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おかえり日常

鬼塚に変身したフチュと二人で、千歳は自宅の最寄り駅前のハンバーガーショップに入った。


「ねえ、フチュ」


「うん?」


「ごめんね、ひどいこと言って」


「なんの話だ?」


「大嫌いだって、言っちゃったことだよ」


「ああ、べつにいい。あれが本当は大好きという意味だということは分かりきっていたからな」


「いやそれはさすがにない。ちょっとは反省してよね」


二人はけらけら笑い合った。


「……今日ってさ、クリスマスイブなんだよね」


千歳はフライドポテトをつまみながら、思い出したように言った。そして、もしかしたら、と思った。


二木は、クリスマスイブを千歳と過ごしたかったのかもしれない。そうすることで、何かを達成、というよりは征服、できる気がしたのかもしれない。根拠はないけど、そう思った。


「そう。聖夜だ。慎一郎がどうしているか知っているか?」


「温泉旅館に行ってるはず。懸賞でペア宿泊券が当たったんだってさ。一人で行くって言ってたけど、どうなんだろう」


「一人だ。見て来たから間違いない」


「見て来た?」


「UFOでひとっ飛びの距離だ」


「そうなんだ」


「UFOでひとっ飛びの距離だ」


鬼塚に変身したフチュは、RPGの村人みたいに同じセリフを繰り返した。


「うん、それが?」


「もう時間的に電車では行けないが、UFOなら行ける。そう私は言っている」


意図を察して、千歳は俯いた。


「……分かってる。慎一郎と仲直りするべきだし、したいと思ってる。でも、また今度でも……」


「千歳。クリスマスイブは年に一度しかやってこない。そして、同じクリスマスイブは一生に二度はやってこない」


「……」


「決めるのはお前だ」


千歳はしばらく考え込んで、決心した。


いや、実を言えば、最初から答えは決まっていたのだ。二木に痛めつけられたとき、心に慎一郎の顔が浮かんできたという事実によって、もはや自分に対する言い訳は力を失っていたのだ。


「連れて行って。慎一郎のところへ」


「よしきた産業!」


鬼塚に変身したフチュは拳をてのひらにぽんと打ちつけ、席を立った。

ゴミをゴミ箱に捨てて、トレイを置き場に重ねると、二人はハンバーガーショップを出た。


すでに夜は深夜に傾きつつあり、明かりの灯っていない家もチラホラあった。


二人はいったん家に帰った。


フチュは変身を解いて元の美男子に戻り、燕尾服に着替えた。それからダイニングへ行った。


ダイニングテーブルに、歩が突っ伏して眠っていた。缶ビールの空き缶が五つ転がっている。フチュが消えてから、彼女は有りもしない責任をかかえ込んでしまい、すっかり酒量が増えていた。


「歩さん」


フチュが優しく肩を揺すると、歩は「幻聴が聞こえる」とむにゃむにゃ言いながら、ゆっくり顔を上げた。そして固まった。


「げ、幻覚まで見える」


「幻覚ではありません。私です。リアルフチュです」


「ふ、フチュくん!」


歩は椅子に腰かけたまま、フチュに抱き着いた。


「ご心配をおかけして申し訳ありません」


「もう、二度と勝手にいなくならないでね……」


「はい」


「困ったことがあったらなんでも言ってね」


「ありがとうございます」

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