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14.刺客かヒロインか

 学園に入って初めての休日の今日、私は第二王子殿下の王子宮に来ている。


 王族が15歳になると与えられる自分の王宮。ウィル様は与えられてすぐ移動され、王子宮内に私の部屋も用意してくださったの。

 ふふっ。ここの庭は色とりどりのユリの花が咲いているし、ガセボも邸内もユリで飾るほど。だから心の中では勝手にユリ御殿って呼んでるの。


 でも今日は生憎の雨。遅れないよう早めに家を出た私は、サロンでウィル様を待っていた。ユリのガセボは次回の楽しみにとっておこう。


「ディア。お待たせ」


 サロンに入ってきたウィル様が、向かいのソファーではなく当たり前のように隣に来てくれるのが嬉しい。だから……数秒見つめ合ってしまうのは許してほしいのよね。


「調査結果を伝えるね」

「お願いします」


 さすが王家が動いただけあって、情報収集が早いわ。


「例の女生徒の名前はローズ・フラワー。男爵家の嫡子で、両親と年の離れた妹の4人家族。面倒見が良く領民からも優しいと評判の令嬢だった」


 えっ、嫡子? 庶子じゃなくて? 下位とはいえ生まれた時からの貴族令嬢が、あんな風に転ける!? 常識がなさすぎるわ。


 ん? 令嬢だった……?


「1年半ほど前のある日、急に言動がおかしくなったそうだよ」


 なるほど。そのタイミングで前世を思い出したパターンね。


「理解不能な言葉の中でも『すまほ』という言葉をよく言っていたと」


 スマホ……分かる。私もスマホ欲しいもん。


「兄上とラインとは『すまほ』というのは彼女の中で辞書と同意味なのだろうと結論付けたよ。『攻略法』『ぎゃくは』『かくしから』これらを『すまほ』とやらで確認したいとよく言っていたようだからね」


 スマホで『攻略方法』を確認し『逆ハー』を成功させ『隠しキャラ』に会いたいってところかな。


 やっぱり乙女ゲームだったかぁ……。


 しかも名前が薔薇に花って……薔薇にも花にも恨みはないのに、名前からして脳内お花畑なヒロイン感が漂ってくるのが物凄く嫌なんですけど。


「ディア? 大丈夫?」

「はい……」

「不安は全部俺が取り除くし、何があっても守るから」


 決定的なワードを聞き、動揺を隠せなかった私を安心させるよう、腰を引き寄せて頭を撫でてくださるウィル様。


「私も、ウィル様のこと守りますから///」


 たったこれだけでヒロインの存在を忘れそうになる私って現金なやつよね。


 ちなみに入学式の日に転けた理由は、本人曰く遅刻しないためにと走っていたら足がもつれたからだそう。衛兵による身体検査も問題なく、他に怪しい様子もなかったため厳重注意のみで済んだ。


「それにフラワー男爵家にも後ろ暗いものはなく、彼女は刺客ではないと判断した。命が狙われたわけじゃないから、安心して」

「はい。刺客でなくて良かったです」


 ごめんなさい、嘘です。刺客の方が早期解決に至ったと思ってます。


 そんな私の考えが、消えない不安が伝わってしまったのか、ウィル様は私を膝の上に乗せて抱きしめてくれた。


「言動を顧みるに、要注意人物であることに変わりないけどね」


 男爵領で事業を始めるのに上位貴族との繋がりがほしいのでは? そのきっかけの作り方が人とズレているだけでは? と他2人の殿下方と話し合ったそう。


「ディアはどう考える?」


 繋がりは繋がりでも……


「その、フラワーさんは上位貴族の令息と婚約したいのではないかと……」

「え? でも婚約者のいない上位貴族って中々いないよ?」


 むしろ婚約者のいる令息狙いだと思います。悪役令嬢が必要だろうから。


 どうやって伝えようか……。


「もしかして……婚約者がいる場合は略奪し、婚約すると?」

「恐らくですが」

「それに引っかかるバカいる!?」


 普通はいないよね。苦笑いしか出来ないわ。


「まぁそれは置いておくとして……多少の違いはあれどディアも同じ意見だし、彼女の真の狙いが分かるまで、上位貴族棟の警備を厳重にしておこうか」

「そうしてほしいです」


 学園に通う下位貴族や商人が、上位貴族と縁を結びたいと思うこと自体は悪いことじゃない。でもそのやり方って大事だよね。


 正直、他のご令息達はどうでもいい。ただ私は攻略対象者かもしれないウィル様を、ヒロインにも誰にも取られたくないから。



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