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6.とっても可愛い女の子 sideウィルハルト

 僕には母親が2人いる。僕を産んでくれた側妃であるお母様と、兄上と弟を産んだ王妃である義母上。母たちも王である父も大好きだし、兄上とラインとも仲良しだ。


 でも僕だけ……僕だけが太ってるんだ。同い年のラインと食事量は変わらないし、運動だって同じだけしてるのに。


 それに兄上とラインはカッコいい。だから義母上主催のお茶会でも、2人の周りにはいつもたくさんの令嬢、令息が集まっている。僕達3人の婚約者と側近を選ぶためのお茶会なのに、僕だけどっちも候補がいないんだ……。


 もうすぐ次のお茶会の日がやってくる……憂鬱だよ。


「そうそう、次のお茶会ですけど、(わたくし)の従姉弟の娘も招待しましたの」

「母上の従姉弟ってことは……メープル伯爵令嬢ですか?」

「えぇ。伯爵夫人に似てとっても可愛いんですって」


 朝食は家族6人揃ってとると決まっている。会ったことのない令嬢の話でみんな盛り上がっているけど、どうせその子も僕とは話してくれないって分かってる。



「殿下。そろそろお茶会の準備をさせていただきます」

「うん。お願い」


 とうとうこの日が来てしまった。お茶会、行きたくない……だって僕は毎回1人ぼっちだから。1人はいや。でも僕が話しかけても聞こえないふりをされちゃうんだもん。


 初めてのお茶会で失敗して……2回目の時には食べることにしか興味がないのでしょうって言われたし、影で残念王子って言ってるのも聞いちゃって知ってるんだ。


「はぁ……」

「行ってらっしゃいませ」


 お茶会が始まるまでは時間が早く進むのに、お茶会が始まったら遅くなるんだよ? 嫌になるよね。



 家族と合流し、重い足取りでお茶会が開催される庭園へと向かっていると、今日も楽しそうな声が聞こえてきた。


 兄上とラインは隣で友達と会えるのは嬉しいけど、毎回令嬢に囲まれるのが大変だって楽しそうに話している。それってとっても贅沢な悩みだって気付くべきだよ。


 お茶会の時だけ……ほんのちょっと2人が嫌いになっちゃう。


 いつも通り公爵家から順に挨拶され、とうとう次はみんなが気になっていたメープル伯爵家の番だ。


 ん? 件のご令嬢、挨拶後に自慢げにしているのはなんでだろう? それが気になり、しっかりと顔を見て気が付いてしまった。すごく可愛い……なんて僕に思われたって嬉しくないだろうけど。


「ウィルハルト。あそこのテーブルへ行ってらっしゃい」


 いつも通り1人でいると義母上に声を掛けられた。


「はい……」


 言われた場所には令嬢が1人で座っている。


 メープル伯爵令嬢だ。


 僕と話すために、みんなと離れて座るように言われてるのかな? 僕のせいで、ごめんね。



「んふふ~」

「ウィル、嬉しそうだね」


 お茶会後、兄上とラインがニコニコしながら僕のところへやってきた。


「うん! ク、クラウディアと……」

「「えっ!? 名前呼びしてるっ!」」

「えへへ。クラウディアとお茶会の約束をしたんだ」

「「お茶会!?」」


 2人共驚くなんて失礼だな。でも今、とっても機嫌がいいから全然気にならないけどねっ!


「すっごく、すっごく、すっごく……すっごくクラウディアが可愛かった」


 名前を呼びたくて、何回でもクラウディアって言っちゃう。


 スイーツを美味しそうに食べていたのも、王宮で用意したスイーツなのにマカロンがお勧めだって胸を張っていたのも、全部全部可愛かった。


 それになにより……僕と楽しそうに話してくれた、可愛い女の子。


「義母上。僕、初めてお茶会が楽しかったです」

「そう。良かったわね」


 はぁ……早くまたクラウディアに会いたいな。



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