1.プロローグ
「今後一層のご活躍をお祈り申し上げますって……」
祈らなくていいから採用しろっての。
もう何通目になるか分からない不採用通知のメールを眺め、悪態をついてしまう。
大学4年。周りで内定をもらっている人たちをちらほら見かけ、私は焦りを感じていた。
「はぁ……」
ため息を付きながら、せめてこれから向かう面接が終わってからメールを開けばよかったと後悔。もしもまた不採用で、このまま就職浪人になったらどうしよう。不安でしかないわ。
就活、病むわ~。
ほらね。まぁた信号に捕まるし。ここで運を使っていないと思うべきか、今日も運がないと思うべきか。
も~! 私の何がダメなのよ! と苛立ちを感じる中、突然声が聞こえてきた。
「聞いてっ!」
びっくりして振り返ると、2人組の女子高生がスマホ片手にキラキラと目を輝かせている。一瞬私に話しかけられたのかと思っちゃった。
元気だねぇ。隣に来た女子高生を横目に、おばあちゃんのような思考になってしまうのは仕方ないと思うの。きっと毎日が楽しいって感じなんだろうなぁ……羨ましい。
「なになに?」
「昨日やっと逆ハーエンドにたどり着いたよ!」
とスマホ画面を友人に見せている女子高生。
「うそっ! いいなぁ~。じゃあ今日から隠しキャラの攻略始めるの?」
なるほど。逆ハーレムエンドを迎えたら隠されたキャラを攻略できる、乙女ゲームの話ってところね。スマホでできるアプリか。私もやろうかなぁ……いや、手早くスカッとしたいしネットのざまぁ小説にしよう。
「もちろん! もう今日のバイトは休んじゃおっかなぁ」
どれだけ攻略を進めたいとしても、バイトにはちゃんと行こうね? なんて信号待ちの間中、女子高生2人組の話に耳を傾けながら軽く現実逃避していた私は、明らかにおかしな動きをしている車が近づいていることに気が付かなかった。
それに気付いた瞬間には痛みが走り、多くの人の悲鳴が耳に届き……段々と私の意識は遠のいていき……
あぁ……面接に遅れますって連絡しなきゃ……。