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最も残酷で最も温かな愛

最も残酷で最も温かな愛

作者: 春風 咲来

静かな世界、日差しを受け穏やかに微笑む少年。

幸か不幸か鳥籠は突然壊された。


「アモル…!」

僕を守ろうとした愛しい人はたちまち形を変え、我を失ったようにこちらに向かってくる。

「ねぇ、どうして?」

生まれて一度も人に敵意を向けられた事のないアモルには何もかも理解できなかった。


「危ねぇぞ!お前!」

アモルの視界が銀と淀んだ色に染まる。

「君、大丈夫?」

苛立たしげなのと優しげに微笑んでいるの、その二人の青年はアモルが初めて出会った外の人間だった。


「何?君たち」

助けられたはずの少年の目は冷ややかだ。

「はぁっ!?お前助けられたのにその態度はなんだよ‼︎」

「まあまあ、落ち着いて、イクェス。」

激昂するイクェスと呼ばれた黒髪の青年を、隣の赤髪の体格のいい青年が穏やかだがしっかりとした強さを持った口調で嗜めると、たちまちしゅんとしたような態度になる。


「はじめまして、俺はウェル。

突然で申し訳ないんだけど君、他に頼れる所はある?ここはもうじき危険になる。最悪の事態を避けるために俺たちが来たんだ。」

「他の、場所?ここ以外にも、世界は、広がっているの?」

優しく手を差し伸べられたその問いかけに少年は目を見開く。

「何言ってんだ?お前。」

「何か、特殊な事情があるようだね。見たところ小さいし、児童相談所にでも避難してもらった方が…」

訳がわからないといった面持ちのイクェスにウェルは神妙な面持ちでそう返すと、少年は声を荒らげた。

「嫌だ!!よくわからないところになんて、ましてや他人に指図されてなんて行きたくない!!」

「まったく、生意気なガキだな。ここはもうお前の温室じゃなくなったんだ。厳しい外の世界に出て一人では生きていけないんだ、保護してもらった方が安全に決まってんだろ!?」

「危険って、どんなもの?外の世界ってどれだけ広いの?ねぇ、ぼくもつれていってよ!」

にこにこと愛らしい天使のような笑顔見せたが、イクェスはその好奇心にもはや呆れていた。

「あのなぁ、俺たちが戦ってるのはお遊びじゃねぇんだぞ!お前の好きなごっこ遊びとは違うんだ!絶対ついて来んなよ!」

「ごっこ遊び?どんな遊びなの?ねぇ、もっとぼくに教えてよ!」

何も知らないアモルに、やはり二人はただならぬ事情があると感じそっと目配せした。

「アモルくん、だったっけ?他に行くあてもなさそうだしね…

俺たちとの旅は、必ずしもいいものではないかもしれない、もちろんそうならないように努力はするが俺たちは君を守りきれないかもしれない、それでもいいというのなら、俺たちと一緒に来るかい?」

ウェルはかがんでアモルに目線を合わせて、真剣に見つめたかと思えば、人懐っこい笑みを浮かべた。

「うん!一緒に行く!」

アモルの表情がパァッと明るくなる。

「はぁっ!?正気かよ!!はぁ、まぁ、我が主人ウェル様のご意向とあれば。」

イクェスは固く忠誠を誓う騎士のポーズをとる。

「いつもいってるけど、俺にそんなにかしこまらなくていいのに!ありがとう、イクェス。」

口調は軽いが、その優しげな笑顔はどこか寂しそうだ。

「そうと決まったら、自衛くらいできるようにお前を鍛えてやるよ!アモル!」

「イクェスがぼくを守ってくれればいいんじゃない?」

ふんっと威張るようにイクェスが言うと、アモルはきょとんとした顔で甘える。さも、そうするのが当然だというような態度だ。

「さっきも思ったが生意気だな!お前!」

その口調にはすでに親しみがこもっていた。

「2人とも、もうすっかり仲良くなってきてるんじゃない?」

「どこが!?」

2人の声が同時にこだまする。

アモルとイクェスを微笑ましく見守りながらも、ウェルの心には幼子に武器を握らせなければならない事に対しての罪悪感が影を落としていた。

「いったいいつになったら、優しい光に満ちた世界を築けるのだろうか…」

その呟きは誰の耳にも届かぬまま…


弔いが終わった後、早速2人はアモルに小型の銃を与えた。

「また、あれがでたら、これをつかえばいいの?あいつはなに?なんでぼくに向かってきたの?」

アモルの問いは止まる事を知らない。

「あれはおそらくゾンビだよ。なぜ出現したかは、俺たちにもよくわからないんだ。突然発生して、一番に城に攻め込んできたから、どこかの国が戦争を仕掛けてきたのかとも思ったんだけど、まだ何も掴めていない。

すでに俺の国の王は、ゾンビに乗っ取られた城で亡くなってしまった。俺は、イクェスがなんとか連れ出してくれたから、今こうしてここにいる。」

「……2人にも、わからないものはあるんだ。イクェスは強いんだね!」

ウェルは複雑な表情をしていたが、アモルにはその感情が何か読み取れない。少し考えこむようにしてからそう言うと、

「そうだ!…と言いたいところだが、俺は強くねぇよ。最年少騎士団長なんて言われて調子に乗っていた時期もあったが、本当に大変な時に、仲間たちを、守れなかった。」

いつもの自信と煩さが嘘のように、イクェスは悔しさに顔を歪める。

「そんなことないよ、イクェスは俺の自慢の幼馴染で親友だ。

俺だって、混乱してしまって、父上が苦しむのをただみていることしかできなかった。」

イクェスの震える肩をウェルが優しく抱きしめる。

その瞬間、アモルの胸に、己の手でゾンビから人々を救いたいという使命感が生まれた。そして、二人が助けてくれなければ自分は殺されていたんだという恐怖が遅れてやってきた。アモルは初めて敵意という感情を理解した。

「っ!ううっ、なに、これ。」

感情か昂るあまり、銃を放ってしまったアモルは、反動によって初めての痛みを経験した。

2人ははっとした様子でアモルの方を振り返った。

「まったく、危ない奴だな〜。まだ弾入れてなくてよかったぜ。」

「ちゃんと注意してなくてごめんね、やっぱり体格に対して反動がきついか…

アモルに使いやすいようにしっかり改造しておくね!」

イクェスとウェルは甲斐甲斐しくアモルの世話を焼いてくれる。

なんだかアモルは胸が温かくなる気がして、そっと胸を押さえた。



歩いていると、雑踏の中にやつれた人や、傷だらけの人を見つけた。

アモルはなんだか怖くなって、ウェルとイクェスの袖を遠慮がちに掴んだ。

ウェルもイクェスも、暖かな手で、傷つけないように、しかし力強くアモルの手を握った。

「あいつらは、薬物で現実から逃れようとしたり、ゾンビになる恐怖に怯え、そうなる前に死にたがる奴らだよ。ゾンビが出てきてから、そういうのが増えてる。」

苛立たしげにやるせない様子でイクェスが教えてくれた。

「死…?」

アモルは本当に何も知らなかった。

「この世から存在がなくなってしまう、とっても恐ろしい事だよ。」

ウェルがそう続けると、アモルの傷ひとつない小さな手が、小刻みに震えていた。

アモルを安心させようと、また二人はアモルの手を握り返した。

「大丈夫だよ。」「お前はそうならない。」

「いつか俺たちがああいう人々まで救うんだ!」

「俺たちならきっとできるさ!」

ウェルとイクェスの声を聞くと、初対面の人のはずなのになんだか安心して、アモルは二人の力をすごいと感じた。

「ぼくも、せいいっぱいがんばるね!」

ウェルもイクェスもアモルに笑いかけた。

三人で拳を突き合わせた誓いは、アモルに仲間になったのだという実感を感じさせ、怖いはずなのに、あっという間にわくわくとした気持ちで心が満たされていった。



ひとまず情報収集をする事に決めた三人は、とあるバーに立ち寄った。

「邪魔するぜ、ヴィヌム」

「久しぶり、いつものを頼むよ。」

どうやら、イクェスとウェルはこの店の常連らしい。

慣れた様子で店内に入ると、すらりとした、中性的で上品な人物が出迎えてくれた。

「いらっしゃいイクェス、ウェル様直々にご来店とは光栄です。

おや、今夜は随分と可愛らしいお客さまもご一緒なのですね。」

「こっ、こんばんは…ぼくは、アモルと申します。」

声を聞いても性別はわからないが、アモル自身何故だかわからないがたちまち赤面してしまう。

「アモル様、"愛"ですか、今の純真無垢な貴方に似合うとてもいい名前ですね。」

「愛って、どういう事?」

「ふふっ、貴方の名前の意味ですよ。お二人といる事ではわからない愛を、私が貴方に優しく丁寧に教えて差し上げても構いませんが、貴方にもっとさまざまな意味での愛をお教えするのは、まだ早いかもしれませんね。

貴方は眩しいほど純白で、その白さをいつまでも守って差し上げたくもなりますが、同時に、その純白に色をつけたとしたらどれほど美しく染まりゆくのか、興味が湧きます。」

しなやかな指先で撫でるように顎を掬い上げられ、アモルが困惑していると、

「やはり、愛らしい方。冗談ですよ。」

と囁きスッと離れていった。

「ヴィヌム、あまりアモルを揶揄わないでやってくれ。」

「ただでさえ、ヴィヌムは初対面の心臓には悪いんだから…」

ウェルとイクェスがアモルに同情すると、ヴィヌムは悪戯っ子のような笑みを浮かべた。

「あら、すみません。少々刺激が強すぎましたかね。

愛とは何か、などという随分と魅力的で危うい問いかけをいただいたものでつい。

イクェス、初対面でない貴方は私に心酔してくださらないのですか?つれない人。」

ヴィヌムの目は全て見透かすように細められている。

イクェスもアモル同様、たちまち赤面し、慌てふためく。

「ふふっ、正直な方。」

ヴィヌムは満足気に微笑むと、ウェルへと視線を移す。

「それで、この度はどのような情報をお求めですか?ご覧の通り、今宵のお客さまは貴方方のみですので、美酒を嗜みながら、ごゆっくりお話いたしましょう。ご安心ください、アモル様にはノンアルコールです。」

三人分の飲み物をカウンターに置くと、カランとした氷の音が密談の始まりを告げる。

「言われてみれば、いつもは満席なのに今日は珍しいな!飽きられたか?」

「ゾンビについてなにか知っている情報があれば買わせてくれないか?」

「ほんと、失礼ですね、イクェスは。

生憎詳しくは存じておりませんが、先程珍しいお客さまがいらっしゃいましたよ。貴方方がお探しの人ならざるものではありませんか?

噂をすれば…ほら。」

歌を口ずさむようにゆったりと話すヴィヌムにつられてドアを振り返ると、入口にゾンビが立っていた。

三人がそれぞれ武器を構えようとすると、ヴィヌムが静止する。

「この店で、戦いは禁止ですよ。

野蛮なお客さまには、特別に私から直々に制裁を差し上げます。

愛の鞭のサービスです。ありがたく受け取りなさい。」

そう言ってヴィヌムが取り出したのは、とてつもなくアルコール度数の高いカクテルだった。

「とっても刺激的で、一生に一度味わえるかどうか、たまらない快楽に堕ちるはずですよ。

もっとも、人間の体では生きて帰る事ができるかはわかりませんが、貴方方にしか味わえない特別というのもなんだか焼けてしまいますね。」

魔法のように鮮やかに火を灯されたカクテルを差し出されると、酒の匂いに興奮していたゾンビ達が一斉にカクテルに群がった。

「もう、順番ですよ、お行儀が悪いんだから。」

ヴィヌムの妖艶な笑みに、ゾンビ達も一時静かになった。

「ふふっ、いい子ですね。お味はいかがですか?」

酒を口にしたゾンビ達は、体内から燃え尽き、次々と崩れ落ちていく。

「ゾンビさえ魅了するヴィヌムって、本当一体何者なんだ…」

驚いたイクェスの呟きに、ウェルとアモルも無意識に何度も頷いていた。

「私を知りたいのですか?命知らずな質問ですね、

私の美しさには、性別も、種別さえ関係ありませんよ。」


「そういえば、最近姿を現さないお客さまがいらっしゃるんです。フィアンセと毎日のようにいらしていたというのに。この店に飽きてしまわれただけなら私の実力不足ですが、近々結婚式に読んでくださるとおっしゃっていたのに、急に連絡が取れなくなってしまったので、気掛かりで…」

ゾンビを倒し終えた後、思い出したようにヴィヌムがそう告げた。

「何か、ゾンビと関係があるかもしれないな。次の目的地は、その人物のところにするか。」

ウェルの提案に、イクェスとウェルも立ち上がる。

「私からも、お二人のことをどうぞよろしくお願いいたします。

これは、情報屋としてではなく、私個人としてのお願いでもあるので、今回のお代は無しにしておきますね。」

優雅にお辞儀をした後、茶目っ気たっぷりにウィンクを一つ。

大人の色気を見せたかと思えば、時々少女のように愛らしくなる。

三人はこれがヴィヌムの魅力の一つかと悟った。

やがて小さくなっていく三人の背中を眺めながら、ヴィヌムは密かに願う。秘密を解き明かそうとする旅が、心を、絆を分つことのないように。

かつての自分達と同じように。

「どうか、その道の先に、幸多からんことを…」



「名前は、リリーさんとエダムさんだったよね。」

「ああ、まずはエダムさんの家を目指そう!」

幸いすれ違った人に家の場所を聞くことができたため、エダムの家がある方向へ向かうと、獣の吐息のような音とゾンビの匂いが感覚を刺激した。

「ゾンビ!」

初陣に気合いの入っていたアモルがすぐさま銃を放とうとすると、1人の人間が間に滑り込んできた。

「まって、この子を殺さないで!」

鋭い声に冷静になってあたりを見回すと、悍ましい光景が広がっていた。

ゾンビが、ゾンビを喰らっていたのだ…

さらに、喰らっている方のゾンビの首に繋がれた手綱は、

目の前の男の手に握られていた。

武器を下ろした事にほっとしたように息をつくと、

「驚くのも無理はない。だが、この子は僕の片割れ。

殺されたらこまるんだ。

僕だけの、かわいいかわいい手負いの獣。僕だけの弟、愛しい愛しいエダム。」

口調は優しいが、表情を動かさずピシャリと言い切ったあと、恍惚の表情を浮かべ、そのゾンビの手綱を引いた。

「エダム…!?」

さっきまで聞いていた名前に、三人は絶句する。

「僕の名はクヴァ、二人合わせて永遠になる。いい名前でしょ?

僕の両親、名前のセンスだけはいいんだよね。」

相変わらずクヴァと名乗る男の表情は読めない。

「リリーさんは、どうしているんだ?エダムさんの婚約者なんだろ?」

ウェルが対話を試みると、クヴァの表情が嘲るようなものに変わった。

「リリー?いたな、そんな女。あんな女にエダムを渡せるはずないだろう?僕達の見分けもつかないし、僕からエダムを奪う。

ただの馬鹿な邪魔者だよ。」

高笑いをすると、

「ちょうど退屈してたんだ、聞かせてあげてもいいけど。面白い子もいるみたいだしね。」

と続け、アモルを舐めるような目つきで見つめた。

「たぶん、その色白銀髪の小さいのと、僕達は似たような境遇を持ってると思うよ。

だって君、エダムにそっくりだ。」

「ぼくが…?」

アモルはじっとクヴァとエダムだった者を見つめ返し、クヴァの言葉に耳を傾けた。


「あれは、何年前の事だっただろう。僕達が十五歳になる年、いつも一緒だった双子が違う扱いを受けるきっかけ。

僕達の両親が洗脳されていた宗教の行事で、エダムが"神の子"に選ばれたんだ。その日から僕は、エダムの影武者として生きることを求められるようになった。

もし僕が選ばれていたら、きっと扱いは逆だっただろうね。

それはいいとしても、僕はただ、ずっとずっと永遠に二人仲良く、何もかもお揃いのまま生きていたかっただけなのに…」 

怒りに泣きながら双子の思い出を思い出し満面の笑みを浮かべるクヴァは、狂気とエダムへの愛に満ちていた。

「その子は、僕達と同じ宗教の決まりで外に出してもらえず、まったく日に焼けていない肌と、無垢だが好奇心旺盛そうな目がエダムによく似ているよ。

容姿も天使のように美しい。きっと、十五になる年だったら、君が神の子に選ばれていただろうね。」

アモルを品定めし、エダムと似ている点に愛着を示す。

「来年だったら、ぼくもそれに…そういえば母様は、いつも貴方は神の子に違いないって繰り返してたっけ。」

もし何も知らないままそうなっていたらと想像して、アモルはぞっとした。

「えっ、アモルって今年十四だったのか…てっきり十にも満たないと…」

「俺もずっと勘違いしてた…」

ひそひそとウェルとイクェスが囁き合うと、話が自分から逸れたのが面白くなさそうに声を大きくしてクヴァが続けた。

「こほん、自分の子が神の子に選ばれるというのは、信者達にとって何よりの栄誉だからな、皆それを目指していた。

リリーは、エダムの次の神の子で、親同士が決めた許嫁。」 


神の子を決める日、エダムは誰よりも先に見知らぬ信者達に微笑んだ。僕も同じようにすぐに微笑んだ。

エダムが笑えば僕も笑う、エダムが怒れば僕も怒る。エダムが泣けば、僕も…

服も表情も何もかもお揃い。美味しい食べ物だって、新しいおもちゃだって、なんでも半分こ!

それは、僕達にとって当たり前の習慣だった。

なのに、あの時から二人、違うものが増えてく。まるで、一人の人間から分裂して二人になっていくみたいに。僕にはそれが許せなかった。


リリーとは、許嫁のエダムしか会うことが許されず、境遇から気があったらしいエダムは、やがてリリーの話しかしなくなった。

そして年月を重ね、先日エダムとリリーの結婚の話が動き出した。

こっそり家を抜け出して見つけたリリーという女は、エダムから聞いていた明るく包み込むような優しい白百合のようなイメージとは違い、折れそうなくらい華奢で、巻き髪から覗く大きな暗い目が特徴の、黒百合のような女だった。外見はすっかり大人びているが、中身は何も知らない清らかな女、いかにも女に対して愛玩欲求のある男に気に入られそうなやつ。というのが、僕のリリーへの印象だった。

「やぁ、リリー。会いたかったよ。」

そう声をかけると、嬉しそうにきゃっきゃとはしゃぎ、

「エダム、リリーちゃんに会いにきてくれたのね。嬉しいわ。」

一卵性の双子とはいえ、僕とエダムの見分けもつかないのか。

僕の存在も知らないとは、エダムが僕の話をしないなんて、エダムは僕を愛していないんじゃないか。

その瞬間、僕は激しい怒りとただでさえ憎らしかったリリーへの憎悪が強くなっていくのを覚えた。

それと同時に、擦り寄ってくる女に、エダムのものだからお揃いが欲しいという甘い誘惑が心を染めた。

「リリー、」

女が好むように、吐き気がするほど甘ったるい声で口付けると、

うっとりとした表情でクヴァを見つめた。

やっぱり、誰でもいいんだね。この呪いの女は。

これでお揃いだよ、エダム。

さらに求めようとするリリーを、

「興が冷めた。」

とあしらって家に帰った。

しばらくして、僕がリリーに会って口付けたのがエダムにばれて、僕達双子は初めての喧嘩をした。

「何で怒るの?僕達は、全部、全部、お揃いで、半分こって言ったじゃない。」


「その時のエダムの顔といったら、いろんな感情がぐちゃぐちゃで、可愛かったな。」

非常に愉快だというようにクヴァが思い出し笑いをした。

「それでねー、二人で一つに戻るには、僕がエダムを閉じ込めちゃえばいいんじゃないかって思ったの。」

手綱を引くと、チャリチャリっとあちこちに縛り付けられた鎖が音を立てる。

その軽快なリズムが、クヴァの心情を表しているように思えた。

「これを準備してるときに、ちょうどエダムがゾンビに襲われちゃったから、用意していたもので拘束して、こうやって飼っているんだぁー。

ちょっと姿が変わっちゃったり、言葉が通じなくなったり不都合はあったけど、僕だけのエダムになって気分がいいよ。

エダムの心はもう僕の中にある。永遠に離れる事はない。

ちなみに、餌にはリリーを初め、僕達を離れ離れにした奴らをあげたんだー。今はゾンビを積極的に食べさせてるんだけどねー。

君たちも邪魔をするなら、エダムの餌にしてあげてもいいんだよ??」

あまりに惨たらしい事を平然と言ってのけるクヴァに、同じ人間とは思えないほどの恐怖と、嫌悪を感じた。

だが、クヴァの瞳の奥には、深い深い後悔と悲しみ、憎しみに変わってしまう前の愛情が滲んでいた。


三人は息を呑み言葉を失った。

どういった判断を下せばいいか、誰もが迷い、決めかねていた。

「どうする、ウェル。」

「そうだね…ここで彼がゾンビとはいえ唯一支えを失ってしまったら…」

「見逃すべきじゃない!」

きっぱりと言い切るアモルに、ウェルとイクェスはハッとする。

ウェルは誰に対しても情に厚く、脆い、たとえそこに疑問があったとしてもイクェスは昔からの習慣でウェルの意思決定に本能的に口出しできない。

二人より人生経験が少なく、外の世界を知らなかったアモルこそ、

ウェルが絆されそうな気配を敏感に感じ取り、ある意味残酷かもしれないが、心情を持ち込まず善悪の判断を下すことができたのだった。

アモルは、今までの不足を補うように、素早く感情を吸収し、大きく成長していた。

「そうだな…!とどめを刺すしかねぇ。」

イクェスの了承を確認したアモルは、素早く引き金を引いた。


パンッ

小気味いい音を立てて、金色の線を描いた銃弾がエダムの体を貫いた。

ウェルが改造してくれた銃は、以前から使っていたかのように手に馴染む。

反対に、アモルの手は銃に張り付いたように離れない。

ゾンビとはいえ、初めて生き物を撃ったのだ。

アモルの瞳からは、自然と涙が溢れていた。

急に血の気がひき、ふらついて倒れそうになったアモルをイクェスが支えた。

「偉かったな…」

イクェスが優しく頭を撫でてやる、

「うん…」

アモルはイクェスにしがみついて静かに泣きじゃくった。

ウェルが一本一本丁寧に銃からアモルの指を剥がして、何も言わず両手で包み込んだ。

「エダム…エダム…!!罪を重ねさせてしまったが、もう一度人間に戻ってくれないか。目覚めたらお前の方が辛い思いをするだろうな、わがままだとはわかっている。

エダム、僕はただ、永遠に一緒にいたかっただけなんだ。

僕を許さなくていいけど、謝りたい。

エダム…エダム…僕の愛しい、双子の弟…」

エダムの体が崩れ落ちて、クヴァは憑き物が落ちたような顔をしていた。

クヴァは、必死に散っていく粒を集めている。

クヴァの涙が、溢れて地面に無数の跡をつけている。

その光景の粒と涙が重なった。

「僕らは、僕は、どこで道を違えてしまったのだろう…

違う顔をするのにも、いつのまにか慣れてしまったな。」

「産まれる場所が違えば、僕らはずっと一緒に、仲良しの双子のままでいられたかもしれないね。」

エダムの声が聞こえた気がした。

「エダム…僕は許されない事をした…」

決して許される事のない罪、後悔の声はそっと空気に溶けていく、もうエダムの声は聞こえなかった。



(あの時、本当はイクェスは最初からアモルと同じ事を考えていたんだろうな。)

その場から立ち去りながら、ウェルは考える。

(イクェスの中ではきっと、ずっと第一王子で、主君にしかなれないのかな。

大切な相棒で、本当の親友だと思ってるのは、俺だけなのかな。)

そんなはずはないと思いながらも、時々、不安になってしまう。

(俺がもっとしっかり決断できていれば、アモルに辛い思いをさせずに済んだかもしれないのに。)

あれから、アモルは銃がトラウマになるどころか、むしろ逞しくなっていた。

(優しいあの子の本質が変わってしまったり、無理をさせていないといいんだけど…)

「ねぇ、もしも、僕がゾンビになったら、ウェルとイクェスが殺してくれる?」

沈黙を破るように発された久々のアモルからの問いかけは、ウェルをドキリとさせた。

「俺は…どうだろう。きっと迷ってしまって、無理だと思う。」

「俺も、そうだな…お前たち姿をしているなら、手が動かないかもしれない。

だが、罪を重ねてしまうところは見たくないし、生かしておくのは正解ではないだろうな。

ゾンビになったのがもし俺なら、ウェルかアモルにとどめを刺してほしい。」

「もし、俺がゾンビになってしまったら…やっぱり二人を傷つけたくないな。」

なんとも言えない問いに思った事を正直に答えた。

「僕がした事は、間違いじゃ、なかったよね…。

約束して、僕がもしゾンビになってしまったら、君達の手で、とどめを刺して。それが僕にとって愛情だと思うから。

あの日、君たちが来てくれなかったら、僕はあんなに恐ろしい存在に襲われていたんだね…。

絶対、僕は、君たちを傷つけたくないし、僕の命は、君たちに握っていてほしいんだ。」

さまざまな記憶を思い出したのだろう、大粒の涙を流しながら、アモルはそう懇願する。

「アモルは何も間違えていないよ。アモルの望みなら、何でも叶えてあげたい。もう二度と、俺のせいで傷つけたくない、だけどね、アモルのお願いはもっと楽しい事に使おう。

来年も再来年もその先もずっと、俺はアモルのそばにいるよ。六年後には一緒にヴィヌムの店で酒を飲もう!」

ずっとなんてないと、先程痛いほど知ったはずなのに、たとえいつかこの瞬間だけの思いや約束になってしまったとしても、そう思ってくれた事実、その気持ちが存在したという事がなによりも価値のある事のように思えて、アモルはたまらなく嬉しかった。

優しくて愛しくて切なくなってしまうほどに。

「俺たち、もう家族みたいなもんだろ。縁起悪い例え話はやめようぜ!」

イクェスが乱暴に髪を撫でると、アモルはさらに泣き出した。

「なんだ!?痛かったか!?」

イクェスがギョッとすると、その手をアモルがパシリと叩いた。

「察しろ、バカっ!!今度は嬉しいんだよ…!!」

その軽口と笑顔には、最大限の親しみがこもっていた。

「ふふっ、君たちのおかげで、今までで一番良い最高の誕生日になったな。」

さらりと告げられた重大な情報に、ウェルとイクェスは耳を疑った。

「誕生日!?はやくお祝いしなくちゃね!!」

「お前、そういうのはもっと早く言っとけよー!!十四歳おめでとう。そういや、背も伸びたんじゃねぇか?」

突然の事実に驚きながらも、ウェルもイクェスもアモル以上にとても嬉しそうだった。

「大好き!愛してるよ、アモル!君に出会えてよかった!今日は特に、俺たちお兄ちゃんにいっぱい甘えてね!!」

「お前の事、いい仲間だと思ってるぜ。生意気言ってるけど芯が強くて意外とかわいい奴で、愛してるぜ。

もう一回、俺の胸で泣くか?」

「ウェルはいいとして、イクェスは馬鹿にしてるー?

僕も…君たちの事、嫌いじゃないけど…

その、だいす…あいし…

なんでもない!お兄ちゃんなら、もっとかっこいいところみせてよね!」

(もう十分かっこいいけど、絶対調子乗るから、言ってやんない。きっとこういう気持ちを幸せって言うんだろうね。

ありがとう。ウェル、イクェス。)

甘やかそうとしてくる二人に強がってはいるが、アモルの人生において、間違いなく一番楽しくて愛に溢れた誕生日だった。

どんなに高価なプレゼントよりも、二人はアモルにとって特別で憧れだった。誰よりも大切な存在。

この日のことを、アモルは永遠に忘れることはないだろう。



情報を収集しようと町を歩いていると、おかしな噂を耳にした。

小さな診療所の町医者メディケの亡くなったはずの息子クラースが生き返ったというのだ。

何か関係がありそうだという事で、さっそくメディケの診療所を訪れた。

ドアをノックすると、物腰柔らかな印象のメガネと白髪まじりの髪が特徴の人物が出てきた。

「今日はどうされました?」

患者だと思ったのだろう、愛想良く笑顔を向けられる。

開かれたドアの隙間から消毒や薬品の匂いに混じって、微かにゾンビの匂いを感じた。

「あのー…」

三人が何も言わずにいると、メディケが不思議そうな顔で見つめてきた。

その瞬間、探していた存在がドアの隙間からひょっこり顔を出した。

「パパ、おきゃくさん?こんにちは!」

確かに気配はゾンビなのに、限りなく人間に近い姿をしており意志を持って喋る事ができる。

それは今まで出会った事がない異質な存在だった。

するとメディケの表情がたちまち険しいものに変わる。

「クラース!パパがいいと言うまで出てきちゃダメだといつも言っているだろう!?」

ヒステリーを起こしたように怒鳴りつけると、クラースと呼ばれた男児は小さな肩をさらに小さくすくめた。

「すみません。」

ウェル達の存在を思い出したかのように謝る。

すぐにもクラースは何者なのか聞きたいところだが、まずは中に入れてもらわねばならないとウェルは機転を働かせた。

「実は、彼の古傷が痛むそうで…」

ウェルがイクェスに視線を向けると、イクェスは痛がる演技をした。

「わかった、中で見せてごらん。」

目論見通り無事中に招き入れられることに成功した。


「これはひどいな」

幼い頃からの鍛錬で培われ、第一王子の護衛兼騎士団長として生きてたイクェスの体は、逞しさの分だけ古傷が刻まれていた。

それはウェルの想像以上で、一体彼がどれだけのものを背負ってくれていたんだろうと、全部知った気になっていてもまだ知らない一面があるんだと知って幼馴染を少し遠くに感じた。

「ひどいもんか!この傷が、仲間を守ってきた俺の誇りだ!守れなかった無念の傷も…この傷を見るたびあいつらの顔を忘れないように。」

イクェスはただ真っ直ぐに誇らしげに胸を張った。

「……元気があるのはいいことですね…。」

メディケの視線が一瞬別なところに向けられた事を、アモルは見逃さなかった。

「あの写真って……」

視線の先にあるものを見つけアモルが問いかけると、メディケの目が見開かれた。

「あれは、生まれたばかりの息子クラースの写真ですよ。あまりに小さいでしょ?だから明日を意味するクラースと名付けました。

ずっとずっと病弱で、寝ている事が多かったのですが、今やっとああして自由に動き回れるようになったんです。

だから心配で心配で……」

息子を思う父の気持ちは、嘘をついているようには見えなかった。

ただ、妙な事にも気づいた。この診療所は、医療用にしては薬品の匂いが強いのだ。


完全なゾンビなら、殺さなければならない。しかし、クラースのようなのは今までで見たことも聞いた事もなく、判断に困る。

「おちゃ、どうぞ!」

まるで本物の人間のように無邪気に微笑まれると、迷ってしまう。

本当に正しい選択は何か。

メディケは、息子の死をなかったものにしようとしているか、封じ込めて忘れているのだ。悲しみのあまり心が壊れかけている人の顔をしていた。

「うん、おいしいよ。」

アモルがお茶を飲んで微笑むと、クラースは嬉しそうに飛び跳ねた。ああ、どこまで人間のようなんだ…

こんな子と戦ったら、今度こそアモルの心は壊れてしまうのではないかと心配になる。

「毒物は入っていないぞ、ウェル。」

素早く確認したイクェスはウェルに耳打ちした。

「ありがとうイクェス…ありがとうクラースくん。」

二人に礼を伝えると、イクェスはもっと頼っていいぞとばかりに、クラースも褒められた喜びに目を輝かせた。


「邪魔する。メディケ。」

突然ドアを開けて入って来たのは、なんとクヴァだった。

「クヴァ…!?」

三人が警戒心を示すと、驚いた後、クヴァは申し訳なさそうに苦笑いした。

「今日は説得をしに来たんだ。メディケ、クラースを骨にかえした方がいい。

僕もエダムを失って初めて気づいた。

無理やり蘇らせたり、自分の感情で縛り付けておくことは、いつかお互いを不幸にするだけだと。

メディケ、最初は嘆いていただろう。蘇ったクラースが自分との記憶を覚えていない、蘇ったはずのクラースはクラースの姿をした別人なんだと。その通りだったんだ。

今が一番、君が教えた思い出話を蓄積して君の求めるクラースの姿になってきたかわいい盛りだとは思うが、愛が高まり別れた時のお互いの傷がこれ以上深くならないうちに別れた方がいい。

もっとも、僕が言えた立場ではないけど…

それと、研究のために渡したエダムの血を返してもらえないか?

きちんと弔ってやりたくなったんだ。」

あまりに切ない表情、後悔したからこその悲痛な訴えだった。

「やめろ…!やめろ…!うわあぁぁー!!!!」

クヴァの言葉を聞いたメディケは狂ったように暴れ回った。

「パパ?大丈夫?」

手を伸ばして来たクラースの手を、メディケは反射的に振り払った。

「あぁ…あぁっ…」

自分の行動に驚いたらしいメディケは、クラースに駆け寄り抱きしめた。

「ゾンビ化した弟を飼うようにしていた僕と、亡くなった息子の骨から息子そっくりの意志を持ったゾンビとして生き返らせる事に成功した君は状況も違う。すごい技術だ。

その子も今じゃ、君と一緒にいることを自分から望んでいるように見える。」

メディケにぎゅっとしがみつくクラースを見て、クヴァは最悪の状態を想像し、生み出されたゾンビとしてのクラースを哀れに思い、一筋の涙を流す。

「お兄ちゃん、だいじょうぶ?」

作られた存在だとは思えない、その優しさやぬくもりが、クヴァの涙をさらに溢れさせた。

「こんなにかわいい息子を、病気のせいで、君は亡くしていたんだね…」

当時のメディケを思い苦しくなると同時に、あんな扱いをした両親だったけれど自分に対する愛情は少しでも残っていたのかもしれないという小さな希望と、己の罪の重さがさらに強くのしかかり、クヴァの心をさらにしめつけた。


さまざまな病気を治すための研究虚しくクラースを亡くしてから、いつ死んでもおかしくない抜け殻のようになっていたメディケ、妻にも出て行かれてしまい、患者である町の人々は心配していた。

ある日から急に明るくなったと安心した時、隣には今のクラースが歩いていた。

皆疑問に思ったが、メディケのためならと誰もが暗黙の了解として見逃してきたと噂の続きで聞いた。

本当は見逃すことが正しいわけではないかもしれない、ただ、そこに意志を持って存在している以上、尊厳を無視してはいけないのではないかと、ウェルはそう思った。

甘いと言われてもいい、

「クラースを容認するにあたって、条件がある。

一つ目は、今のクラースは今のクラースとして、息子さんの代わりとしてではなく愛してあげてください。

二つ目は、もしクラースにゾンビとしての力や思考が目覚めたら、迷わずすぐに元の骨に戻すこと。

わかりましたか?」

いつもの優しいウェルからは想像できないほど、堂々とした強い口調、威厳に溢れていた。

「かっこいいだろ?俺の主君は。」

イクェスがそれでこそウェルだというように背中を押してくれる。

「これが、第一王子の風格、すごい…!」

アモルは初めて見るウェルの姿に胸をときめかせていた。


「よかったな、メディケ、クラース。

それと、僕から言おうと思ってた提案なんだけど、君の研究の力を、ゾンビ化した人を人間に戻す薬の開発に使わないか?

難しいのはわかってる。

僕が言えた口じゃないけど、これ以上理不尽に絆を引き裂かれたり、ゾンビに怯えて暮らす人がいなくなるようにさ。

僕に何ができるかはわからないけど、できる限り協力するから!

頼む!!」

クヴァは初めて土下座をした。土下座どころか、人に頭を下げるのすら初めてだ。

メディケは慌てたように、クヴァに顔を上げさせる。

「謹んでお引き受けいたします。

一緒に、研究していきましょう。クヴァさん。」

二人が手を取り合う姿とにこにこと微笑むクラースを見届け、ウェル達はその場を後にした。



外に出ると、キャラメル色の、太陽の光を受けてキラキラと光る髪をした少年がウェル達に駆け寄って来た。

「貴方様は!騎士団長、イクェス様!記念コインで見たことがあります!!」

息を切らしながら、興奮気味に少年がそう言った。

「俺のこと知ってるのか!?握手でもするか?」

自分のことを知っている事に気分を良くしたのであろう、得意げに握手を求める。

すると少年は喜びで顔を真っ赤にして、本当に自分のような庶民の出のものが手に触れていいのか迷いながら、そっと触れるとぎゅっとイクェスが握り返した。

イクェスの夜空の色を映し取ったような瞳見惚れていた少年が、

ふと後ろのウェルの姿をとらえ、ハッと思い出したように目を見開いた後、真剣な面持ちに変わる。

「俺の名はポエッタです。

国王ウェル様、騎士団長イクェス様、突然の無礼をお許しください。

俺の父と、国に関する事で大事なお話がございます!」

国王と言われ、まわりの人々が騒ついた。

この国の王や王子は、表立って顔を出すことをあまりしないため、首都の人々以外は国王が亡くなったことすら知らないものが多い。

今までウェルやイクェスが気づかれなかったのもそれが理由だ。

「ポエッタくん、ここでは目立つ、場所を移そう。」

ウェルがそういうと、しまったというようにポエッタは青ざめる。

アモルと同じくらいか、少し年下くらいだろうな、表情がコロコロ変わるかわいい子だ。

心配するポエッタとは裏腹に、三人はポエッタに良い印象を抱いていた。


密会場所として、ヴィヌムのバーを選んだが開店時間前だ。

「ヴィヌム!開けろ!いるんだろ!」

いきなりドンドンとイクェスが扉を叩く。

イクェス以外、誰もがこれはまずいのではないかと思った矢先、ギィぃと不機嫌そうな音を立て、ドアが開いた。

「イクェス、まだ開店時間前ですよ?読めませんでしたか?」

長い髪を下ろしたままのヴィヌムが出てくる。

絶対怒ってる…誰もがそう悟った。ただ一人を除いて…

「読めるさ!怒ったか?」

イクェス…嫌な予感を感じた。

「いえ、怒ってませんよ?少々やんちゃな子犬だとは思いましたが。」

「邪魔するぜ!」

「言葉の通りですね、はぁ、いいですよ。」

二人のやり取りにヒヤヒヤしたが、ヴィヌムが折れていつもの様子に戻った。

四人で店内に入ると、ヴィヌムの目がポエッタに釘付けになった。

「アウラ…?」

その表情は、ヴィヌムの仮面が剥がれた素の姿のように思えた。


「アウラは、俺の母の名前です!もしかして、ヴィヌムさん、ですか…?母がよく話してくれました!

俺はポエッタっていいます!」

嬉しそうにポエッタが話すと、ヴィヌムの表情が信じられないといったものに変わる。

「あの子は、アウラは、無実の罪で死刑になったはずでは…

でも、しかし、ここに…その瞳も髪もよく似ている。」

その瞳は暖かく優しげだった。

「失礼しました、取り乱してしまったようですね。

開店時間前ですが店主として、おもてなしいたしますよ。」

四人分の椅子を引き、グラスを手に取る。

「よろしければ母のお話も、させていただきますね。」

ポエッタの笑顔は、アウラの面影をよく残していた。



「俺は、楽器職人兼警官の父、とは言っても警官はつい最近まで知らなかったのですが、そんな父と、父が一目惚れして話を聞き、本当に無実の罪だと判断し、死刑を執行されずに妻として家で匿われる事になった母から生まれました。

母は、外に出る事はできませんでしたが、父の楽器の音色で旅をした気持ちになると、父の演奏を愛していました。

妻にしてくれと言ったのも、母の方からだったそうで、俺が十の時に病気で亡くなるまでとても仲の良い夫婦で、ちょっと事情は変わっているけど、幸せな家庭でした。

ヴィヌムさんのことは、無事を伝えたい友人だと、いつも話してくれました。私の事で心に傷を作ってしまったであろう事も、謝りたいと…俺が会う事があったら、ずっと大切な友人だと思っている、と代わりにそう伝えてくれと言われました。」

ポエッタが話し終わると、ヴィヌムはふわりと笑った。

「ありがとうございます、ポエッタ。

貴方のおかげで、今やっと十数年の時を越えて、あの子の無事と思いが届きました。

ふふっその名前も、きっとお母様が名付けたのでしょう?」

突然姿を消したかと思ったら、こうして現れるなんてアウラらしいと思いながらポエッタに問いかける。

「はい!旅と美しい言葉や音楽を愛する母がつけてくれた、大好きな名前です!だから、俺は将来吟遊詩人になって、誰かの旅物語を歌に乗せて伝えていく事が夢なんです!」

ポエッタは、名前の彫ってある楽器を誇らしげに大事そうに抱えた。

「いい夢ですね、さすが旅人アウラの子です。」

旅に出て、しばらく姿を現さないかと思ったら、突然ふらりとこの店に帰ってくる。

帰って来たかと思えばまたすぐにどこかへ羽ばたいてしまう。

さまざまな場所の秘密を解き明かして、いつか重要秘密に触れて逮捕されてしまうのではないかと心配して、ある時から一切連絡も取れない。店にも顔を出さない。

風の噂によると、死刑になったというじゃありませんか。

あの子はいろいろなものに興味を示すけど、悪用するような子じゃない。

それなのに、ついにやってしまったかと、私は随分あの子の冒険譚を楽しみにしていた事に気づくと共にその頃にはもう居なくなってしまうなんてずるい人だと思った。

でも、もういいんです。許して差し上げましょう。

貴女が少しでも長く生きて、幸せだったのなら、それにこんなにかわいい子を私のもとに遣わしてくださったのですから。



「ここからが、ウェル様やイクェス様へのお話です。

父は警官と言いましたが、死刑を宣告された人々の遺体が捨てられる場所の管理人をしていたんです…」

悍ましい光景を思い出したのか、ポエッタは震えて今にも泣き出しそうだ。

ウェルが肩を抱くよりも早く、ヴィヌムが優しく肩をさすった。

ポエッタは顔を上げて、深く頷いた後、先ほどよりも声を張って続けた。

「父の一族は、跡を継ぐ際に初めてその秘密と歴代の資料が渡されるそうで。

ゾンビ騒動も、この件と深く関わっています。

ゾンビの正体は、昔、この国で戦争があった時に開発された生物兵器の研究の残骸です!

ある時から、死刑を言い渡された人間は生きたままそこに放り込まれることになっていたので、数がどんどん増え続けていたんです!」

生物兵器は不可能とされていたはずだが…第一王子のウェルや、騎士団長イクェスでさえ知らない秘密に驚きを隠せなかった。

「この秘密は、その管理を極秘で任された父の一族と、生物兵器研究に関わったウェル様の祖父にあたる人物しか知りません。研究院達は、自分で開発したゾンビに襲われたり、戦争を起こした罪に問われ、死刑を宣告されたり、高齢で亡くなられたり、もう誰もおりません。」

ポエッタは、大量の資料を広げてみせた。

「俺の父が時々行き先を明かさずどこかにいくのを怪しんで、あとをつけてたどり着いた先で、老朽化でしょう。

檻が壊れ、ゾンビ達が世に放たれ、俺がついてきていた事に気づき命からがら俺を守った父は、この資料を俺に託して、そのまま…」

ポエッタもまた、ゾンビによる被害者であり、突然重大な役目を背負わされてしまったのだ。

「わかった!それで、俺たちは何をすればいい?」

ポエッタに頼まれるより先に、ウェルが尋ねた。

「よろしいのですか…?」

自分で頼もうとしていたとはいえ、自ら危険を顧みず親切にしてくれるウェルにますます頭が上がらない思いで尋ね返す。

「祖父上の罪、王家の罪は、俺が背負わなければならない罪だ。

国王亡き今、俺が次の王として…!」

真っ先に城に攻めてきたのも、最初のゾンビ達は王家への憎しみが強いのだろうな。

「俺も、王家の騎士団長、お前の自慢の騎士として共に背負おう。」

当然だろとイクェス。

「僕にも重荷を分けて。」

水臭いよとアモルが続く。

「ありがとうございます!皆さま!この御恩は一生忘れません!!

あの、俺にも何か出来ることはありませんか…?」

せめて何か力になりたいとポエッタは尋ねる。

「それじゃあ、ゾンビが誕生するまでの研究の資料を、ゾンビ化した人をもとに戻す研究をしている友人へ譲ってくれないか?

それと、戦いの時に食べる飯を作ってくれたら嬉しいなーなんて、どうかな…?」

ウェルが遠慮がちに頼むと、ポエッタは勢いよく頷いた。

「それでは、キッチンをお貸ししましょう。いらっしゃい、ポエッタ。」

ヴィヌムは素早く髪を束ねると、ポエッタをキッチンへ手招きする。

「王家の秘密は…」

ウェルが売るなよと釘を刺そうとしたが、ヴィヌムはそう言うより早く。

「当然です。」

とウェルの目を見て言い切った。



資料をメディケ達に渡しに行き、武器の手入れをして、ポエッタとヴィヌムが作ってくれた飯を受け取って準備は整った。

帰る場所を無くしたポエッタは、ヴィヌムの店で住み込みで雇われる事で話がまとまったそうだ。

「親玉は一番最初に開発されたゾンビ、テネブエです。

奴は厳重に監禁され、脱走こそしていませんが、他のゾンビより力が強く、噛まれなくても傷口に僅かに触れたり、長時間その場にいる事や、返り血を大量に浴びてしまうとゾンビ化してしまいます。

他のゾンビが人間をゾンビ化させられるのは、一人づつなのに対して、奴は制限がありません。

奴さえ…どうにかできれば…

どうか、お気をつけて。」

「こちらをどうぞ、私の特製ブレンド、灼熱に溺れる明けぬ夜のカクテルです。絶対に試飲なさらぬようにお願いいたしますね。」

緊張感に満ちた中、二人に見送られながら、ゾンビ退治へと向かった。



「運命を共にしよう。

イクェス、アモル。」

その声は決意に満ちている。

「絶対生きて帰るぞ。ウェル、アモル。」

その瞳は勝利だけを見つめている。

「初めて会ったあの時からずっと信じてるよ。ウェル、イクェス。」

その心は与えられた愛だけを感じて。

「行くよ…!!」

ウェルの号令を合図に、三人は先の見えない暗闇へ飛び込む。


「行くぜ!アモル!」

ヴィヌムからもらった酒をテネブエの周りにばら撒く。

「OK!!」

酒が床に落ちるタイミングを狙って数発の弾を放つ。

たちまち引火して火の玉が弾ける。

「うまいもんだな!」

「誰に教えてもらったと思ってるの?」

軽口を叩き合いながらもコンビネーションは抜群だ。

「そっち行ったぞ!ウェル!!」

「任せて!!」

暴れるテネブエ、タイミングを見計らって、首のど真ん中にウェルの家に代々伝わる大槍を突き刺した。

痛みで狂ったゾンビの標的は、ウェルに定められた。

指一本一本が別の生き物のように違う動きで襲い掛かってくる。

それら一つ一つを、腰の剣で防ぎながら小さいが確実なダメージを与えていく。

「次、お願い!イクェス!!」

「わかった!さすがだな、ウェル。」

「騎士団長の鍛錬相手であり、護身術を指導してもらったからね。」

幼少期からの阿吽の呼吸で、交互に飛び回りテネブエの目をくらませる。

「たあっ!!」

示し合わせたように、同時に両目を傷つける。

「行けっ!!!!」

アモルの銃弾が脳天を真っ直ぐに貫いた。


「ぐぎゃあああぁ…!!!!」

ゾンビの断末魔の叫びが響く。

とどめをさせたか、三人ともそう思った矢先、飛び降りるイクェスとウェルの下に針山のように長い指が出現した。

イクェスは歴戦の感で身を翻してかわした。

アモルはウェルの方に銃弾を放ち援護するが、くねくねと動く上、少し間違えばウェルを打ってしまうプレッシャーがあった。

「くっ…!!」

ウェルは大きく振りかぶって、薙ぎ払うが、その拍子に、剣がするりとウェルの手から抜けてしまった。

疲労と、普段は槍を使っているから出た誤算だろう。

まずい…そう思った時、ウェルは拳でゾンビを殴った。

安心したのも束の間、一つの指がウェルの肌をかすめた。


「ウェル…!!!!」

アモルは怒りに任せ、詰め替えたばかりの銃弾を一気に使い切る勢いでテネブエの懐に飛び込んだ。

「大丈夫か!ウェル!」

イクェスはアモルがやりたい事を察して、テネブエの気を引いた。

「大丈夫!傷はなんともないよ!」

ウェルは蹴りを入れて自力で抜け出した。

「ウェル!行くよ!」

アモルはあっという間に距離を詰め、首から槍を抜き取り、至近距離での銃弾をお見舞いした。

「ありがとう!アモル!!」

アモルが投げた槍を受け取り、ウェルは武神のように踊るように斬撃を加えた。

「ウェルに傷をつけた罪は重いんだぜ!!」

イクェスはウェルが落とした分の剣も拾い、アモルが広げた首の傷を目印に切り裂いた。

「二刀流、憧れてたんだよなー!!」

イクェスは修羅のようだった。

テネブエがだんだんと形が保てなくなってきている事に気づいたアモルは、金の銃弾の雨を降らせた。

そんな状況でもアモルは女神のように美しかった。

「ヴヴ…」

ドサリと音を立てて、テネブエは崩れ落ちて灰になった。


「手強い相手だった…」

イクェスが安心で全身の力が抜けたようにヘナヘナと座り込む。

「やったね、僕達で!!」

アモルがハイタッチを求める。

ウェルとイクェス手の暖かさに、生きている実感と幸せを感じた。

「よかったー!ありがとう…イクェス…アモル…!」

ウェルは感動のあまり号泣しながら二人一緒にきつく抱きしめる。


「こんなところに長居もなんだし、疲れたけど帰ろうか!」

「うん!」「ああ!」

突入の時と同様に、ウェルの号令に二人の返事が続く。

帰り道の足取りは軽やかに、三人でくだらない事で戯れ合いながら帰路を辿った。


「帰ってきましたよ!ヴィヌムさん!!」

バタバタとドアを開け、走ってくる。

「はいはい、今行きますよ。

本当にアウラにそっくりなんだから。」

普段なら品がないと少し注意するところだが、不思議と腹は立たなかった。

「私も、随分絆されたものですね。」

自分に呆れたように呟くが、嫌ではない、むしろ心地よさすら感じてしまう自分に笑ってしまった。


「ただいま!」

ウェルがニカッと笑うと、

「おかえりなさい」

とポエッタとヴィヌムが温かく出迎える。

「おかえり、か。いい言葉だな。」

ヴィヌムは感慨深そうに呟いた。

「勝ったぞ!!

ポエッター!ヴィヌムー!」

イクェスが勢いよくポエッタに抱きつく。

「すごいです!

いつか、このお話を吟遊詩人として歌わせてください!!

太陽のような偉大な王と星空のような勇敢な騎士と、虹の守護天使が、この国を救った冒険譚として!」

感激した様子で、ポエッタがキラキラと目を輝かせている。

「だってウェルとイクェスと僕だもん!なんだってできるよ!」

二つ名に躊躇するウェルとイクェスとは違い、アモルの声は興奮して、はしゃいでいる。

「おや、それはいいですね。ぜひ、私の店の専属吟遊詩人になっていただきたいものですが、あのアウラの子ですものいつかどこまでも羽ばたく日がやってくるでしょうね。」

ヴィヌムの目が懐かしむように細められる。

「えへへ、今はまだ、このお店のお手伝いをさせてください。

吟遊詩人になるためのお勉強がんばります!」

ポエッタは未来を夢見て、せっせとヴィヌムの店のお手伝いをしている。

「いい子ですね。お給料を上げましょう。

素直で働き者なところは、アウラに似ていないです。」

ヴィヌムはくすくすと小さく笑った。


「何かお祝いを、ご馳走しますよ。」

ヴィヌムが微笑むと、ウェルは申し訳なさそうに立ち上がった。

「今日は、疲れたから、気持ちだけ受けとらせてもらうよ。

ありがとう、ごめんね。」

そう言い残して、背を向けて外に出ようとするウェルを、イクェスとアモルは慌てて追いかけた。

アモルはしばらく歩いてから、ウェルの呼吸の感覚が短くなっているのを感じた。

「ウェル、お前なんか隠してんだろ?」

足早にポエッタ達の元から去ろうとしたウェルに違和感を覚え、イクェスが尋ねる。

「はは、イクェスには敵わないね。

うっ…」

苦笑いをした後ウェルはうずくまった。

「ウェル…まさか…」

アモルが胸元をはだけさせると、

テネブエに受けた傷から、煙がのぼりウェルの体が乗っ取られ始めていた。

「国王ウェルとして命じる!我が騎士イクェス、俺を殺せっ…!」

次の瞬間ウェルの体は闇に包まれた。

「俺に…お前が殺せるわけないだろっ…!!

たとえそれがお前の1番望む命令であったとしても!」

イクェスがウェルを抑えようとするが、ゾンビ化によりさらに力が強くなったのに加え、もとの体格差が大きく、うまく立ち回る事ができず、一見互角のようだが押されてきている。

アモルも援護しようと試みるが、先程の戦いの疲れからかうまく体も動かず、焦りと震えで弾もうまく詰められない、

次の瞬間イクェスがウェルに首を噛まれた。


「くそっ…!……すまない…アモル…俺が決断しきれなかったばかりに…俺たちを…殺せ…!頼んだ…!!」

イクェスの声が虚しく響き、ウェルと同様に飲み込まれる。

イクェスが初めて自分の意志を貫きウェル命令に反くことができた結果が、本当の友人としての始まりの祝福を告げず、共に死にゆくさだめを歩ませるとは、なんて皮肉なんだ…

その瞬間、アモルを激しく駆り立てた感情はなんだったのだろうか。それは、絶望でも困惑でも怒りでもなく、ただ、それよりも強く…


「まったく、しょうがない…お兄ちゃん達だね、

二人が罪を重ねないために、僕が、終わらせてあげるから。」

ニ発の乾いた銃声が、命の終幕を告げる。

「っ、愛してたよ。君たちのこと。本当に、すごく。」


アモルが駆け寄ると、二人は折り重なるようにして息絶えていた。

「大好きだよ、ずっと愛してるよ、ウェル、イクェス、ねぇ起きてよ…僕にもっと教えてよ…まだまだ伝えきれてない思いが、二人とやりたい事が、返したい恩が、たくさんあるのに…もっともっと、伝えておけばよかった…僕と出会ってくれてありがとう。

ありがとうも愛してるもしつこいと言われるくらい何百回も何千回も何万回も伝えさせてよ。

ずっとずっと一緒にいたかったよ…

ウェルとイクェスさえいれば、そこが楽園なんだって、他に何もいらないって思ってたのに。」

アモルは二人に覆い被さるようにして泣き崩れ、いつまでも泣き続けた。


ウェルとイクェスの体から白い花びらのようなかけらが青く澄んだ空に舞い上がり、きらきらと虹色に反射して、撫でるようにアモルを包み込む。 

悲しくなるほど、美しい光景だった。

神様が実在するのなら、なぜ僕達はこんな運命に飲まれてしまったのだろう。

神様が実在したとして、僕が唯一感謝したいのはウェルとイクェスに出会えた事だ。


今僕が後を追ったところで、きっと二人と同じ場所へは行けないだろうし、ウェルもイクェスもそれは望まないから、嫌われてしまうに違いない。

だから、僕のすべきことはもう決まってる。

ねぇ、そうでしょ?

ウェルお兄ちゃん、イクェスお兄ちゃん。

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