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第四話「学業」

前回からの、あらすじ。

家族関係ドーン!両親殉職バーン!受験競争ドーン!

 入学から、実に1年。

ミハイルは、学長室に呼び出されていた。

一つ、深呼吸をし、扉をノックする。


 「入れ。」


 「失礼します。」


 ミハイルは、覚悟を決め、学長室に入ると、即座に敬礼し、口を開く。


 「召集に応じ、馳せ参じました。ミハイル一等兵です。」


 学長は、静かに答礼すると、直ぐに口を開く。


 「今回、君を呼んだ理由は、君自身が、良く分かっていることだろう。なんだと思う?」


 ミハイルは、少しの間、目を瞑ると、答える。


 「私の、成績のことですね?」


 学長は、一つ、頷くと、口を開く。


 「その通りだ。率直に言うと、君の成績は、非常に芳しくない。

実技は何とか、平均値を確保しているようだが、学術の方は、てんで駄目だ。

全て、平均以下、授業態度、寮内態度、共に非常に良好で、欠席も無いから、これまでは、退学を免れてはいる。


 だが、残念ながら、我が栄光ある、ロイエンベルク王立軍学校に、君のような、成績が芳しくない者の居場所は無い。」


 ミハイルは、ただ、立っている。

しかし、その目から、闘志は、全く失われていなかった。

それを見た、学長は、一つ頷くと、口を開く。


 「しかし、君の勉学に対する意欲は、素晴らしいモノだ。

そこで、だ。

君に、チャンスをやろう。


 半年後の、期末試験。

そこで、全教科、平均より、上位の点数を、取ることが出来れば、そして、それを、この先も維持できれば…退学を、免除しよう。」


 ミハイルは、それを聞き、即座に答える。


 「分かりました。粉骨砕身、一層奮励努力して参ります。

チャンスをくださり、ありがとうございます。」


 学長は、その言葉を聞き、満足気に頷くと、口を開く。


 「うむ、期待しているぞ。

効率の良い勉学の為、容赦無く教官たちを頼りなさい。

では、下がってよろしい。」


 「ラボール!」


 ミハイルは、一礼すると、学長室を退出する。

彼にとって、苦難の半年間の、始まりであった。


 それから、1週間後、ミハイルは、基礎の基礎から、教官たちに教えてもらい、少しずつだが、学力を向上させていた。


 その日、ミハイルは、図書室で、自習するべく、中庭を経由して、図書室へ急いでいた。

そんな彼の瞳に、中庭の、木陰で寝転がり、揺れる木の葉を見つめる、一人の青年の姿が映った。


 ミハイルは、思わず足を止めて、その青年に見惚れる。

余りにも整った、その容姿は、彼が、王族の血を引いている事を、意味していた。


 その後、ミハイルは、直ぐに気を取り直すと、図書室に向かった。

しかし、翌日、翌々日、翌翌々日と、何日も続いて、王族の青年は、同じ場所で寝転がっていた。


 そんなある日、ミハイルは、とうとう、好奇心を抑えきれなくなり、青年に話しかけた。


 「そんな所で、何をしているんですか?」


 青年は、ミハイルを一瞥すると、起き上がり、答える。


 「何をしている…と、聞かれてもな。

特に、何もしていないとしか、答えようが無いのだが。

君は?毎日、この中庭をショートカットに使っているようだが、何をしているんだ?」


 ミハイルは、答える。


 「図書室、若しくは、教官室で、勉学に励んでいます。」


 青年は、片眉を軽く上げ、無表情に答える。


 「ほう、それはまた。真面目じゃないか。

こんな所で、時間を潰しててもよいのか?

さぞかし、優秀なんだろう?」


 ミハイルは、一瞬、皮肉かと身構えたが、青年が、まったくそんな素振りを、見せていないため、警戒を解き、答える。


 「今日は、自習するつもりだったので、多少予定が、ずれ込んでも問題ありません。

それと、私の成績は、退学寸前になるくらいには、壊滅的です。」


 青年は、目を瞬き、驚きのあまり、口調を崩して、答える。


 「…マジ?」


 ミハイルは、菩薩のような微笑みを浮かべながら、答える。


 「マジです。」


 青年は、しばらく絶句すると、露骨に話題を変え、口を開く。


 「そう言えば、自己紹介をしていなかったな。

私は、フリードリヒ。フリードリヒ・フォン・ロイエンベルクだ。

この軍学校では、上等兵となっている。君と、同階級だな。」


 ミハイルは、その名前を聞き、確信する。

目の前にいる、この美青年は、フリードリヒ第2王子…このまま行けば、後に大公となられる御方なのだ、と。


 「私は、ミハイル・ディルゲンと申します。

男爵の位を、拝命しています。」


 フリードリヒは、若干安堵したように、その無表情な顔を緩め、口を開く。


 「ほう、話は聞いているよ。ご両親の事は、残念だったね。

だが、安心したまへ、レーティラウトの屑どもは、無事に殲滅された。

貴卿の両親の仇討ちは、行われた。

我が国は、犠牲を容認はするが、無駄にはしない。そうだろう?」


 ミハイルは、両親の事を思い出し、少し気落ちしつつも、答えた。


 「殿下に覚えていただき、光栄に思います。

そして、全く持ってその通りです。私の、両親の犠牲は、無駄ではなかった…

そもそも、両親とは、疎遠でしたし…ね。」


 フリードリヒは、現状、地雷を踏み抜いてしかいない、自分自身に呆れつつ、口を開く。


 「そうか…まぁ、その、なんだ。王族である私としては、貴官の献身と協力に感謝する、としか言えないな。」


 ミハイルは、少しの間、黙祷するように、目をつむり、口を開く。


 「ありがとうございます。殿下、そろそろ、私は行きます。

休憩時間の邪魔をしてしまい、申し訳ありませんでした。」


 フリードリヒは、微笑みつつ、答える。


 「そうか、私は、この時間帯なら、最近は、よく、この場所に居る。

覚えておくと良い。」


 それから、数日間、毎日のように、ミハイルはフリードリヒと話した。

理由は、特に無かったが、2人は、不思議と気が合ったのである。

そうして、フリードリヒに勉強を教えてもらうようになった。


 フリードリヒの教えは、非常に分かりやすく、教官からの指導と合わさり、みるみるうちに、ミハイルは学力を向上させた。

そうして、向かえた、期末試験。

ミハイルは、途中から、アダルガーも呼び、フリードリヒと共に勉学に励んできた。


 そうして、見事、全科目、平均点よりも高い点数を、確保したのである。

代償に、実技の点数が、若干下がったが、以降、ミハイルは、自身のリズムを確立し、フリードリヒと、アダルガーと共に、軍学校生活を過ごしていくことになる。

本日も、ご読了頂きありがとうございます。初めましての方は初めまして。チャデンシスと申します。大体週一〜週三ペースで投稿しています。


前作を読んでからの方が、より面白くなると思いますが、こちらを読んでから、前作を読んでいただけても、楽しめると思います。よろしくお願いします!

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