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短編集

旦那デスノート

作者: 鳳終院狂夢


 私の名前は椎名りく。

 そして、私の幼馴染の男の子の名前は山村りくとだった。

 りくとりくと、名前が似ているということで、私たちはとっても仲のいい幼馴染として、ともに育った。

 私はりくとのことが大好きだった。

 小学校に入ると、よくまわりから「二人が結婚したら、二人とも山村りく、と山村りくとだな。同じ名前じゃん。おっかしい」とからかわれたものだ。

 ずっと一緒にいたので「やーい、お前ら夫婦かよ」とからかわれた。

 私はりくとのことが好きだったので、特に気にはならなかった。

 それどころか、私は二人の将来を想像して、少しうれしくなったほどだった。

 もし二人が結婚したら、おんなじ名前になっちゃうね、と自分で、りくとに言ってみたことがあった。

 するとりくとは、顔をあからめて恥ずかしそうに「ばかやろー」と言っていた。

 りくとは年頃の男の子だったから、私といてからかわれるのがはずかしくなったみたいで、だんだんと私から距離を置くようになった。

 高学年になるころには、ほとんど話すこともなくなっていた。

 だけど私はやっぱり気になって、りくとのことを目で追っていた。

 そして私たちは別々の中学校に進学した。

 そこからはずっと会っていなかった。

 だけど、高校生になってから、予備校で再会した。

 偶然にも、ふたりの志望校は同じだった。

 高校生になっていたりくとは、少し大人になっていた。

 私たちはすぐに再び意気投合した。

 いつのまにか、私たちは恋人同士になった。

 そして同じ大学に進学して、卒業してすぐに結婚した。

 私たちは、山村りく、と山村りくとになった。

 ふたりはラブラブだった。

 だけど、幸せな日々はそう長くは続かなかった。

 りくとは結婚するまえは、とてもいい彼氏だったんだけど、結婚してから変わってしまった。

 私に文句は言うし、家事は手伝ってくれない、子育てだってまかせっきり。

 お酒ばかり飲んでいるし、お金もすぐにタバコやギャンブル、趣味のプラモデルに消えてしまう。

 しかも不倫しているような気配すらある。

 私が文句をいうと、ヒステリー女だとかっていって、馬鹿にする。

 だいたい、りくとは私のことをなにもしらないバカ女だと思っているのだ。

 私だって、同じ大学を卒業したというのに。

 私はだんだん彼が嫌になってきた。

 あれほど好きだったりくとのことを、いつのまにか憎んでしまっていた。

 子供が成長して家を出ていくと、いよいよつらくなった。

 もう好きでもないりくとと、いっしょに暮らすのが、耐えられない。

 愛情がなくなってしまえば、そこにいるのはただの太った中年男性だ。

 私はりくとが家にいないときだけが安らぎだった。

 はやく死んでくれないかな、そう思うようになった。

 そんなとき、SNSで旦那デスノートというタグをみつけた。

 そこには私のような思いをしている人がたくさんいた。

 みんな、SNSで旦那の不満を共有している。

 私もすぐにそれに夢中になった。

 SNSに、何度も旦那死ねと書いた。

 いずれそれが現実となるように、私は体に悪そうな食事ばかりを作った。

 まあ、酒もたばこもものすごい頻度で消費するし、りくとはそう長生きはしないだろうと思っていた。

 だけど、そろそろこんな生活にも限界だ。

 SNSのおかげで、なんとか自我を保っていたけれど……。

 そんなある日のことだ。

 私の目の前に、一冊のノートが落ちてきたのだ。

 それには、旦那デスノートと書かれていた。

 中を開けてみると、そこにはいろんな人の名前が書かれていた。

 いったいどういう名前が書かれているのだろう。

 でもデスノートって書いてあるくらいだから、殺したい人間の名前なんだろうな。

 旦那デスノートってことは、これはみんな旦那に不満をもっている妻たちが書いたのかな。

 ここに名前を書かれた人は死んだんだろうか。

 はは、まさかね。

 デスノートなんて、実際にあるわけないじゃない。

 だけど、まあ、いちおう、まさかね……。

 でも、私は旦那の名前を、そのノートに書かずにはいられない。

 あんなやつ、早く死んでしまえ。

 そういう思いで、私はノートに旦那の名前を書いた。

 

「山村りく――」

 

 そこまで書くと、私はとたんに苦しくなって、その場に倒れた。

 

お読みいただき、ありがとうございました!


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