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怖がらせたくて。

作者: 雨枷

怖がらせたくて。


 まだ6月、、少し前までは梅雨の雨が多く降り、太陽が隠れる日が多かったはずだが、照りつける日差しで肌に痛みに似た何かを感じる季節と温度の中で男は小言を嘆く

 「今年の夏は異常だなぁ、少しでも涼しくしたい」

 それもそのはずで、彼が大学のために上京し1人暮らしする部屋は築30年近くの木造建築であり、申し訳程度の冷房設備では冷房の効きすら少しだけ悪かった。

 見た目はボロいが大家さんの善意で男の一つ前に借りていた住人が置いていった家具もいただいた。 

 少し気持ち悪かったが仕送りの月2万円とバイトで生活をやりくりしている彼からしたら、贅沢を言えるわけもなく大学から徒歩5分の好立地に月1万円で住める安住の地を得れただけで文句など言えるはずがなかった。


 しかし、彼は暑さにめっぽう弱く、夏という季節には友人や恋人に誘われても外での遊びはせずに、空いた時間は友人や恋人を自宅に招き大学の1限ギリギリまで堕落した日々を過ごしていた。


「旅行に行きたいな」

 毎日のルーティンに飽きたからなのか茹だるような現実から少しでも離れたくて彼女はそう口を開いた。

 もちろん大賛成だ、ありがたい事に安い家賃のおかげで少しずつだがバイトで貯めた貯金を使うべく、2人で計画を立てた。

 せっかく遠出するならと観たい場所や現地の食べたい物を決めていると予算はすぐに底をついてしまった。2人は当初予約しようとしていた子綺麗な朝食バイキング付きのホテルをやめ安く泊まれる旅館に泊まる場所を変更した。夜まで遊ぶつもりだし寝るだけならどこでも良いだろう、これはこれで風情なのかなとも思う事にした。


 修学旅行ぶりの事でテンションが上がり旅行前日はなかなか寝付けずにいる時にふと思いつきしめしめと顔をニヤつかせながら携帯電話を取り出した。


『せっかくの夏の旅館だし怖い話で怖がらせてやろう』


 検索ワードにそれっぽい言葉を羅列すれば欲しい内容がでてくる便利な世の中になったものだと感心しながら【旅館 古い 泊まる 家 呪い 怖い話】等と検索をかけお気に入りの怪談を探したところ好みの物を見つけた。ちょうどここら辺が発祥なとこも少しの運命を感じた。


---旅館にある取っ手をあえてなくしているタンスは絶対に開けてはならない。そこには鶴が有り、見たものへと死を運ぶだろう---


 鶴が不吉なのは北欧の方だけで日本の旅館にある怪談としては変な話だが分かりやすさでこの話を見ていると、数日前に新品のコピー紙に紅茶をこぼしゴミ箱へ捨てた事を思い出しテンションがさらに上がった。ゴミ箱からくしゃくしゃになった紙を取り出すと古い和紙のように見える絶妙なアンティーク感が出ており、急いで鶴を折り旅行用のカバンへつっこみ目を閉じた。


 いざ旅館に着くと想像よりも少し趣があり

彼女が銭湯へ行っている間に3段タンスの一番下についた取っ手をくるくると回して外し、開けた後に奥へそっと鶴を置き入れた。


 旅行先でのご飯を満喫し少しだけ酒気を帯びた状態で2人は旅館へ戻り、敷いてあるいい匂いの布団へ飛び込み寝ようと目を瞑った時に男は思い出したかのように語り始めた。


「なんか、旅館って昔から使われている建物や家具をあんまり変えずに使ってるイメージない?

それってほとんどは日本の古き良き物を大切にしようって気持ちで文化として残ってるからなんだけど、一部はどうしても捨てれない物もあるみたいなんだよね」

 男は普通に雑談をするようなテンションで話していた所から少しだけ話す速さと声色を落として続ける。

「それは何かを溜め込んでいるモノ、それは何かを封じ込めてるモノ、、とされてるらしくて、前に聞いた話だと例えば鶴やカラスの置物を入れて閉じ込めるらしいのよ」

 話初めてから段々と小さく、そしてゆっくりになる彼女の相槌を聞き終わり、一呼吸の間を開けた後男は急にふにゃっとした笑顔を見せあっけらかんと態度を変え少し今までの話を小馬鹿にするように続けた

「まっそんな言はあり得ないんだけどね!だって普通に考えたら旅館に泊まりに来た人が急に呪われるなんて、それこそ!開かずの間みたいにするはずじゃない?」

 怖がっている彼女を見て男は布団から立ち上がりタンスに手をかけた

「ほら!こんなに古そうなタンスがあるけど全然何も入ってないよ」

 そう言いながら男はタンスの1段目と2段目を開けて見せ続けた。

「あれ?深さが違うな、、ん?なんだ?取っ手が取れてるのかな?」

 少しだけ苦戦しながらタンスの3段目を開けて男は固まったように体を強張らせて鶴を指差し続けた。

「え、、、、は、ははは、いや、、まぁ、そんな事もあるもんだよ、ね」

 彼女の方を見ると先ほどまでの酒気は消えて泣きそうな目でこちらを見ており声すら出ない様子だった。

 

 思っていたよりもよほど怖がっていた彼女に自分が仕掛けたとは言い出せずに悪い事をしたなとは思いながらも、普段よりも密着して寝る事になりマッチポンプのような事をしてしまったと少しきまりが悪い夜を過ごした。


 次の日になると彼女は元気になっており

「一生話せる怖い話ができたね!!」

 と明るく話しかけてくれた。切り替えと明るさにいつも救われている事をしみじみ感じた。


 旅行も終わり最寄り駅まで彼女を見送ったあと家に着き男は旅行で使った服を洗濯機へ入れ

た。

 旅行へ出る前に散らかした服を畳み、タンスへしまっていると奥に10cm四方ある木の箱のような物を見つけ、不思議に思いながらも取り出し縦や横へ引っ張ってみた。

 箱は組み技のようにハマっていたが綺麗に開き中から小さな木彫りの鶴の置物が出てきた。

 


なんとなくの2作品目です。

1日1作品は働きながらじゃ難しいなと思いました。

サイトの使用をよく分かっていないのですが

今年の夏は暑いですね、、、

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