて蘇芳だって言ってるでしょ!』だってさ。
雪乃ガイドライン法では、三次元上で『スノー』と言うのがアウトらしい。なんでやねん。
などと振り返りながら作業を進めて(KYOさんに要求されたし)生存報告がてら、日記の更新終了。
内容は当然、今日の出来事を名前だけ伏せて日記にしたものだ。
つまり俺が第三者として見たなら……まず信じないような話になっている。とだけ言っておく。
一通りニュースやら、巡回してるサイトやらも見終わり、風呂にも入って……すべて終わった頃には、時間は午後の十一時。
さて、そろそろオネムの時間ですね。
画面見すぎて目も疲れたし、何よりも――――私めの睡眠欲が限界に達しております。
そんなわけで
お気に入りのウザちゃん(ツンデレ抱き枕、抱くと『うざっ――』って効果音が出る)を抱いて――――
今夜もオヤスミ。
読んでくださった方はありがとうございます!
早いもので、初書き小説から既に四話目……だと……?
休み中に、できる限りガーっとやってみた結果がこれだったりします。
そして文章の成長具合は……うん、後ろを考えてから書くから、セリフ回しやら描写やらが楽しめるのかどうか……自分だと全く分かりませんね(笑)
というわけで、御意見 御感想、誤字脱字の指摘などお待ちしています。
などとフザけつつ、今回はこの辺で。