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真実はいつも一つか二つ

通り雨だったので、すぐに空は晴れた。ちょっとコンビニ行ってたって感じで星々はシレっと帰宅して輝いていた。


千歳と伊集院と忍足は三人でテントへと引き返していた。

伊集院は、何歩も前を足早で歩いている。恥ずかしさのあまり、千歳とまともに顔を合わせられないのだろう。


「千歳」


隣を歩く忍足が言った。


千歳……?

忍足は、千歳のことをいつも「早乙女くん」と呼んでいたはずだけど……。それに、なんだか口調が傲慢だ。


千歳は怪訝そうに忍足を見た。

彼はニタニタと邪悪な笑みを浮かべていた。見覚えのある、というか見慣れた笑みだった。


「もしかして、フチュ……?」


「僕はこう思うよ。そのとおりだよ、と」


「忍足くんに変身してるの? どうして?」


「話すと長くなる。具体的に言うと、テントに到着するまでくらい」


「ジャストフィットじゃん。話してよ」


フチュはいきさつを語り始めた。


「いきなり運悪くたまたま偶然腹を壊した私は、涙を呑んで肝試しを辞退した。そしてトイレでフルバーストしてスッキリしたわけだが」


「ふーん」


「で、暇になってしまったもので、どうしようか考えた」


暇なら戻ってきて肝試しに合流すればよかったじゃん、なんて野暮なことを千歳は言わない。


「だから私は、UFOを遠隔操作して、量子テレポートでここらに移動させたのだ」


「あれ? フチュのUFOって壊れてるんじゃ?」


「壊れているのはワープ機能だけで、量子テレポート装置は生きている。ああ、あとドリンクバーとマッサージ機能もイカレちまった」


「……? よく分からないんだけど、その量子テレポートで母星に帰れるんじゃ?」


「千歳。宇宙で一番速いものが何か知っているか?」


「乙女の恋心?」


「急にロマンチストになるな。たしかに乙女の恋心の変化は驚くほど早いが、そうじゃない。宇宙で一番速いのは、光だ」


「ああ、うん」


「私は別の銀河の星から来た。光の速さで移動しても軽く三百万年かかる距離にある。寿命がないに等しい私も、さすがに三百万年もUFOに乗っているわけにはいかない。定期的に新鮮なBLを摂取しないと腐力が目減りして、やがて体は滅びてしまうからな。あと単純にしんどいし」


「でもワープならすぐ移動できちゃうんだ? ワープってテレポートと何が違うの?」


「千歳もマリオカートやったことあるだろう? あれのショートカットがワープのイメージだ。加速するのではなく、飛び越えてしまうのだ」


なるほど分からん。


とはいえ、いつまでもSFトークしているわけにもいかないので、千歳は続きを促した。


「私は森の中にUFOを呼んで、その中で暇を潰していた。でも私としたことがうっかりしていて、機体をエレクトリカルモードにしてしまっていた」


字面から、機体をぴかぴか光らせるモードだと察することができる。


「なんでそんなモード搭載してるの?」


「パレードに使うのさ」


考えることは地球人も宇宙人もさほど変わらないらしい。電飾を輝かせた無数のUFOが宇宙空間を漂う様はきっと壮観だろう。


「そんなわけで、UFOが忍足に見つかってしまったのだ」


そのあとは、七瀬が語ったように、忍足は謎の光、つまりエレクトリカルモードのUFOに近づいていってしまった。フチュは接近アラートで飛び上がり、慌ててモニターを見た。そして忍足に気づき、天を仰いだ。さすがにUFOを一般人に見られるのは面倒だった。


「とりあえずUFOをステルスモードにして透明にして、しんどいけどUFOを出て忍足を襲って、ハンドパワーで直近の記憶を消した。でも記憶を消された者は副作用でしばらく眠ってしまう。だからその間はUFOの中で眠ってもらおうと考えた」


七瀬が目撃したという、忍足を担ぐ謎の人物の正体は、フチュだったのだ。

そしてUFOはステルスモードだから、忍足を担いだフチュがUFOに入ると、彼らも透明化する。よって、七瀬の目には、すっと二人が突然消えたように映ったのだ。


「忍足が急に消えたら怪しまれるから、私があいつに変身して入れ替わって誤魔化そうと考えた。服までは変身できないから、脱がせて奪った」


そうして、忍足に変身したフチュはテントに戻ろうとした。

が、不覚にも迷ってしまい、そうこうしているうちに廃屋にたどり着いた。窓から覗いてみると、千歳と伊集院がいちゃついている。フチュは心を全裸待機モードにし、はぁはぁと息を荒くして成り行きを見守った。しかし伊集院に気づかれてしまった。

というわけだ。


「ほんとまずった! あともう少しで、千歳の流され受けを生鑑賞できたのに!」


「忍足くんの姿と声でエグいこと言うのやめて……」


千歳たちがテントに戻ると、他のメンツはそろっていた。

みんなで忍足の帰還を喜び合った。忍足(フチュ)は何を聞かれても「何も覚えてなくて……」で切り抜けた。


夕飯のバーベキューの最中、時を見計らって忍足(フチュ)は「トイレ行ってくる」と嘘をついて、UFOに忍足(本物)を回収に向かった。


フチュと忍足は二人で戻ってきた。


慎一郎がフチュに「腹はもう大丈夫なのか?」と尋ねた。


「爽快だ。いやあ、肝試しに参加できなくて実に残念だ!」


フチュはいけしゃあしゃあと、そう答えた。

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