断章 千歳くんと二次元
「フチュはさ、二次元キャラには興味ないの?」
自宅のベッドに寝転がってスマホをいじりながら、千歳は尋ねた。
夏休みはもうすぐで終わってしまうけど、今日は家から一歩も出ずにダラダラする所存だ。何もしないことでしか得られない栄養素がある。
フチュは引き戸を開けたままクローゼットの中で、どら焼きを食べながらマンガを読んでいる。
「私のUFOは倉庫としても優秀でな」
「うん」
「BL本がたんまり仕舞ってある」
「つまり二次元にも興味があるんだね、フチュは」
「ああ。お前も同じだろう?」
「そりゃあ、マンガやアニメは、人並みには好きだよ」
「人並み、ねえ……。で、えっちなBL本はどこに隠している?」
「ぼ、僕はそういう本は持ってないよ」
「はいダウトー!」
フチュは片手で口元を押さえて目を三日月にし、もう片方の手で学習机を指さす。
「学習机の一番下の大きい引き出し。そこ、鍵がかかっているよな? 開けてくれよ」
「え……。あ、いや、それが、そこの鍵、失くしちゃってさ」
「一番上の引き出しの天井にセロテープで貼り付けてあるだろう?」
「なっ……! 知ってるなら隠れてこっそり開ければよかったじゃないか! 性格悪いなあ!」
「分かっていないな。こうやってお前の羞恥心を煽って、自らカミングアウトさせるのが快感なのだ」
「ほんと性格悪すぎ!」
「お前に罵倒されるのゾクゾクするよ」
「変態!」
「お前女王様の素質あるよ」
フチュは顔を紅潮させ、自分の体を抱くような格好で身震いしている。
千歳はため息をつき、もういいやと思った。一番下の引き出しの鍵を開けて、中身を公開した。
「これでいい? はいはいそうですよ、どうせえっちなBL本隠し持ってますよ僕は!」
「おお、これは……」
積まれたBL本を手に取って、表紙を順に眺め、フチュは言葉を失った。
「なにドン引きしてるんだよ!」
「いや、ちょっと想像を超えていたものでな……。さっき私に変態と言ったな? その言葉、そっくりそのままお返ししよう」
「あー!」
千歳は枕に顔をうずめて足をバタバタした。




