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プロローグ 転生の魔法

俺――ハイゼス・シーヴァルの人生を一言で表すとするのなら“力”と言う言葉で足りるだろう。

ただただ、強くなる為に修行を積んだ。圧倒的な力を身につけた。

努力を重ねて重ねて重ね続けた。


…………大層な理由なんてない。

物語に登場するような、悪を打ち倒し世界を救う勇者に憧れたなんて事も、弱きを助け強きをくじきたいだなんて事も思っちゃいなかった。


――ただ、何か一つだけ、誰にも負けないと言える特別な物が欲しかった。


「俺は馬鹿だったからな……体を使う事柄くらいでしか、上り詰める事が出来なかったのさ」


ふんわりとして、温かみのあるベッドの上で天井を見上げながら、俺は呟いていた。

――自分自身の人生を、振り返りながら。


「それで、この魔王と呼ばれ恐れられていた私をボコボコに出来るのは、神とやらのいたずらなのかしらね」


そう言って俺を看取ろうとしてくれている女性――カリアは呆れたように笑った。

彼女と出会ったのは俺が31歳の頃だったが……一体全体どういう事なのか、50年経った現在でも、その美しい容姿は変わっていない。


「…………ねえ、ハイゼス。もし、もし今の貴方の記憶をもったまま生まれ変われるとしたら……貴方は、持って生まれたいと言うのかしら?」


数秒の間が俺たちの間を支配した後、突然。

カリアが、そんな言葉を口にした。


「考えた事もないな」


もし、俺の今の記憶を持ったまま、二度目の人生を歩めるというのなら、俺は――。

考えて、考えて、考えて――恐らく、三分程はかかってしまっただろうか。

その末に、結論を導き出した。


「楽しかった日々の思い出くらいなら、持って生まれたいな」

「……そう、けど残念ね。私がこれから行う転生の魔法は、記憶の選別は出来ないの」


彼女がそう言った瞬間だった。

床から、巨大な魔方陣が出現し、まばゆい水色の光に包まれたのは。


「なんだこれは……」


突然の出来事に、俺は困惑しながらこの状況を問いかける。

だが、彼女はどこか悲しそうな目を向け――。


「もし私が生まれ変わって、記憶を失って……残虐の限りを尽くす魔王に戻っていたとしたら……貴方が、私を今の私にしてほしい」

「どういう……!!」


彼女のその言葉の真実を確かめる事が叶わぬまま、俺の世界は、どこまでも果てしない闇に包まれた。

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