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13.乙女ゲーム!?②

「いったーい」


 ウィル様にトキメイて、一瞬忘れていたわ。


 それにしても『バターン』って効果音が聞こえてきそうな見事な転け方で……痛くないの? あっ、いったーいって痛くなさそうな声で言ってたわね。


 この方、ただ鈍臭いだけ……?


 いいえ油断はダメよ、クラウディア。そういう作戦かもしれないわ。害のない女生徒のフリをして、手中に仕込んだ毒針で立ち上がるために手を貸した相手を刺す、その可能性がないとは言い切れないもの。


 やっぱり刺客……?


 異変に気付きこちらに来た衛兵に彼女のことを任せ、私達は講堂へと足を進めた。私の腰に手を回し、歩きながらも私の頭に何度もキスをするウィル様。……器用ね。


「ディア、大丈夫?」

「はい。ウィル様が守ってくださったので。彼女は……」


 刺客でしょうか? とウィル様を見上げ、アイコンタクトで確認してみる。


「どうだろうね。注意しておこう。ディアは極力関わらないように」

「ウィル様もお気をつけくださいね」


 入学早々物騒すぎでしょ。



 世界が違っても偉い人って話が長いのねぇ。もう何度欠伸を押し殺したことか。こっちは寝不足なのよ。


 何か眠気を覚ます方法は……そういえばさっきの人の髪、ピンク色って私初めてみたかも。


 髪色も目の色もカラフルな世界。ピンクベージュやピンクブラウンといった色を持っている人はいるけど、あそこまでキレイなピンク色なのは珍しい。彼女、目の色もピンクだったりしてね。


 あははっ! それってヒロインみたいじゃん。


 前世で人気だった異世界を舞台にした物語。小説も漫画もゲームも、異世界ものが流行りに流行り……私も本格的に就活を始める前はよく手にしていた。


 そのどれであっても、ヒロインの設定ってピンクの髪色だったのよねぇ。


 入学式の日に学園で迷って攻略対象者に助けられたり、攻略対象者とぶつかって転けてしまったところを手を貸してもらったり。っていうのが定番の出会いイベ……ント、で…………えっ!?


 ここって乙女ゲームの世界なの!?


「嘘でしょ……」

「どうかされまして?」

「い、いえ……気になさらないで」


 私の異変に気付き、声を掛けてくれたのは隣に座っているサブリナ。彼女は侯爵令嬢で、今までに色々とあって感情を隠すのがうますぎるのよね。人を寄せ付けないオーラとその無表情さは、彼女をよく知る人ですら感情が読めないほどのもの。


 しかも安定の縦ロール。


 わぁ……悪役令嬢っぽい。


 いや待て待て。メインヒーローは大概王子。ってことは王子の婚約者3人のうち誰か、もしくは全員が悪役令嬢なのでは? それって私も悪役令嬢じゃん!


 えっ、嫌なんだけど。


 もちろん誰かをいじめるなんてことしないけど、冤罪を掛けられたり……? 無理無理! もう、なぜ今まで乙女ゲームとか小説の世界かもって考えなかったのよ!


 ……って、普通考えるわけないじゃない! 私は決して物語の登場人物なんかじゃなく、ここで生まれ育ち、生きているんだから。


 仮に何かしらの物語の世界に似ていたとしても、ここは現実。ヒロインもそれを理解している人ならいいけど……望みは薄そうよね。



 第一王子殿下の婚約者は公爵令嬢で……もちろん縦ロール。彼女はサブリナより表情筋が仕事をしているけど、2学年上で私がフォローするのは難しい。

 彼女にも刺客かもしれないヒロインの事を話し、どちらにせよしっかり自衛するよう伝えなければ。


 いや、とりあえず縦ロールをやめさせようか?



 学園は上位貴族の棟、下位貴族と平民の棟、と教室が分かれている。ヒロインが定番の下位貴族の令嬢なら対策しやすいけど、稀にある上位貴族ヒロインのパターンだと面倒ね。


 食堂は共同施設だから……せめて彼女の正体がはっきりするまでの間、昼食は王族と王族が許可した者のみが利用できるサロンを使用できないか、ウィル様に相談してみよう。


 はぁ……私、入学前は寮生活にも少し憧れていたのよね。でも寮はタウンハウスを持たない生徒の為のものだから、もちろん私の入寮希望は通らなかった。今は全寮制じゃなくて良かったと心底思うわ。


 数分前まで刺客じゃなければいいなんて思っていたのに、刺客であったほうが対応が楽だったような気がしてならない。


 悩み事がさっさと片付いて、学生生活を楽しめますように。



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