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第五話「戦場」

前回からの、あらすじ。

家族関係ドーン!両親殉職バーン!受験競争ドーン!

学校生活バーン!

 響き渡る銃声、頬を焼く爆炎。

周囲では、命令、排莢音、魔物と、そして、時に兵士の断末魔が響き渡っている。

 しかし、ミハイルには、自らが跨る、軍馬の呼吸音と、その軍馬が奏でる足音しか、聞こえていなかった。


 突撃命令に従い、ミハイルの所属する、第117騎兵小隊と共に、分隊長として突撃する。

副官たるアダルガーは、ミハイルをサポートするべく、傍につき従い、ミハイルを襲おうとする魔物を、片っ端から撃ち抜く。


 アダルガーは、その任務を立派に果たし、目標に鉛玉を届かせる。

ライカンスロープは、血反吐を吐き、倒れていく。

ミハイルも、無事にホブゴブリンを討伐し、撤収命令を下す。


 第三等級魔境「エーベネン・デス・フォイアース」で発生した、スタンピードは、軍人だけで、実に数百人を超える犠牲者を出した。

それは、スタンピードの被害としては、比較的少ないものではあり、その場に立つ、ミハイルの目には、欠片ほどの動揺も、見られなかった。


 初の実戦にて、ロイエンベルク王国軍人としての才覚を、存分に示したミハイルは、以降も数々の戦線に投入された。

僅か5年間で、17回。負傷は勿論、何度も命の危機に瀕しながらも、生き延びてきた。


 その過程で、芽生えつつある、才覚があった。

それは、指揮下の部隊を纏め、自らの手足の如く、動かす能力。

そして、天性の、弾道計算への才能。

ミハイルの放つ弾丸は、馬上にも関わらず、高い命中精度を誇る。


 ミハイルの一声で、部隊は動き出す。その様は、まるで、自らの身体を動かす、戦士の様であり、彼の指揮化にある部隊は、高い練度を有している、という評価を、内外から得ていた。



 ロイエンベルク歴300年。

ミハイルの任官から、5年前。

ロイエンベルクの近隣地域にて、とある国家が生まれつつあった。


 その名も、ライオネル王国。

ベルン公国に支援されたこの国家は、ロイエンベルクを除く、周辺諸国に対して、優越した軍事力を有していた。


 ライオネル王国自体は、291年に建国された、新興国家であるが、ベルン公国軍人、レオネールが、国王となり、打ち立てた国家である事もあり、多くの支援を受けてきた。


 しかし、レオネールの死後、政治的内乱を経て、生粋のライオネル軍人たる、レオンが、ライオネル王国2代目国王として、ロイエンベルク歴300年に即位、大いなる野心を抱き、周辺諸国を次々と併呑していった。


 そうした経緯で、ロイエンベルク王国と国境を接したこの王国は、ロイエンベルク領と、その技術力への野心を、隠そうともしていなかった。


 国境部では、幾度も軍事演習を行い、挑発を繰り返した。

更には、外交的にも、多くの無礼を行ってきた。

最初の頃は、相手にもしていなかったロイエンベルクであったが、王族への非礼や、侮辱が重なると、その我慢も、次第に、限界へと近づきつつあった。


 ロイエンベルク歴308年には、両国は国交を断絶、国境部に部隊を展開し、睨み合いを続けていた。

ベルン公国は、この状況を静観しており、ロイエンベルク王国からの、外交的抗議にも、耳を貸さなかった。


 ロイエンベルク歴310年。

ライオネル王国王都「レオネール」にて、蝋燭が部屋を、照らす中、5人の男達が、長机で向かい合い、話し合っていた。


 否、正確には、その中の、4人の男達が、激しい口論を繰り広げ、上座に座る、比較的豪勢な装いを纏った、40歳前後の男が、それを、静かに見つめていた。


 軍装を身に纏い、大将、そして、参謀総長である事を示す階級章を身に着けた、30歳程の男が、口を開く。


 「ロイエンベルクに今すぐ攻め込むべきです!

奴等は、所詮は魔物相手に強いだけの、狩人、我が精強なる、ライオネル軍であれば、瞬く間に轢き潰すことが出来る!」


 その言葉に対して、元帥と、総司令官の階級章を身に着けた、矍鑠とした60歳程の老人が、首を振りつつ答える。


 「確かに、ロイエンベルクは弱体かも知れぬ、しかし、それでも、我が国よりも大きな領土と、多くの民を有する、強国であるのは間違いない。

今、攻め込むのは、時期尚早じゃろうて。」


 少将と、参謀の階級章を持つ男は、いきり立つように、立ち上がり、口を開く。

どうやら、参謀総長の補佐官であるようだ。


 「では、何時が良い時期であると、元帥閣下は思われるのですか?

5年後?10年後?口では何とでも言えるでしょうね、なにせ、その頃には、閣下はとっくのとうに退役しているでしょうから!」


 「それは、口が過ぎるぞ、少将。立場を弁えて、発言したまへ。」


 中将と、副司令官の階級章を身に着けた、40歳程の男が、少将を戒める。

少将は、その発言を聞き、少しの間、顔を真っ赤にし、何かを言いたげにした後、黙って着席する。


 そこで、豪勢な衣装を身に着けた男…レオンが、おもむろに口を開く。


 「諸君等の言いたいことは、よく分かった。

余は、我が国の行くべき道を、今ここに決する。

謹んで、聞くが良い。」


 「「「「ハッ!」」」」


 レオンに対して、4人が一斉に傾聴する。場は、一時の静寂に包まれ、そして、破られる。


 「我が国は、ロイエンベルク王国への、宣戦布告を宣言する。

奴等は、魔境から得られる富を、技術を、不法に占有し、周辺諸国への威圧に使用している。

そのような状況は、到底容認出来ない。

奴等を打ち倒し、この地に、新秩序を打ち立てるのだ!」


 「「「「アハトゥンド!」」」」


 4人の男達は、レオンに向かい跪く。その顔には、狂喜、歓喜、懸念、無念。

それぞれの感情が浮かんでいた。


 ライオネルは、動員令を発令し、総兵力20万人中、18万人を率い、ロイエンベルク国境を侵犯した。

ロイエンベルク=ライオネル戦役、後に、そう呼ばれることなる戦争の、始まりであった。

本日も、ご読了頂きありがとうございます。初めましての方は初めまして。チャデンシスと申します。大体週一〜週三ペースで投稿しています。

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