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翼人族と特産品

「まったく。どうしてこう次から次へと問題が……」


 翌朝、ペドロ一家の夜逃げを村長に報告した。昨日の会話で村長の家から金貨を盗んだのは間違いないからね。

 ただそれは大した問題じゃない。俺が売買で得た金貨があるからね。今はガルスさんが管理しているよ。


「ペドロたちなら昨日の夜中に来たぜ? 俺が出迎えてやったらビビって逃げちまったがな」


 そう、ペドロたちは最低なことに俺の金貨も盗もうとしたらしい。それに気付いたガルスさんが追い払っくれたと。

 でもってガルスさん、俺が抜け出したこともしっかり把握してはりましたよ。見逃したのは「男には冒険心も必要だ」という理由からだとか。まぁ危険を通じて学べってことらしい。有り難い配慮です、はい。


「金貨の事はいい。問題は……」


 村長が家の外で走り回っている2人の女の子へと視線を移す。1人はアリサ、説明は不要だろう。だがもう1人は()()()()()()()()()()()のである。

 昨日のうちに自己紹介は済ませたんだけど、その時にサラって名前である事が判明している。


「ありゃ翼人族だな。エルフみたいに人里離れた場所でひっそりと暮らしている事が多いらしい」


 酒場の店主ビリーさんが興味深げに眺めながら(つぶや)く。元が冒険者だけに色んな種族を見てきたらしい。


「するってぇと何か、誰かが翼人族の里から誘拐してきたと?」

「さぁ? そこまでは分からんがマキトの話を聞く限りだと、ガーディアンベアが横取りしたのは事実なんだろ」


 う~ん、ガーディアンベアの群を壊滅させた以上、手掛かりを獲るのは難しい。せめてリーダーだけでも生け捕りにすべきだったか? まぁ今さらだけど。


「見て見てサラちゃん――」ビョーーーン!

「キャフ♪ アリサちゃん凄いです~!」


 アリサとサラはもう馴染んでいた。やっぱ歳が近いと打ち解けやすいんだろう。

 うん、それなら直接聞くのがいいかも。


「なぁサラ、ちょっと聞きたいんだけど」

「キャフ♪ スリーサイズは教えませんよ~」

「いや、そうじゃなくて……」

「冗談です~」


 いや冗談かい。しかもスリーサイズを伏せるとか、すんげ~増せてますやん。


「……コホン。あの~、サラって何処に住んでたの?」

「天空のお城です~」

「そうなんだ。その天空の城ってのは――」


 へ? 天空の城? 何かのゲームに出てきたような?(←それ以上はいけない)


「キャフ♪ 冗談です~」

「――っておい!」


 これってはぐらかされてるのか? 教えたくないから必死に誤魔化してる感じか。

 ――と思ったのだが……


「サラちゃん、あたしには教えてくれたじゃない。北の麓にあるオルフェノ帝国とファティマ王国の間に広がる樹海だって」


 なんだよ、普通に教えてるじゃないか。実はからかわれてただけ?


「も~ぅ、バラしたらダメですよアリサちゃん。気になる異性にはこうやって気を引くのが一番なんです~」

「気になるって……またからかってるの?」

「キャフ♪ どうでしょ~う」

「ええ……」

「ああ! マキトはアリサのなんだからサラは手を出しちゃダメーーーッ!」


 そしてサラとアリサによる追い駆けっこが始まると。

 しかしサラ、天使のような見た目で中身は小悪魔とか、騙される男は続出しそうだ。


「こりゃビリー! お前さん、こんなところで油を売っとんたんかぃ。酒場をサボってはいか~ん!」


 治療院のコリンズ先生もやって来た。取り敢えず突っ込どくけど、先生も治療院をサボってますよね?


「わりぃな先生。今はほれ……あの娘について話してんのさ」

「んん? ほほぉ、翼人族とは珍しい。新しい入居者かね?」

「違いますよ。俺とアリサが魔物に捕まっていた彼女を救出したんです。きっと両親も心配してるでしょうし、早く里に帰してあげなきゃと――」

「!!」ピタッ!


 里に帰すという話をした途端、無邪気に遊んでいたサラがピタリと動きを止めた。


「どうしたのサラ?」

「サラは帰りたくないです。あんな里、滅んでしまえばいいんです」

「いやいや、サラの故郷だろ? それを滅んでもいいなんて……」

「あんな故郷なら無い方がマシです。アイツら、お金に困ったからってサラを売り飛ばしたんです」

「「「売り飛ばした!?」」」


 まさかと思った。エルフ同様、翼人族も閉鎖的で種族としての絆が強いって聞いてたからな。

 ところがサラの話によると近年では環境が変化してきた影響からか、外部との交易がなければ生活が出来ない状況に陥っていたらしい。

 そこで折よく接触してきた奴隷商に売り付けられたんだとか。翼人族の奴隷は珍しくて高値が付くとかどうとかで。

 つ~か酷い話だ。それなら故郷を恨むのも仕方がない。


「そういうわけで、これからもサラをよろしくです~♪」

「うん、よろしく~!」


 サラに笑顔が戻り、アリサと2人で走り去って行く。昨日もアリサの家に泊まったし、そのまま同居する流れになりそうだ。


「それにしても同族を売り飛ばす……か。今までは考えもしなかったが、やはり有り得ることなのか?」


 ガルスさんが渋い顔で村長に尋ねる。


「無い――とは言い切れんな。今のラバ村には余裕が有るが、数年先がどうなっとるかは分からん。せめて特産品でもあれば違ってくるのだろうが」


 特産品かぁ。――よし、サラのような不幸な子が現れないようにするため、ラバ村ならではの特産品を産み出そう!


「村長、石を加工したアクセサリーを売るのはどうですか? 全部俺が作ってみせますよ!」

「う~む……。しかしマキトよ、それはお主が五体満足で存在する事が絶対条件だろう? お前さんが村を離れたり、また怪我や病気で倒れたりすれば直ぐに破綻するぞぃ」

「あ……」


 そこまでは考えてなかった。特産品にするなら俺が居なくてもやっていける環境が必要になるんだ。



 ミシ……ミシミシ……



「おい村長、柱が悲鳴をあげてやがる。そろそろ建て替え時なんじゃねぇか?」

「むぉ? 確かに築30年は放ったらかしだったかもしれん。すまんがガルスよ、修繕を頼むぞぃ」

「俺かよ! ったく、こんなボロ屋じゃ何日掛かるか分かったもんじゃねぇ。どうせなら初っ端から補強済みの石材でもありゃ楽なのによぉ……」



 んん?



 建物……老朽化……修繕……補強……



 補強には石材、石材を作るには――



 ピーーーン!



「それだぁぁぁぁぁぁ!」

「「「!?」」」


 そうだよ、石材を加工するんじゃなく、加工する装置を作ればいいんだ!


「アリサとサラ、ちょっと手伝って!」

「うわぁ? ――って、ちょっとぉ!」

「あ~れ~~~♪」


 2人の手を強引に掴んで石切場に走り、目的の物を回収すると素早く村へと戻った。


「ん~しょ、ん~しょ……。は~い、運び終わったよマキト~」

「ありがとう2人とも」

「……で、こんなに石を運んできて何をするつもり?」


 アリサに聞かれてわざとらしい咳払いを1つ、それから自信満々に答えた。


「よく聞いてくれた。今から作るのは石材を加工する装置さ」


 この世界にはダイヤモンドカッターは存在しない。だったらそれに代わるものを作ればいいと思ったんだ。

 使うのは毎度お馴染みの漆黒石。これで作れば壊れる心配はないからね。それと切れ味を完璧なものにすべく疾風石もブレンド。


「いでよ――漆黒の刃!」



 シュイーーーーーーン!



「できたぁぁぁ!」


 激しい光が収まると、そこには縦横3メートル、高さ1メートル程ある漆黒色の台座が鎮座していた。


「何ですかこれ~?」

「ストーンカッターだよ。この台の上に石を置いて、形をキレイに整えるんだ」

「キレイに~? ではお願いします~!」



 ちょこん!



「いや、整えるのは石であって、人は無理だからね?」

「ぶ~ぶ~」

「頬膨らませても無理。そもそもサラは最初から綺麗じゃないか」

「そうですか~? ありがとう御座います~」

「…………」



 ちょこん!



 何故か上機嫌なサラを退かしたら、今度はアリサが不満げな顔で台座の上に。


「どうしたアリサ?」

「あたしまだキレイって言われてない。言ってくれるまで退かないから」


 いや、そこでサラに対抗するのかよ……。


「……アリサも充分綺麗だって。だから整える必要なし! ……これでいい?」

「うん、オッケ~!」


 何とか2人を退かせてテキトーな石を台座に乗せる。そして手を掲げて魔力を消費すれば……



 シュイン!



 角耐石(かどたいせき):耐石が四角に整った状態の石。貴族や王族が住む建物に使われることが多い。耐久性はかなり強力。


 名前:マキト

 HP:40/40

 MP:86/87


 そしてこのコストパフォーマンス。村人全員で回すようにすれば大量生産が可能ってわけだ。


「おお? これはまた見事な石材が出来上がったのぅ!」

「ああ。まるでドワーフが手を加えたかのようだ」


 村長とガルスさんが感心しながら手に取ると、コリンズ先生が無言で凝視し始めた。ビリーさんだけはよく分かってない感じだったけど、時おり発する先生の「こりゃ凄い!」という台詞で理解し始めたようだ。


「このマジックアイテムはMP消費がたったの1です。これを使えば石材を量産できますよ」

「う~~~む、これなら量産体勢が直ぐにでも整うだろうのぅ。うむ、よくやったぞマキト。お主には感謝してもしきれんわぃ!」


 これでラバ村は安泰だ。石切場として使われていたのが功を奏したな。


「しかしマキトよ、なぜそこまでして村のために尽くそうとする? 借りにラバ村が廃村になったところで、お主が気に病む必要もないはず」

「それは……」


 一応の理由はある。いずれ俺は世界を回る旅に出たいと思っているんだ。でも帰る場所が有るのと無いのとでは全然違ってくる。


「俺はよそ者ですけど、ラバ村は故郷だと思ってます。なのに旅から戻ったら故郷が無くなってるなんて寂しいじゃないですか」

「そうか。そう言ってもらえるのは有り難いのぅ。もちろんお主の故郷だぞ? いつでも戻ってくるがいい」

「はい!」

「――ってマキト、それだと今すぐ旅に出るみたいな言い方じゃない!? そんなの許さないからね!」

「いや落ち着けアリサ、今じゃないから!」


 だけど遠くない未来にって感じかな。まだ見ぬ石が俺を呼んでいる! ――ってね。

 それに……


 マーキスト・オルフェノ・アルナーダ


 俺の本当の名前が分かったんだ。これについてもキチンと調べないとね。


「よし、やることは決まった!」

「あら~? マキトくんってばヤル気に満ちてます~?」

「うん。せっかく量産の目処が立ったんだ、今から村長の家を豪邸にしちゃうぞ~!」

「それは楽しそうです~♪」

「何それ、あたしもやる~!」



★★★★★



 それから数日。気合いを過剰に込めて造った村長の豪邸は、「1人で管理するの大変じゃし……」という村長本人の弱気な発言により、持ち主不在の謎豪邸へと成り果てた。

 言われてみればそうなんよな。管理維持まで気が回らなかった俺の落ち度だ。

 でもせっかく造ったんだからって理由で、気まぐれな貴族が別荘として買い取ってくれないかな~なんて希望的展開を待ち望んでいたある日、帰宅予定をすっかり過ぎ、存在そのものを忘れ去られようとしていたヤースさんが間一髪の帰宅を果たした。

 但し……


「おお、ようやく戻ったかヤースよ。して後ろの者たちはいったい……」

「え、ええまぁ、いろいろと有りまして……」


 村長の疑問に困った顔で答えるヤースさん。後ろに見えるのはどう考えても冒険者に有らず、明らかに騎士団や国軍だよなぁといった連中だった。

 その中の1つの集団からリーダーらしき男が前に出ると、別の集団からもリーダーっぽい若い女が対抗するように横へ並ぶ。


「おい、トランゾーナの女狐が邪魔をするな! この村はオルフェノ帝国が統治するのだ、部外者はさっさと出て行け!」

「それはこっちの台詞だ、野蛮人のオルフェノが! この村は我らトランゾーナ公国が貰い受ける!」


 面倒なイベントキタ~(←棒読み)


国の紹介まとめ


オルフェノ帝国:ラバ村の南西にある港街パドラを含め、北と北東に向けて楕円形に広がっている国。ラバ村とは地理的に一番近い。主人公マキトの出生に関わっている可能性が高い国でもある。


トランゾーナ公国:オルフェノ帝国を南西から北にかけて覆うように位置している大国。元はファティマ王国であったが内乱の末に分裂して出来上がった。そのためファティマ王国との関係が悪く、度々紛争が起こっている。


ファティマ王国:トランゾーナ公国とオルフェノ帝国の東側に大きく陣取っている大国。国が大きく成りすぎたために統制が効かなく、国王の命令を無視して好き勝手をする貴族で溢れている。そんな彼らも分裂して出来上がったトランゾーナ公国は共通の敵であるらしく、トランゾーナが相手とあらば目の色を変えるという。


ラドム王国:ファティマ王国の南西部で申し訳程度に存在することが許されている国。ファティマ王国に対して典型的なイェスマンであるが、当のファティマ王国ですらどこか不気味さを感じる国であるらしい。



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