はじめのルート
フチュは一日ですっかりクラスの人気者になった。
家に帰ると彼は「いやー、学校って楽しいな!」とご満悦の様子でかばんを放り、「アイスを所望する!」とキッチンに駆けていった。
フチュに振り回されてすっかり疲れてしまった千歳は、二階にあがって自室のベッドに倒れこんだ。
「だいたいのカップリング案は固まった」
フチュはカップアイスとスプーンを持って部屋に入ってくるなり言った。
千歳は「そう」と興味なさそうに答えた。
眠くて仕方なかった。ウトウトがそっと降りてきて、千歳の表面に膜を張っていた。
「腐力を溜める最も効率的な攻略ルート。栄えある一人目は、伊集院肇だ」
「え!」
ウトウトの膜を引き裂いて、千歳はガバッと起き上がった。
「い、伊集院くん……?」
伊集院の射るような目が、記憶の中から千歳を見つめる。
思わず身震いする。
「見たところ、伊集院は無自覚流され攻めタイプだな。千歳、男性ホルモンを母胎に置き忘れて生まれてきたお前なら、ノンケの伊集院だってその気になる。誘惑して神妙に待て!」
「無理だよ、伊集院くんは僕のことを嫌っているんだ」
「嫌っている? なぜだ?」
「それは、分からないけど」
「実際に嫌いって言われたのか?」
「それは、言われてはないけど……。でも、いつも睨んでくるし、男らしくないとか、女々しいとか、嫌味を言ってくるんだ」
「なんともまあ時代に似つかわしくないジェンダーバイアスゴリゴリな輩のようだな。だがそこがいい」
スプーンでアイスをすくって口に運ぶと、フチュは邪悪にニヤけた。バニラの甘さで頬が緩んだわけではなさそうだ。
「そういう生意気な輩を屈服させるのはいいものだ。実にいい。千歳、お前の魅力で存分に分からせてやれ」
「無責任だなあ」
千歳はそう呆れるが、BL鑑賞を楽しみたいだけの地球外生命体に、そもそも責任なんてものがあるわけないのだ。