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神再び!

『はぁ……。それで魔法を教える約束をさせられたと。アホじゃなお主』

『う……反省してます』


 あの後アリサには教える方法を模索してみると伝え、その日の夜に夢の中で石神様(←勝手に命名)と再会した。ご覧の通り呆れられたけどね。


『そもそも全ての生命体が魔法を使えるわけではないのだ。お主は前世で石に関わることが多かったが故に、石属性に目覚めたというわけだ』

『でもこの力は石神様が授けてくれたやつじゃ……』

()()()()()と言ったであろう? 持てる才能をどこまで引き出せるかは本人の努力次第。それを省いて覚醒させたのだ。従ってアリサの才能の有無は分からんし、有ったとしても引き出すことは出来ん。こうしてお主と会話が出来るのもお主の才能なのだ』


 そうかぁ。これだと教えるのは無理そうだなぁ。できるのは最大MPを上昇させる鍛練だけか。しゃ~ないし、それで誤魔化しとこう。


『ところで石神様、話し方が前よりもマイルドになってない? 以前なら何というかこう……渋いお爺さん……みたいな声だったのが、女の子の声に聴こえるような……』

『それはお主の脳裏でアリサという小娘を強く意識しておるからだ。本来神とは実態を持たぬ存在。捉え方次第で変わってしまうものなのだ』


 それで幼女っぽい声に聴こえるのか。何だか年下に説教されてるみたいでムカついてくるなぁ。


『おいコラ、親切に教えてやったら幼女っぽいだのムカつくだの、神を何だと思っておる。本来であればこうして会話することすら叶わぬ相手ぞ? ん?』


 なんかイキり出して可愛いな。


『可愛い言うな! まったく……』


 ブツブツ言いながら念話が途切れてしまった。何だかんだと話は聞いてくれるんだから良い人だな。(←人じゃない)



★★★★★



 あれから一週間。アリサには例の鍛練で誤魔化すことにし、俺も同時に鍛練を行うことで最大MPを伸ばし続けている。今日も今日とて、畑仕事の手伝いをしながらアリサと一緒に鍛練を励んでいる。現状はこんな感じだ。


名前:マキト

HP:26

MP:38


 うん、まだまだ先は長いな。


「ところでアリサ、最近村の人たちが俺に対して妙によそよそしい気がするんだけど、何か知ってる?」

「え、マキトってば気付いてなかったの? 魔法って言ったら普通は火とか水とかじゃない? だけどマキトのはよく分からない石属性だから、胡散臭く感じてるんだよ。マキトが魔物を倒したって話も半信半疑だし」

「ああ、そういう……」


 すっかり失念してたけど、この世界じゃ地水火風(ちすいかふう)の4大属性が一般的だ。俺みたいな石――なんて属性は殆ど例がなく、半端者扱いされることが多い。

 国や地域によっては4大属性以外は魔法と認めない――なんてとこも有るとか。「魔法を使えるとは言ったが4大属性だとは言ってないぜ?」ってのは詐欺師の常套句(じょうとうく)だったりするし、遠巻きにされるのも納得だ。ホント今さらだよなぁ……。


「それにね、魔法士って言えば極悪非道で有名だった大魔法士グリゼクスの話もあるじゃない? アイツの属性は毒属性、しかも盗賊団を率いて暴れまわってたわけだし」


 グリゼクス:オルフェノ帝国の魔法士で、人間とエルフの血を引くハーフエルフという種族の男だ。盗賊を使って村や街を襲っていたけど、帝国軍に捕まって投獄されてるらしい。

 毒と言われれば誰しもが敬遠するのは目に見えている。そうなれば仕事ももらえないし生活も出来ない。残された道は外道だったって感じか。

 まぁ結局は人を殺しまくったわけだから擁護はできないけどな。


「心配しなくても俺はグリゼクスのようにはならないよ」

「分かってる。でも村の人たちの本心は、4大属性じゃなくてガッカリしてるって感じじゃないかなぁ」


 魔法において4大属性以外は()()()という認識は強い。

 しか~し、使ってる身としては大いに反論したい! 事実魔法による魔物撃退もできたわけだし、石を使ってのアイテム生成も出来そうなんだ。

 よし、まずは村の人たちの誤解を解く事に専念するか。村の仕事で役に立てば、俺への見方も変わってくるはず。


「ねぇアリサ、今すごく困ってる事ってない?」

「困ってる事ぉ~? マキトと一緒にくんれんしてるけど、全然魔法が使えるようにならない事かな~」


 クッ、痛いところを。


「このまま魔法が使えなかったら責任とってくれる~?」

「いや、責任って……」

「マキトが立派な魔法士になって、あたしをお嫁さんにするの! ね、良いアイデアでしょ~?」

「ええ!? そ、それは困る、いずれは世界を旅してみたいと思ってるんだから――」

「新婚旅行で世界を回るの!? すっごく素敵~!」


 タメだ、聞いちゃいねぇ……。それにアリサの事は妹みたいな感じにしか見てなかったから、結婚を意識した事もない。そりゃ可愛いっちゃ可愛いけど……。

 いや、それより話を戻さないと。


「……コホン。旅行は置いとくとして、例えばだけどさ、物が壊れて使えなくなった~とか、そんな事とかない?」

「物が壊れて……あ、思い出した! お父さんが使っていた(くわ)がもうすぐ壊れそうなの。代えも無いし、そろそろ買わないとって言ってたよ?」


 農作業で使う鍬か。こういった道具は鍛冶製か魔法製かの二択なんだけど、市場に出回ってるのはドワーフの作る鍛冶製の物が殆どだ。エルフの村とかだと魔法製が有るらしいってとこ。ドワーフの鉄製より強度は落ちるけど、石製の鍬なら作れそうだ。

 うん、さっそく取りかかろう!


「ついてきてアリサ!」

「え、どこ行くの?」

「石を探しに――さ」



 やって来たのはすぐ側にある山の(ふもと)。歩いて3分、昔は石切場として活用されていた場所だ。今は使われていないけれど、切り出された石があちこちに放置されていて、色んな石が転がっているんだ。

 ここなら目的の石も見つけやすいし――ってことで……



「俺の予想が正しければ……」


 豚石(とんせき):石と石との隙間が非常に狭くて質量が多く、やや重さが有る。熱すればゴムのように柔らかくなる。耐久性は弱い。


「よし、思った通り! 俺の石属性を使えば石を解析することも出来るんだ」

「そうなの!?」

「うん。だけどこの石だと不向きだね。もっと耐久の強い石を探そう」


 そこで俺は目につく石をひたすら調べ回った。


 凛石(りんせき):黒めで硬めの石。磨けば(つや)も出て高級感が増す。耐久性はそこそこ。


 灯石(とうせき):ほのかに光る白い石。光源となるマジックアイテムに加工させることが多い。磨けば明るさも増す。耐久性は弱い。


 缶々石(かんかんせき):叩けば高めの音が出る石。打楽器に使用される事もあり、冷やせば高い音が、熱すれば低い音が出る。磨き上げることで更に大きな音を出すことも可能。耐久性は中の下。


 蛇石(だせき):蛇のようにうねった模様が特徴の石で、色や形は冷やしたり熱したりすることで変化する。耐久性は様々。


 怒竜石(どりゅうせき):発熱効果があり、暖を取るためのマジックアイテムに加工される事もある。熱することで発熱効果も上がる。耐久性はそこそこ。


 雨石(うせき):周辺に湿気を放つ石。保湿のマジックアイテムに加工されることもあり、雨乞いの儀式に用いられたりもする。耐久性は激弱。


 涼石(りょうせき):見ているだけで涼しくなりそうな青白い石。周囲を冷やすためのジックアイテムに加工されることもあり、冷やせば氷のように冷たくなる。耐久性はそこそこ。


 うんうん、凄く楽しいぞ~。前世でも集めた石を百科事典で調べたりしたんだっけ。ああ、石博士の血が騒ぐ。


「どう? 見つかった?」

「ハッ!?」


 アリサに言われて手を止める。そうだ、夢中になりすぎて本来の目的を忘れてた。


「ご、ごめんごめん、まだ良さそうな石は見つからないや。――ん? アリサが手に持ってるのは?」

「これ? あっちの方に落ちてたよ~。真っ黒で変な石だな~って思って。マキトってこういう変な石が好きなんでしょ?」

「変な石だなんてとんでもない! 石には世間に語られていない膨大な歴史が詰まっているんだ! 話せば長くなるけど――」

「長くなるなら話さなくていいよ」


 グッ! もう少しで石博士の本領を発揮できたのに!(←気合いの入れどころが間違ってるぞ)


「それよりどう?」

「どれどれ、拝見しよう……」


 漆黒石(しっこくせき):ひたすら真っ黒な石で、軽めだがとにかく硬い。故に加工するのも一苦労で、よほど腕の良いドワーフか魔法士でなければ加工出来ない。耐久性は抜群。


「これだぁ! これこれ、これを求めてたんだよ俺は。これなら強度のある鍬を生成できる。お手柄だよアリサ、キミと出会えて本当に良かった!」

「そ、そう?」


 俺の迫力に圧されているアリサを横目に、さっそく加工に取りかかる。加工と言ってもハンマー使ってトンカンやるわけじゃない。石属性の魔法使うんだ。


「全体には漆黒石を使って、手に持つ部分は熱した豚石を被せて――っと。よし、完成したぞ!」


 漆黒豚(しっこくぶた)(くわ):力は必要ない。男児や幼女でも簡単に扱えるほど軽く、丈夫で長持ち。10年以上は毎日使える耐久性を持つ。


 漆黒豚……なんというか、中二病ちっくな豚をイメージしちゃうな。けど10年は買い替える必要はないからお金の節約にもなる。

 同じのを10本ほど生成し、俺とアリサはさっそく村長の元へと急いだ。



「ほ~ぉ、これは見事な出来じゃ!」


 村長のジロームさんと居合わせた数人の村人たちが手に取って感心する。狩りと農作物で生計を立てているラバ村にとって農具は命綱。手に取ればその良し悪しはハッキリと分かるというものだ。


「あ~、確かに良い仕事をしておる。魔法士として充分に期待できるだろう。どうだねマキト、将来は私の後を継いで治療院をやらないかね? 魔法士のお前さんになら安心して任せられそうだ」


 そう言って目を輝かせるのはハーフエルフのコリンズ先生だ。


「騙されちゃダメよマキト。コリンズ先生はただサボりたいだけなんだから。あたし知ってるんだからね? たまに治療院を抜け出して酒場に行ってるのを」

「むむ、これは手厳しい」

「それにハーフエルフならマキトより長生きするでしょ」


 そりゃそうだ。俺も将来は世界を回るつもりだし、治療院は継げないなぁ。


「何はともあれ、礼を言うぞマキト。これでラバ村は後10年は戦えるわぃ」(←誰の台詞だい?)


 よし、村長も認めてくれた。


「フフ、良かったねマキト」

「うん」

「ところでマキトよ、気持ちは嬉しいのだが、お主は魔力枯渇で倒れただろう。無理をしちゃいかんぞぃ」

「いや、それは……」


 俺はこれまでの経緯を村長に話した。全ては村人たちの理解を得て、偏見を持たれずにいたいというものだ。


「……ふむ。そういうことか。確かに魔法に対する偏見は良くないのぅ。属性が何であろうと魔法士として目覚めたのは素晴らしきこと。どれ、今夜にでも皆に話してやるとしよう」

「ありがとう御座います!」



 村長から話があった次の日。俺を避けていた村人たちから謝罪を受けた。やはりアリサの予想通り、知らない属性の魔法士というのが大きかったそうだ。

 だけど魔法に目覚めてからも村に協力的な姿勢を見せることで、自分たちが誤解していたことが分かったらしい。

 しかし世の中というのは甘くはないようで、俺を否定し続ける村人もいた。そう、何かと俺を敵視するペドロとその両親だ。



「いい気になるなよマキト? 鍬なんざどこでも手に入るんだ。あれくらいでデカイ顔をされちゃ迷惑ってもんだ」

「息子の言う通り、あれしきの事で優越感に浸ってもらっては困る」

「はぁ……」


 わざわざ他人の家に来て言うことかよ。しかも俺はまだ10歳だぞ? 親子揃って大人げない連中だ。


「チッ、朝っぱらからムカつく顔を見ちまった。おいテメェら、仕事の邪魔だ、とっとと帰んな!」

「あ~ら嫌だ、粗暴な輩が親代わりだから子供が変な風に育つんでしょうねぇ」


 コイツら、俺だけじゃなくガルスさんまで悪く言いやがって。

 さすがにムカついてきたので盛大な仕返しをする事に。


「……で、結局どうすればいいんで? 何ならあれの十倍サイズの鍬でお宅の畑を耕しましょうか?」(←ソレが仕返しかよ)

「おい止めろ、畑が抉れるだろ! だがどうしても認めてほしいなら――」


 ペドロたちが何やらコソコソと話し始め、やがてこれでもかというドヤ顔で言い放ってきた。


「村を囲っている柵を石造りの防壁に変えてみろ。そうしたら認めてやる」


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