雪だるまが砕くのは……
『昨日未明、突如街中で大量に出現した雪だるまですが、近くを歩いていた女性が雪だるまに取り込まれ、低体温症で病院に救急搬送される、と言う事件が多発し、恐怖の声が――』
「う~ん……やっぱ、なんか怖いな。」
テレビを付けた途端に流れ始めた臨時ニュースに、思わずブルリと身震いしてしまう。
被害者は、彼氏と歩いていた若い女性ばかりだし……一応、聞いてみようか。
付き合い始めて3年程になる彼氏に、電話をかけてみると、数コール後、声が聞こえて来る。
『――もしもし?』
「あ、衛?あの、今日のデート、どうする?」
『どうするって、何が?』
「いや、例の雪だるま、若いカップルの女性ばっかり狙われてるって話じゃん」
出来れば、騒動が終息するまでは、外出も控えたいんだけど――
『大丈夫だって。 いざとなれば俺が守ってやるし、久々のデートなんだ、楽しもうぜ』
――ダメか……
「ちゃんと、手繋いでてよ?」
「わかってるよ。 こうしてたら、遥を拐いようが無いしな」
そう言って、いつも以上にしっかりと手を繋いで歩く。
「もうすっかり冬だねぇ。 あ、年末年始どうする?」
「……まずはクリスマスだろ?」
鼻で笑いながら言ってくる衛。
いや、クリスマスはもう予定しっかり決まってるじゃん。
そろそろ年末年始も予定決め始めたいのに……
――いつもそう。
私だけ心配して、直前で慌てて、結局適当に過ごす。
まぁそれでも、楽しかったらいいんだけど。
「お?あれ旨そう!ちょっと待ってろ!」
「えっ?ちょっと、衛!」
近くの売店に目を付けた衛が、手を離して行ってしまう。
もぅ!離さないでって言ったのに――あれ?
何、ここ?
真っ暗で、寒くて、それに、身体が動かな……えっ?嘘っ!?まさか雪だるまの――
幸い、呼吸はできるようだけど、どんどんと……なんだか、心が冷え切っていくような、嫌な感覚に包まれる。
なんで、いつも私が我慢するの
なんで、ちゃんと話聞いてくれないの
なんで、私は
なんで、
なんでナんでナンでナンデ!
もう
疲れちゃったな
このまま目を瞑ってたら――
――
――か
――るか
「――遥!」
「……え? まも、る?」
「大丈夫か!? ワリぃ、俺、手、離しちまって……」
そのまま、ぎゅっと抱き締められると、あんなに冷え切っていた心が、じんわり暖かくなったように感じた。
たぶん、もう大丈夫。
雪だるまから、何度
――リア充ども、心を冷やし切って、くだけ散れ――
って、言われても。
今なら衛を、信じられそうだから。
新手の『リア充爆発しろ』でした(笑)
ジャンル選びがムズイ……