19.今後の方針
ウィル様の王子宮に戻ってきた。
「強烈でしたね……」
予定外だったから余計にそう感じてしまったのかもしれないけど。
「おいで、ディア」
どっと疲れてしまったし、お言葉に甘えさせてもらおう。男爵令嬢から王子様に戻ったウィル様に抱きしめてもらい、ほっと息を吐く。
「落ち着く……」
「俺も」
「あっ、声に出してました……よね」
「ふっ。落ち着いてもらえて嬉しいよ」
そう言って頭も撫でてくださる。
「はい……///」
ウィル様の手、すっごく安心するのよね。
私もお返しにと手を伸ばし、ウィル様の頭を撫でる。これができるのは婚約者の特権なの。ふふ。嬉しそうにしているウィル様が可愛い。
笑い合いながら見つめ合っているとなんだか恥ずかしくなってきた。照れを誤魔化すために、ついグリグリっとウィル様の胸に頭を擦り付けてしまう。
「ディアが可愛すぎる!」
「///」
今後の方針を話し合うべきなのは分かっているけど、まだもう少しくっついていたい。
そんな私の思いが伝わったのか、ウィル様も離れたくないと思ってくれたのか……ウィル様は私を抱き上げソファーへと移動し、そのまま私を膝の上に乗せてソファーに座った。
「ウィル様っ!?」
「ん?」
すっごく嬉しいけど……周りに人が多い。
「お、おろしてください」
「無理かな」
うぅ……でもここにいるのはノエルや側近の皆様だけだし、それに先ほどまでの事を思い返したら……今更よね。
うん、大人しく膝の上にいよう。
侍女が淹れてくれた紅茶を一口いただいて……。
「美味しい」
これは、リラックス効果のある茶葉ね。
ふふふ~。周りを巻き込みここ数年で茶葉の種類も増えたのよ。もちろん緑茶も、不人気だけど手に入れたわ。
紅茶とウィル様の手によって睡魔に襲われそうになる。
「今後、彼女に接触するのはノエル1人で行うように」
「承知しました」
「えっ!?」
まどろんでいる間に方針が決まっちゃった。
「ディアはもうあいつに会っちゃダメだからね?」
あらま、あいつ呼びになっちゃってるよ。
「ウィル様も会わないですか?」
気をつけるべきなのは私よりウィル様だからね。
「会わないよ」
「なら私も会いません」
「約束ね」
「はい! ウィル様も約束ですよ」
昔私が教えた指切りをして……。
そもそも彼女に近づこうと思ったきっかけは、ウィル様が攻略対象者で狙われたりしたら嫌だから。
でもカフェでの様子を見るに仮にそうだとしても心配はなさそうだし、彼女とは友達にもなれないとあの数十分の時間で分かったしね。
あーあ、せっかく懐かしい話ができる唯一の相手だったのに。彼女と友達になりたいと思っていた私はもういない。
ローズ・フラワー。
決して悪い子ではないと思う。でもここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインであると信じ切ってしまった。そのせいで周りが見えなくなってしまったんじゃないかな。
本当は大きな事を仕出かす前に現実を見せるべきなのだろうけど、それは私の仕事じゃないし~。私は私の大事な人を守るために、行動させてもらうわね?
「ノエル。絵姿やら夢やら話に一貫性がないが、無視するんだ」
「はい。探し求めている『ノエル』が私ではない可能性が高いですが、疑わせず、思惑を探ります」
「頼んだぞ」
うーん、きっと探し求めてる『ノエル』だと思うよ? どうせ攻略対象者じゃないから性別は曖昧にしか覚えてなかったとか、その程度の理由でしょ。
フラワー男爵に学費の援助を申し出られても困るから、資金繰りがなんとかなり1年遅れで入学する予定。という設定にして、今日と同じカフェでのみ会うことにするそう。
次の約束は2週間後の週末。まずはそこでどれだけの情報を得られるか。
ノエル頑張って!




