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修羅の荒野~悪夢の入学式、再び  作者: 成瀬ケン
第一章 成り上がりの覚悟
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夢幻の如くなり



 こうしてオーク学園に入学した一年生ルーキー達。

 それぞれの宿命により、幾多の抗争に明け暮れることになる。



 更にはそれに感化されて、元々校内にあったグループも動き出す。


 オーク学園にはヤンキーをも凌ぐ危険なグループがあった。

 ファン倶楽部、という名の最強マニアグループだ。


 その筆頭会長は、宅ちゃん。永き冬眠を得ての、久々の参戦である。



 これにより、オーク学園は再び混沌の時代に突入していく。



 もちろんそれらは多くの生徒の、想像の域にあった。時代とはいつ、いかなる時でも動き続けるもの。


 人が生きている限り、それは当然のこと。動かない水が、腐ってしまうのと同じ理屈だ。所詮この世は弱肉強食、弱きが淘汰されるのは当たり前だから。



 一抹の不安があるとすれば、それが活発化することだ。

 名を馳せる猛者が動き出して、それが幾つも紡ぎあい、無秩序に入り乱れると、更なる最悪を招く恐れはある。



 そしてその不安は、現実に的中することとなる。




 最初に倶楽部の狂気にあてられたのは、新参者である一年生、猫屋ブラザーズ率いる猫屋会だった。


 彼らはその日遅く、忘れ物を取りに一族郎党を率いて校舎に戻ってくる。


 激しい強風が辺りを支配していた。桜の花びらも、それで殆ど吹き飛ばされていた。


 グラウンドに足を踏み入れた時、"それは"既に始まっていた。ファン倶楽部の決起集会だ。

 そこに居並ぶのは数百人程の住人達。筆頭会長宅ちゃんを始め、鬼の副長土方歳三(偽名)、仕方なく参加した猿飛と、その親友などそうそうたる面々。その他にも、ある世界では有名な、マニアばかりが名を連ねている。


 まるで百鬼夜行、パンドラの箱でも、開けたような状態だった。



 それが猫屋会の恐怖を、強烈に刺激した。


 しかも恐れ(おのの)いて立ち去る途中で、運悪く、とある派閥と遭遇してしまう。


 それは大具足虫忠太の派閥。酷くテンパって、それに喧嘩を売ってしまったのだ。



 普段の大具足虫ならば、猫屋会など簡単に返り討ち出来た筈だ。


 だが彼らは、飼い主たる大友のかっちゃんの命令で、敵対する派閥を討伐した帰り際だった。ダメージも蓄積していたし、なにより極度に腹ペコだった。


 故に両者の戦いは、『ニャーニャー』『黙るのだ、おらは腹ペコだ』『フギャー!』『そこは止めてよ』と、大方の予想を狂わせて激しいものとなる。



 それでも大具足虫の強さは、比類なきものだった。


 アバラを数本折られ、左肩を脱臼して、配下を数人病院送りにされて、山盛りのウンコを漏らし、それでも辛勝した。



 勝つには勝った。だがそれで良かったのだろうか?


 彼らの学年には、まだ多くの敵が存在している。チームルシファーズシード、金髪と赤べこのゴールデンコンビ、そして仲間とはいえ自分を利用している大友のかっちゃん。


 自分達がこんな状態では、誰かに飲み込まれ、深い闇に沈んでいく恐れさえあった。



 そして彼は、そこで悪魔の囁きを訊いたのだ。


『ニャッたら上級生に、一年生のてっぺんとしての地位を、認めて貰えばいいじゃニャーか』地面にひれ伏す、猫屋兄の不用意な一言だ。


 それで事態は、思わぬ方向に動き出す。



 大具足虫が頼ったのは、学園の支配者を気取る永瀬。


 それは永瀬としても思わぬ拾い物だった。

 調子に乗って『我、貴貨(きか)を得たり。これより天下布武を開始しようではないか』そんな台詞を言ったとか、言わなかったとか。




 こうして裏取引を行った両者は、大具足虫の回復と共に、行動を開始する。


 ルシファーズシード派閥と大友のかっちゃん派閥が、小競り合いを仕掛けている戦場に、どてっぱらから強襲を仕掛けたのだ。



 思わぬ展開に、両派閥は大混乱に陥る。


 結果彼らは、多くの戦力を崩されて、えなく敗走する。



 時代はまさに群雄割拠する戦国乱世、誰かが台頭すれば別の誰かが滅んでいく。


 ただの雑魚だと安易に考えていれば、そこから歪みが生じる。


 二度と負けまいとする、敗残者の覚悟こそが、この世を動かす原動力だから。




 こうして永瀬は、名実ともに学園の支配者としての地位を不動のものとする。


 バラバラに崩壊した一年生を、次々と粛清して、その傘下に治めていく。




 それ故に、一年生達がこの戦線からリタイアするのも、時間の問題だと思われた。







思へばこの世は常の住み家にあらず


草葉に置く白露、水に宿る月よりなほあやし


金谷に花を詠じ、榮花は先立つて無常の風に誘はるる


南楼の月を弄ぶ輩も、月に先立つて有為の雲にかくれり



人間五十年、化天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり


一度生を享け、滅せぬもののあるべきか


これを菩提の種と思ひ定めざらんは、口惜しかりき次第ぞ


(参考文献、幸若舞 敦盛)






 人の一生など、天上の神々からすれば、一瞬の夢の出来事に過ぎない。


 どうせ一瞬なら、激しく生きるも人生。


 誰にでも一様に、滅びの時は来るのだから。



 全てはこの世の摂理。激しくもはかない、人生の縮図がそこにはある。

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