2.異世界転生
「面接っ!」
……って、ここどこ?
確か歩道に乗り上げてきた車に轢かれて……ならここは……
「病、院……?」
には全く見えない。
広すぎる部屋に大きな窓。わぁ! 天蓋付きベッドじゃん。どう見たって私の部屋でもないし……マジでどこ?
それに全身に痛みが走ってもおかしくないにも関わらず、現状は少し頭が痛いくらい。触ってみるとたんこぶが出来ている程度。
あんな大事故、こんな軽症で済むなんてありえない。
ん? えっ! ちょっと待って! 私の髪、赤いんですけどっ! しかも手が小さい……。ペタペタと顔を触ってみると、肌もモチモチしているし。
「嘘でしょ……」
これってもしかしなくても異世界転生?
ってことは前世の私はあの事故で亡くなってしまったの? とんだ親不孝者ね。手を合わせて前世の両親に謝っておこう。
でも幸か不幸か、両親はもちろん友人も私自身の顔もボヤッとしていてはっきりしない。事実として淡々と受け入れられてる時点で『幸』なのかな。
「……ステータスオープン!」
なんちゃって。いや、一応言っておくべきかと思って。
何も出なかったけどね。
「お嬢様っ!」
そうやってふざけているとノックの音が聞こえ、メイドさんが入ってきた。メイド喫茶にいるような可愛らしいメイド服を着た……のではなく、貴族のお屋敷にいるような、シンプルな装いをした本物のメイドさんだ。
さっきの恥ずかしいセリフ、聞かれてないといいけど。
「お目覚めになられたのですねっ! すぐに旦那様たちを呼んできますっ」
私が起き上がっていることに驚き涙を流したたメイドさんは、持っていた水差しをベッド横のチェストに置いて駆け足で出て行っちゃった。
えぇっと……お嬢様って、私……?
*
あの後家族が集まり、医師の診断を受け、果実水とパン粥をしっかり完食して今日はもう休むことに。
一人になり徐々に頭の整理がつくと、異世界に転生したことに確信を持つことができた。一瞬頭に過った、この少女の体を乗っ取ってしまったんじゃないか、なんてことが杞憂に終わったのはよかった。
今世の私の名前はクラウディア・メープル。メープル伯爵家の長女で現在7歳。お父様とお母様、ブライアンお兄様の4人家族。
2日前に階段で足を滑らし気を失ったそう。その時頭を打ってしまったのをきっかけに前世を思い出す……テンプレ過ぎる。
ちなみにこの世界にも魔法はない。残念。
それにしても私が伯爵令嬢って。いずれ政略結婚ってやつをしてどっかの貴族夫人になるの? 私が? 就職活動をしなくていいのは嬉しい……でも私、別に恋愛を諦めてたってわけじゃないんだけど。
その辺はもう少し落ち着いたら考えることにしよう。それよりも早期に解決しなければいけないことがあるから。
「主食がパン」
なのよねぇ。パンも好きだけどお米の方が好き。炊き込みご飯とか大好きだし。
「はぁ……」
さっき食べたパン粥も美味しかったけど、本当は卵粥が食べたかった。もっと言うなら果実水より温かい緑茶が飲みたかった。
嫁ぎ先でどれだけ好きに動けるか分からない。だから伯爵令嬢のうちにお米もお茶も見つけなければ!
右手の拳を掲げ、心の中で『えいえいおー』と気合を入れた。
私は知っている。緑茶も烏龍茶も紅茶も、同じ茶葉で発酵度合いが違うだけだったはずだと。よって発酵前の茶葉さえ手に入ればなんとかなるのだ。発酵度合いは……手に入れてから考えよう。
そしてお米。よくあるのは家畜の餌として存在しているパターンよね。ってことで各地の特産品を知ることが重要……今までサボり気味だったお勉強、明日からはちゃんとしなきゃ。
余談だけど、髪だけじゃなく目も赤いのよ。髪も目もカラフルな世界なのに、魔法が使えないっていうのはやっぱり納得できない。




