彼女と倒置法
彼女→彼氏→彼女……のサイクルで会話が進みます。
「倒置法……」
「ん、なんか言った?」
「……好き?」
「なんの話?」
「好き? 倒置法」
「え、え〜っと、時と場合による……かな???」
「そう、好きなのね。倒置法。今度からそうするわ。喋る時に」
「ごめん、今嫌いになりそう」
「えっ? どうしてっ!? さっき好きって言ったじゃない! 倒置法のこと」
「いやいや、好きとは言ってないから。時と場合によるって話聞いてた?」
「ええ、聞いてたわよ。あなたの意見は。でも、いつ来るか分からないじゃない。その、時と場合ってものが」
「いや、そうかもしれないけど……」
「だからいつでも使う必要があるわ。倒置法を」
「いやでも、倒置法だけが好きなわけじゃないからね? 他の表現法も好きだよ? てゆうか倒置法が好きとかそうゆうんじゃないんだけどな……」
「でもわざわざ選んで使ってると疲れるわ。他の表現法を。それに確実に当てに行くには全部丸を書く必要があると思うの。解答欄に」
「まだ続くのか…… てか比喩表現分かりづらい…… もう普通に戻って大丈夫だよ?」
「分かったわ」
「なら良かった。そのままじゃ話しずらいからね」
「好きになってもらえば良いのよ。倒置法を」
「何も分かってなかった!」
「だってあなたが言ったんじゃない。別に好きじゃないって。なら私が頑張るしかないわ。倒置法を好きになってもらうために」
「もう分かった! 分かったから! 好きだよ! 倒置法!」
「……それだけ?」
「え?」
「……好きなのは倒置法だけなの?」
「えっ、あ―――」
「なに?」
「えっと…… 僕は好きだよ…… きみのこと」
「ええ、私も大好きよ。あなたのこと」
「あぁぁぁぁ! はっずかしい!」
「ふふふ。ごめんなさいね、ちょっとからかってみたかったの。だって、付き合って一ヶ月も経つのに全然そうゆうこと言ってくれないんだもん」
「恥ずかしいんだよ……」
「そうね、その気持ちも分かるわ。だからからかったんじゃない」
「だからって倒置法使う必要あったか……?」
「あるわよ。このあと、こう言うつもりだったから」
「何を言うって?」
「私の家に来ない? 今日、誰も帰って来ないから――――」
可愛いですよね。倒置法彼女。
倒置法で話すキャラを書きたくて練習がてら書きました。会話だけなのはそのためです。
もしかしたらまた後で出てくるかも……? 乞うご期待。