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武器防具の錬成

「近いうちに大規模な山狩りを行おうと思うてな、すまぬがマキト、冒険者に依頼する資金を提供してはくれぬか?」


 渋い顔の村長が――あ、元から渋かったっけ? まぁいいや。そんな顔した村長が俺に対して頭を下げてくる。


「いや、提供するのは構わないんですけど、山狩りというとやはり……」

「うむ。コマンダーウルフ以外にも魔石を取り込んだ魔物がいないとも限らん。村の安全のためにも山狩りは必要だと判断した」


 以前戦ったコマンダーウルフが人語を喋れた理由は魔石と見て間違いない。ああいった魔物が増えると村の存続に大きく関わるし、危険な芽は早めに摘み取るのが鉄則だとガルスさんも言っていた。実際その通りだと俺も思う。


「依頼ってことは麓の港町ですよね? 行きだけで3日は掛かるっていう」

「そうなるな。この村にも冒険者ギルドがあれば遠出せんでもよかったろうに。何かの間違いで建ってくれんかのぅ」


 それは無理がある。過疎地だと需要が少ないし、有ったとしても農作業や老人たちの介護になる。これだと冒険者ギルドの名を騙った老人ホームになるし、夢物語だなぁ。


「そもそも冒険者ギルドの前にどこかの国に属するべきですよね」


 今さらだけど、ラバ村はどの国のものでもない。遠い昔は超大国のファティマ王国に属していたらしいけど、今じゃすっかり見放されて放置プレイときた。こんな過疎地に手をつける理由がないからだろう。


「しかしな、こんな過疎地を欲しがる国もあるまいて」

「いや、そうとは限らんぜ?」

「あ、ガルスさん」


 畑仕事から戻ったガルスさんが会話に交ざってきた。


「この前来た商人、確かオルフェノ帝国の商人だったか? アイツの口からマキトの事が上に伝わるはずだ。いずれは使者がやって来て傘下に加わるよう言われるはずだぜ? 加われば改めてオルフェノ帝国のラバ村に昇格ってわけだ」


 人伝の話もバカにはできないと考えれば確かにそうかも。オルフェノ帝国は小規模ではあるけど他国からの侵略を防いで存続している。周囲に対抗するため俺の能力を欲しがる可能性は高いか。


「しかしそうなると他の国も黙ってはおるまい? オルフェノ帝国は規模としては小さい。超大国ファティマ王国と、それに対抗するトランゾーナ公国、それからファティマの属国と噂されているラドム王国も手を伸ばしてくるやも」


 さて、混乱を防ぐためにも少しだけ大陸図を紹介しよう。

 ここラバ村から南西に下った場所には港街パドラがあり、そこから北の方に楕円形(だえんけい)に広がっているのがオルフェノ帝国だ。パドラもオルフェノ帝国に属している。

 ラバ村を北上して山越えをすると、麓から東にかけてだだっ広い領土を持つのがファティマ王国。そしてオルフェノ帝国の更に北から南西にかけてトランゾーナ公国が広がっている感じだ。つまりオルフェノ帝国の北側では、ファティマとトランゾーナが争っているわけだな。

 そしてファティマの南端でおまけ程度にくっついているのがラドム王国。ラバ村から見て南東に位置する形だ。


「属するってんならオルフェノ帝国かトランゾーナ公国だな。ファティマ王国は何かと黒い噂が絶えないし、その属国のラドム王国は論外だ」

「まぁ待てガルスよ。まだ属すると決めたわけでは――」

「だが早い方がいいぜ? ここが戦場にならんとも限らんし、侵略されてからじゃ遅いからな。ま、俺の意見としちゃファティマとラドムは反対ってこった」

「あい分かった、その2つの国には気を付けるとしよう。だがまずは村の安全が先だ。山狩りを最優先とする」



 どこかの傘下に入る話は一旦棚上げし、山狩りのため冒険者ギルドに依頼することに決まった。ヤースさんが港街パドラへ依頼しに出掛けたわけだが……



「ねぇマキト、マキトの魔法で魔物をやっつけられないの?」

「そりゃ出来なくはないけど」

「じゃあさ、あたしたちで山狩りしちゃおうよ、そうすれば安全になるんでしょ?」


 ――というアリサの意見。その方がお金も掛からないのは間違いない。だけど……


「俺たちだけじゃ無理だよ」

「どうして? マキトはA級モンスターを倒せるんでしょ? だったら――」

「条件によるさ」


 コマンダーウルフの時は1対1。それもあらかじめ準備を整えてた上での結果だ。

 言うなれば山狩はこちらから相手の巣の中に飛び込むようなもの。相手の数も分からない完全にアウェイってわけ。


「多勢に無勢で囲まれちゃ身を護ることすらできないし、冒険者に頼むのは妥当なところだよ」

「う~ん…………あ、だった武器と防具を最初に整えちゃえば良くない? マキトなら作れるでしょ?」

「その質問ならイェスになるけど……」



~~~~~



 クッ……俺の中で天使と悪魔が戦いを始めてしまった。


悪魔「アリサの言う通りだぜ? 今の俺なら完全武装で乗り込めるじゃん!」


天使「無茶をしてはいけません。前世でも自分の不注意で命を落としたのを忘れたのですか?」


悪魔「ハハッ、意地張るなって。本心では冒険したいと思ってんだろ? 男のロマンだもんなぁ!」


天使「悪魔の(ささや)きに耳を傾けてはなりません。奴はああやって危険な道に誘導しようとするのです。安全第一ですよ」


悪魔「うっせ~ぞ天使野郎。テメェみてぇなクソつまんねぇ野郎はすっこんでろ、このイ○ポ野郎が!」


天使「あ"? 誰がイ○ポ野郎だゴルァ! 仮○茎が調子に乗るなよ!」


悪魔「はぁ? テキトーぶっこいてんじゃね~ぞテメェ! そこまで言うなら見せてやろうじゃねぇか、俺の晴れ姿をよぉ!」


天使「おうおう、こっちも晒してやんよ、かつて呼ばれた紅天狗(べにてんぐ)の2つ名は伊達じゃないぜ!」


悪魔「じゃあ行くぜ?」


天使「おぅよ」


悪魔&天使「「いっせ~の~せ――」」


石神「やかましぃわぃ、このハレンチどもめがぁぁぁ!」


悪魔&天使「「うひぃ!?」」



~~~~~



「……八ッ!?」

「どうしたのマキト?」

「いや、脳内会議してたら神様に怒られた気がした」

「?」


 正常な時でも出てくるのかよ、この石神様……(←脳内は正常ではなかった説)。


「……コホン。まぁあれだ、山狩り云々は別として、装備を整えるのは賛成だ」


 ってことで装備品の錬成に着手することになった。実のところ例の商人から不要な武具を買い取ったんだ。金貨1枚でそれなりの数が手に入ったよ。

 ついでだからステータスも見てみよう。


 名前:マキト

 HP:40/40

 MP:84/84

 金貨:91


 例のブローチを売った時に金貨100枚を入手して、金貨3枚で必要雑貨を買い、金貨1枚で不要武具をまとめ買い、5枚をヤースさんに渡した状態が今ってわけ。

 ちなみにMPもかなり増えてきた。アイテム錬成は基本的に1ポイントだから、今なら84回連続で可能だ。

 さぁて、買い取った武具を部屋に並べて錬成開始と行こう。


「まずは何を作るの?」

「武器かな。剣が無難なところだけど」

「あたしは小手がいい!」


 アリサは素手の方が強そうだもんな。普通にグーパンで突っ込まれると痛いし。


「じゃあまずは剣を――」

「小手! 小手小手、絶対小手!」


「まずは剣をね――」

「コ~テ、コ~テ、コ~テ!」


「だから剣を――」

「小手ったら小手! こてこてコテコテ小手小手!」


「だぁ~~~もぅ! 分かったよ、最初に作るよ、作りますよ!」

「さっすがマキト!」


 アリサにせがまれ、やむ無く小手を優先する羽目に。買い取った武器の中に小手も含まれてたのは幸いだ。


「今回使うのは魔石の欠片だ。あのコマンダーウルフから検出されたやつね。これに耐久性抜群の漆黒石と炎属性を高める怒竜石を混ぜて――――よし、完成!」


 燃え盛る漆黒竜の小手:竜の硬い鱗や物理耐性の強いゴーレムをも破壊する威力を叩き出せる小手。炎属性による追加ダメージも入るため、炎に耐性のない敵なら更に効果的。滅多なことでは壊れない。

 魔石効果:アリサ・ノーレン専用。他の者が装備しても効果は発揮しない。

 HP及びMPが一定時間ごとに自動回復。


 これはまた凄いものが出来てしまった。しかも悪用されないように願ったらアリサ専用の装備品になったし。魔石ってスゲェ!


「わ~~~ぁ、すっごく強そうな小手! さっそく使ってみるね!」ブンブン!

「――って危ね!? 小手を持って振り回すんじゃない! というか喜ぶのはまだ早いぞ? それはまだ片手だからね。今からもう片方も作らないと」


 今度は怒竜石の代わりに涼石を使おう。そうすることで氷属性の効果を高めるよう仕上げるんだ。


 凍てつく漆黒氷像の小手:竜の硬い鱗や物理耐性の強いゴーレムをも破壊する威力を叩き出せる小手。氷属性による追加ダメージも入るため、氷に耐性のない敵なら更に効果的。滅多なことでは壊れない。

 魔石効果:アリサ・ノーレン専用武器。他の者が装備しても効果は発揮しない。

 HP及びMPが一定時間ごとに自動回復。

 

「こっちもキレ~イ! これを両手に装備すればいいんだよね?」

「そ。でも無くすなよ? アリサが装備しないと意味ないからな」

「うん、大切に使うよ。ありがとマキト!」


 さぁて、アリサが落ち着いたところで俺の剣だ。やっぱ武器と言ったら剣だからね。冒険者なら剣を使いこなしてこそだろう。


「マキトはどの石を使うの? 怒竜石? それとも涼石?」

「それなんだけどさ、ちょうど新しい石を見つけたから試してみようと思う」


 疾風石(しっぷうせき):長年に渡り強い風に当てられてきた石。自然の風により削られてきたため全体的に丸みを帯びている。耐久性はそこそこ。


「この疾風石と漆黒石、そして魔石の3つを鉄の剣と共に――錬成!」


 疾風の漆黒剣:竜の硬い鱗や物理耐性の強いゴーレムをも破壊する威力を叩き出せる剣。風属性の追加ダメージも入り、更に剣撃のスピードも増す。一定範囲に竜巻を発生させるスキルも発動可能で、まさに至れり尽くせりな剣。滅多なことでは壊れない。

 魔石効果:マーキスト・オルフェノ・アルナーダ専用武器。他の者が装備しても効果は発揮しない。

 HP及びMPが一定時間ごとに自動回復。


「わぁ、マキトの剣もカッコいいね! しかも凄く強そう!」

「うん、我ながら最高傑作だと思うよ」


 けどとてつもなく気になる情報も出てきたぞ。


「マーキスト・オルフェノ・アルナーダ」

「え、何?」

「い、いや、何でもない!」


 平静を装ったけど、俺自身は酷く動揺していた。マーキスト・オルフェノ・アルナーダとは間違いなく俺の名前だ。

 それだけならいいが、間に含まれるオルフェノという名。これはオルフェノ帝国を指すのだろうか?

 だとしたら俺はオルフェノ帝国の人間ってことに? ダメだ、ますます分からない。


「武器はできたね。次は防具を作りましょ」

「…………」

「マキト?」

「ん? あ、ああ、そうだね。防具も作らなきゃね」


 名前の事は一旦保留だ。感情が乱れると失敗の原因になる。


「じゃあ次はレザーアーマーを――」



 それから1時間が経過した。

 俺とアリサの前には豪華な装備品がずらりと並んでいて、アリサは目を輝かせて小手に頬擦りをしていた。

 気持ちは分かるがアリサ、まずはキチンと防具の紹介をさせてくれ。


 レザーアーマー改:耐石を融合させることで耐久性と防御力が格段に上がっており、竜の爪や牙にも堪えることができる。また蛇石の融合により他にはないオリジナルのデザインとなっている。


 疾風レザーブーツ改:耐石を融合させることで耐久性と防御力が格段に上がっており、ゴーレムに踏まれても潰れたりはしない。加えて疾風石との融合により足の速さが劇的に向上している。また蛇石の融合により他にはないオリジナルのデザインとなっている。


 以上を2点ずつ錬成してみた。我ながら天才的な出来映えだと思ってる。

 ちなみに漆黒石を使わなかったのは蛇石との相性が悪くアリサの好きなデザインに出来なかったためだ。性能よりも見た目、さすがは女の子と言った感じだよ。まぁ分かるけども。


「これで装備はバッチリね。さっそく山狩りに出掛けましょ」

「いや、堂々とは出来ないよ? バレたらしばらくは外出禁止を言い付けられるだろうし」

「なら夜中にコッソリ抜け出しましょ」

「ええぇぇぇ……」

「な~に、嫌なの~? マキトが来ないならあたし1人で行っちゃうからね」

「いや、それは……」


 結局俺も付き合うことになった。

 あ~あ、今からバレた時の言い訳でも考えておくか……。


 石の紹介まとめ


豚石とんせき:石と石との隙間が非常に狭くて質量が多く、やや重さが有る。熱すればゴムのように柔らかくなる。耐久性は弱い。


 凛石りんせき:黒めで硬めの石。磨けば艶つやも出て高級感が増す。耐久性はそこそこ。


 灯石とうせき:ほのかに光る白い石。光源となるマジックアイテムに加工させることが多い。磨けば明るさも増す。耐久性は弱い。


 缶缶石かんかんせき:叩けば高めの音が出る石。打楽器に使用される事もあり、冷やせば高い音が、熱すれば低い音が出る。磨き上げることで更に大きな音を出すことも可能。耐久性は中の下。


 蛇石だせき:蛇のようにうねった模様が特徴の石で、色や形は冷やしたり熱したりすることで変化する。耐久性は様々。


 怒竜石どりゅうせき:発熱効果があり、暖を取るためのマジックアイテムに加工される事もある。熱することで発熱効果も上がる。耐久性はそこそこ。


 雨石うせき:周辺に湿気を放つ石。保湿のマジックアイテムに加工されることもあり、雨乞いの儀式に用いられたりもする。耐久性は激弱。


 涼石りょうせき:見ているだけで涼しくなりそうな青白い石。周囲を冷やすためのジックアイテムに加工されることもあり、冷やせば氷のように冷たくなる。耐久性はそこそこ。


 漆黒石しっこくせき:ひたすら真っ黒な石で、軽めだがとにかく硬い。故に加工するのも一苦労で、よほど腕の良いドワーフか魔法士でなければ加工出来ない。耐久性は抜群。


 耐石たいせき:見た目は普通の石ながらも頑丈。加工が難しいため、王族貴族が大枚はたいて魔法士に依頼して加工させるのが一般的。耐久性も良い。


疾風石しっぷうせき:長年に渡り強い風に当てられてきた石。自然の風により削られてきたため全体的に丸みを帯びている。耐久性はそこそこ。

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