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16.さすがお兄様!

 不安に思っていた私はどこへやら、寝て起きたら考えが変わりました。


 十分な睡眠のおかげで蓄積していた疲労が回復し、冷静になれたっていう方が正しいかな。ほら、ネガティブ思考って脳疲労が原因だって言うし。


 学生生活は前世で経験済みだけど、この体にとっては初めてのことで気付かないうちに疲れちゃってたみたい。


 ぐぅ~。


 ポーラに手伝ってもらいながら着替えていたら、お腹がなってしまった。


「……聞こえた?」

「昨日は夕食もとらずにお休みになられましたから」

「聞こえたのね」


 髪も整えてから足早に朝食に向かうと、お兄様が既にいらっしゃった。


「おはようございます」 

「おはよう。体調はもういいのか?」

「はい!」


 お腹すいた~。


 あっ! 今日はオムレツがあるのね!


 元々、別の食材を入れる発想がなかったオムレツ。それに私は野菜をたっぷり入れて作ってもらっているの。ちなみにお兄様はチーズをたっぷりと。

 ウィル様のダイエットのためにお願い! って料理長に頼んだのよね。


 本当、頼んで良かったわ。朝から幸せ~!


「ウィルハルト殿下から聞いた」


 ん? オムレツの話? じゃ……ないわね。お兄様、神妙な面持ちだから。


「温室でのことですか?」

「そうだ」


 クリスハルト殿下の側近であるお兄様もフラワーさんの情報を共有している。これは……昨日の言動で確実に要注意度が上がってるわね。


 そうだわ! 先に私の計画をお兄様に話し、味方にしておきましょう。


「お兄様、私———」


「王子妃というのは守られているだけではいけないからな。私は賛成する。ただ、必ずウィルハルト殿下の許可を取るように」

「はい。昼食時に話そうと思っていますので、援護射撃お願いしますね? お兄様」

「……俺を巻き込むな」

「イヤでーす」

「ディア」


 ため息を吐いているけど、なんやかんや言いつつ協力してくれるって分かってるもんねー。



 そして昼休み。


 私のお願いを聞いてくれたウィル様の提案で、王族用のサロンで私達は昼食をとっている。メンバーは王子3人とそれぞれの婚約者、侍従を含めた側近の皆様。


 多い……。


 でもフラワーさんのことが落ち着くまでは仕方ない。それに学園在学中の騎士希望者が、順に護衛業務に当たることにしたみたいなのよ。いい予行練習になると騎士団長も大賛成してるんだって。


 お昼ご飯、いつ食べているんだろう……? 護衛後? 今度差し入れしようかな。


「ディア、今朝言っていた提案って?」

「あっ、はい。私、フラワー男爵令嬢と友達になろうと思います」


 みんな『えっ!』とか『は?』とか、面白いほどに驚いている。


「もちろん彼女の人となりを確認してからです。友人に値しない場合、友人のフリをして情報だけ手に入れようと思っています」

「だめだっ!!」


 うん。ウィル様は反対すると思ってたよ。


「最初から素性を明かすつもりはありません」

「だめだ」

「でも彼女の目的を探るべきです」

「ディアがする必要はない」


 温室で見聞きしたことから、不明点が残るが私の推測が正しいのでは? と昨日話し合ったことをお兄様から聞いている。

 これ以上の情報を手に入れるには、彼女に近づくのが手っ取り早い。だからきっと女性の影を潜入させる話もあがったと思う。


 でも正直……更生の余地ありなら、本当に友達になりたいと思っちゃったのよね。さすがに言えないけど。


「俺が探る」

「それはだめです!」

「なぜ?」

「危険だからです」


 さすがヒロイン、見た目は可愛かったもの。何があるか分からないしウィル様を近づけたくない。


「ディア自身も危険だと認識している相手に、なぜ近づこうとするんだ」

「それは……」


 私が一番適任だからです。


「発言しても?」

「ブライアンか。構わない」

「ウィルハルト殿下。女装をする覚悟はありますか?」


 はっ? お兄様!?


「どういう意味だ」

「殿下は妹1人を危険にしたくない。そして妹は殿下を……恐らくその男爵令嬢に取られたくないのでしょう」

「お、お兄様っ!!」

「なんだ。違うのか?」


 違わないけどさっ。それを今言う!? 援護射撃ていうより私が攻撃されてる気分なんだけど!


「そうなのか?」


 ほらぁ。案の定、嬉しそうなウィル様が膝の上に乗せてくるじゃん。人が多いところでは恥ずかしいって何度も言ってるのに。


「ブライアン、続けろ」


 クリスハルト殿下も無視せず、弟を注意してほしいんですが。


「はい。ウィルハルト殿下の顔立ちは側妃様に似ておられます。また成長途中の殿下の身長も、高身長の女性だとごまかせる範囲でしょう。ですので妹と2人で近づくのはどうでしょうか。ご存知の通り妹は頑固ですので」

「なるほどな」

「兄上!?」


 さすがお兄様! その手があったか! もうっ、今朝教えてくれたら良かったのに。


「ではまずは2人に任せよう。ノエルも頼んだぞ」

「はい。お任せください」


 実際に奇怪な行動を目にしたラインハルト殿下やサブリナ達は心配そうにしている。大丈夫よ。私、誰のことも悪役令嬢になんかしないから。


「はぁ……。殿下、くれぐれもディアが暴走しないようお願いします」

「分かっている」


 お兄様もウィル様も失礼ね! 気にしないけど。


「ウィル様、お揃いのドレスを仕立てましょうね?」

「はいはい」


 がっつりメイクして、ウィル様を完璧な令嬢にしよう。ウィッグと眼鏡を手に入れて……。


「もし目の色に疑問をもたれたら、遠い国出身でその国では一般的な色だということにしましょう」

「……ディアが楽しそうでなによりだよ」



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