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私の婚約者は6人目の攻略対象者でした  作者: みかん桜
本編

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49.待ち伏せ

「クラリッサ! ちょっとついてきなさい」

「お断りします。以前もお伝えしましたが、私はクラリッサという名ではありません」


 嘘はついてない。クラリッサって名乗ったことはあるけど、身分を隠している時に偽名を使うなんて貴族なら当たり前のことだし。


 後日会った際、まともな相手なら実はクラリッサは偽名で本名はクラウディアだと伝える。でもローズはねぇ? 未だに名乗ってこないし。


 今回なぜ彼女に接触されてしまったのか。それは馬車乗降場で待ち伏せされていたから。


「予定もありますし、失礼しますね」

「待ちなさいよっ!」


 よりにもよってサブリナとバーバラと出かけるって日にね。もしかしたらウィル様やノエルがいない日を、今か今かと待っていたのかもしれない。


 なんかずっと喚いてるけど、無視してさっさとカフェに行こ~っと。そう思い、馬車に乗るためステップに足をかけようとした、その時。


「黙りなさい!!」


 !?!?


 びっ、くりした~!


「サブリナ……あなた、そんな大きな声が出せたのね」

「……突っ込むところはそこじゃないと思いますよ、クラウディア様」

「そうかしら?」


 バーバラはそう言うけど、本当にびっくりしたんだもの。


 一応悪役令嬢であるサブリナのことはローズも知っていたようで『でたわね、悪役令嬢』なんて言っている。


「悪役令嬢? 変なこと言わないでくださいませ」

「ご、ごめんなさい。悪気はなくって……友人が、クラリッサが迷惑を掛けているんじゃないかって心配で。怒らないでください」


 ……は?


 いや、色々突っ込みどころ満載なんだけど。


「ぷっ」


 表情を変えずに怒るサブリナに、珍しく笑いを我慢できなかったバーバラ。誰に向けているのか謎の、か弱いアピール中のローズ。


 私達は馬車乗降場の混雑を避けるため、しばらく教室に残っていた。しかも思っていたより長く残ってしまい今ここには私達しかいないのに、ご苦労さまですこと。


 わぁお。ローズったら嘘の涙を流せるなんて女優みたいね。その演技力を活かしたいなら舞台役者になることをおすすめするわ。

 

「あ! あんたもいたのね」

「えぇ。お久しぶりです」


 そっか。バーバラは訓練場でよく絡まれたって言ってたものね。にしても伯爵令嬢のバーバラに『あんた』って……しかも泣き止んでるし。


「先に乗っていましょう」

「そうね」


 ローズがバーバラに気を取られている間に、サブリナに促されて馬車に乗り込む。そのうちに衛兵が駆けつけてくれて無事に学園から出ることが出来た。


「彼女、一体何がしたいのかしら?」


 きっと私に謝らせ、協力——手足として使いたいんだと思うよ。


「怒ってくれてありがとう、サブリナ」

「クラウディア様、できるだけお一人にならないでくださいね」

「バーバラも心配してくれてありがとう。気をつけるわ」


 絡まれないで済むならそれに越したことはないし。


「それより、誰も私がクラウディアって教えなかったのかしら?」

「教えられていると思います。ただ彼女、思い込みが激しいと言いますか……剣術の授業を選択しているのがおかしいと、私も何度も言われましたし」

「それはお疲れ様」

「はい」


 ここまで一切強制力が働いていないんだから、いい加減現実だって気がつけばいいのに。

 


 はぁぁ。また待ち伏せ。もう何回目よ……私がいることが分かってからというもの、共同場所で待ち伏せされるのよね。


 もちろん接触してくるのはウィル様やノエルがそばにいない時。でも今隣りにいるお兄様の方が2人より強いんだけどな。


「クラリッサ」

「何度も申していますが、私はクラリッサという名ではありません」

「隣りにいる方はどなた? 紹介してくださらない?」


 いやいや、まず私達が知り合いにすらなっていないんだけど。


「クラリッサ?」

「…………」

「もしかしてまだ怒ってる? この間はごめんなさい。そんなつもりはなかったの……お願い。もう許してほしい。私、あなたとずっと友達でいたいの」


 そんなつもりとは? ずっと友達とは? 私に許しを請うているはずなのに、目線がお兄様に向いているのはなぜ?


 でもさすがヒロイン。こんな可愛い子が謝っているのに、許さない私は悪者って状況を一気に作り上げてきたわ。でもねぇ、お兄様には効かないわよ?


 変な女に騙されてほしくなくって、女性とはどういう生き物か何年も前から口を酸っぱくして言い続けてきたもの。そうでなくてもあなたは入学式の日から要注意人物だし、無駄でしかないのに。


 ってことで私も悪役令嬢……ではなくヒロインを演じさせてもらおう。


 お兄様の制服を掴み、怖がっているようにお兄様の影に隠れてっと。


「お兄様ぁ……怖い」


 私は自由自在に涙を出すことは出来ないから、言うだけ言ったら顔をお兄様の胸で隠して、泣いているふりをする。


「お兄様に任せなさい」


 私の演技に乗っかり、頭を撫で守るように抱きしめてくれたけど、絶対帰ったら猫なで声が気持ち悪かったとか言われそう。


「え、兄妹?」

「だったらなんだ」

「まさかメープルシロ……伯爵令息?」


 2つほど怒っていいかな?


 まず、私達が兄妹だと知ってメープル伯爵って口から出てくるってことは、私がクラウディアだと知った上でクラリッサって呼んできてるってことよね? そして懲りずにメープルシロップって言い続けていたのねぇ。

 あっ、もう1つあったわ。私の方が身分が上だと知ってるのに、この態度だったのね。


「名乗りもしない者に、私が名乗るつもりはない」

「ごめんなさい。私、ローズ・フラワーって言います。ブライアン様、私のことはローズって呼んでくださいね」

「フラワー……男爵家か」

「はいっ」


 喜んでるとこ申し訳ないけど、お兄様が名前を聞いた理由ってローズが思っている理由じゃないよ。


「ではフラワー男爵家には正式に抗議文を送らせてもらう」

「えっ!?」


 ほぉらね。


「帰ろう、ディア」

「はい」


 一応顔を伏せたまま呆けているローズの元から去った。


「平民クラリッサをいいように使いたいんだと思っていました」

「騙していたことを理由に揺するつもりなのかもしれない」

「それは……痛くも痒くもないですね」


 むしろさっさと揺すってくれたら動けるんだけどなぁ。



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