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修羅の荒野~悪夢の入学式、再び  作者: 成瀬ケン
第一章 成り上がりの覚悟
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裏切りの代償



 ミート・スナワチ。商店街の通りに並ぶオーク学園の生徒達に人気のある肉屋だ。




 美味いしボリュームもあり値段も安い。

 特に一個五十円のメンチカツは生徒にもバカ売れだ。値段のわりに大きくてかなり美味い。だから揚げたてが店頭に並べばあっという間に完売してしまう。


 育ち盛りで、貧乏一直線の学生には、有り難すぎる存在だった。



 しかしここで疑問が生じる、何故ここのメンチカツはこんなに安いのか?

 一個五十円では赤字になるのでは? 味の秘訣はどこにあるのか?


 とはいえ考えても仕方ない、だったら値段相応ならば納得するのか。

 いや、そうではないだろう、誰もが安さに満足してるのだ。結局のところ、安いのに理由付けなどいらないから。






 陽も暮れようとしていた。


 昼間はあれだけ暖かかったのに、この時間になると少しばかり肌寒く感じてくる。

 誰もが身体を丸めて、足早に通学路を下校していた。



 スナワチの裏手には、小さな公園がある。


 公園といっても形ばかりのもの。ベンチが数個あって、水飲み場と公衆トイレがあるぐらいの簡素な場所だ。

 多くの学生はそこでメンチカツを食して、立ち去るのが通例となっていた。


 故に普段ならば、興味を持って、そこに立ち止まることなどなかった。



 しかしその日だけは違った。


 多くの学生が、怪訝そうにその場に留まっていた。



「なんだよウチの一年生だよな」「それにしても酷いよな。食欲もなくなるぜ」「酷い異臭」「しかしここに書いてあるのって、マジなのかよ」誰もがそれに釘付けになり、本来の食べる目的さえ忘れている。




「おめーら、邪魔だ」

 その空間に、数人の生徒達が雪崩れ込んできた。


 その先頭を仕切るのは的場。まだ入学式でのダメージが残っているらしく、額には包帯が巻かれている。

 そしてその右手にはメンチカツが握られている、この男もスナワチのファンだ。



「これは……」

 そして眼前に広がる光景を見て絶句した。




『ウチのメンチカツは、トサツ処分した豚を百パーセント使用しています。キロあたり十円。ウンコの臭いが隠し味です』




 その制服に貼られた、書きなぐられた文章には、その場の誰もが吐き気を覚えるのに充分だった。


 ……俺達はこんな肉を食らっていたのか。想像したくはないが、どうしても脳裏に浮かんでしまう。



 もちろんそれは誰かが流したデマに過ぎない。いわゆる怪文書、ただの悪質な悪ふざけ。




「どうしたんだ、大クソモラシ!」

 それでも的場、ぐっと真顔になって問い質す。


 しかし返ってくる返事はない。



 トイレの壁面には、巨大な生徒が張り付けにされていた。

 両腕を縄で縛られて、傍らの樹木に吊し上げられていた。


 異様なのはその有り様だ。察するに、何者かと激しい死闘を演じていたのだろうが、着込むブレザー型の制服は血と埃と泥でグチャグチャだ。

 完全に意識を失って、項垂れている、ポタリポタリと滴る血が、地面をどす黒く染め抜く。



 名は体を表すというが、例に漏れずウンコを漏らしている。




 大具足虫忠太(おおぐそくむし ちゅうた)だった。

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