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私の婚約者は6人目の攻略対象者でした  作者: みかん桜
本編

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20/68

18.ヒロインと遭遇

 気分は3人組の男爵令嬢。

 ドレスやストールで女性……? レベルに変装できたことに満足し、気になっていたカフェでウィル様の隣りに座り、話しながらメニューを眺めていたら……。


「ノエル!?」


 って後ろから声を掛けられたの。


 誰だろうと振り向いた先にいたのは、まさかのヒロイン。


「し、知り合い?」

「いえ。違います」


 だよね。今までそんな素振りなかったもんね。


「でも名前……」


 知り合いじゃないのに名前を知っているってことは、ノエルは攻略対象者?


 待って。


 ウィル様もノエルも、知り合いですら本人だと分からないほど、完璧な詐欺メイク。分かるはずがないわ。

 今だってノエルは不信感のこもった目をヒロインに向けているし。


「えぇっと……私が勝手に知ってるっていうか? でも驚いた。まさか女の子だとは思わなかったわ。そりゃあいくら探しても見つからないわよね」

「どこで私の名前を?」

「さっきこの子がノエルって呼んでいるのが聞こえて」


 そう私を指差すヒロイン。人に指を指しちゃいけませんって習わなかった? 確か前世でもダメだったはずよ。


「私あそこに座ってたの。注文まだよね? 私もここに座って良い? ていうか座るわね。私、ノエルと友達になりたいの。あっ、そっちの2人とも友達になってあげるから安心して」


 めっちゃ上からな発言。しかも許可してないのに勝手に座るし。


「私の名前はローズ・フラワー。ローズでいいわ。男爵令嬢だけど、気にせず普通に喋ってね」


 それ、こっちのセリフね。


「あっ、でもノエルって子爵家だっけ? 敬語の方が良い?」

「いえ……」

「そう? じゃあ普通に喋るね。そっちの2人は?」

「…………」

「もしかして平民? そのドレスはノエルに借りたの? ノエルの友達よね? もしかして使用人?」


 グイグイ来るわね。


「友達です」

「そういば名前は?」

「クラ、リッサ……クラリッサよ」


 あっぶなかった。ヒロインの勢いがすごすぎて、危うく本名を言いそうだった。


「あなたは?」

「彼女はポーラ。すごく人見知りなの」

「あっそ」


 私が答えた理由は、ウィル様の機嫌があまりよろしくないから。なんとなく、低い声が出そうな気がして。


 それよりポーラの名前を勝手に借りちゃってごめんなさい。とっさに思いつかなかったの。


「家名なしってことはやっぱり平民なんだ。私、身分とか気にしないタイプだから堅苦しくしないでね」

「……ご友人は放っておいていいの?」


 先程までこの人と一緒にいた人が、こちらのテーブルを見てはオロオロとしている。


 気分は男爵令嬢。要するに平民に見える装いじゃない。見た目通り下位貴族と思うか、上位貴族がそう見せていると思うか。彼は後者なのだろう。


「いいのいいの。間違いだったから」

「間違い?」

「あの人もノエルって名前だから勘違いしちゃって。王立学園で同級生の男爵令息よ。子爵じゃないし、全く役に立たないからおかしいって思ってたのよね」


 散々な言われよう……。


「役に立つとは?」

「クラリッサ。あなたさっきから質問ばっかりで失礼ね。私達初対面なのよ?」


 えっ、それあなたが言う? まず誰も平民だって言ってないよね?


 今はまだ驚きだけで済んでいるけど……苦手なタイプかもしれない。


「すいません」

「気をつけてね」


 私が言うのも変だけど、身分を気にしないタイプじゃなかったの?


「それで、なぜ私の名前を? 勝手に知ってるとは? 女の子だとは思わなかったとも言っていましたが、どういう意味でしょうか」


 そうね。この人マシンガントークだし、一気に聞いたほうが効率いいかも。


「名前は、クラリッサが呼んでたからって言ったでしょ」

「いえ。なぜ私がノエルだと知っていたのか、と聞いています」

「うーん。何ていうか……知ってたからよ。えっと……あなたの……そう、絵よ。絵を見たことがあって。それで知ってたの」


 言い訳が苦しすぎる。


「その絵が男の子みたいに描かれていたから、性別を勘違いしたの」

「絵、ですか」


 王族や公・侯爵ならまだしも、子爵子息・息女の絵が一般に売り出されるなんてあまりないわよ?


「でも実物と全然違うから驚いたわ」

「……そうでしたか」


 うん。ノエルもそういう反応になっちゃうよね。


「それでなぜノエルなのでしょう?」

「なんでクラリッサに言わなきゃいけないのよ」

「それは……ノエルが、気になってそうなので」


 瞬時にアイコンタクトを送る。伝わったようで頷いてくれたノエル。


「なら話すわ。夢よ。夢でノエルって名前の子が私を助けてくれるって教えられたの。だからどうしてもノエルに会いたくて」


 なるほど、考えたわね。


「なぜ彼女がそのノエルだと思ったのでしょうか?」

「あの人じゃなかったからよ」


 答えになってないのですが。


「同い年のノエルは全て確認済み。でも女の子はノーチェックだったわ」

「私、学園の生徒ではなくて……」

「違うの!? じゃああなたも違うわね」


 ノエル~!! って仕方ないか。そもそも学園生ではないって設定にしておこうって決めていたし。

 私は校内で接触するつもりだったけど、それは絶対に駄目だってウィル様が譲ってくれなくて。


 きっと年が同じノエルじゃなきゃだめな気がする。申し訳ないけど、この人の求めているノエルになりきってもらおう。


「本来はノエルも学園に通うはずでしたが事情があって……」


 事情がなにかは深く聞かないでね?


「あっ! 没落してるの忘れてた。学費は私のお父様が出すはずだったもんね」


 没落? 確かにノエルの実家である子爵家には借金があったけど……。


 ノエルの状況とこの人の発言から推測するに、ノエルはお助けキャラだと思うの。


 恐らくゲームでは、没落貴族となったノエルがフラワー男爵に拾われ、学園に通わせてもらうのでしょう。


 元々子爵令息だったこともゲームで語られていて、ずっとノエルを探していたのかも。それこそ1年半前に記憶が戻った時から。


 うん。間違ってないと思う。


 もちろん現実では、没落していないけどね。



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