♣序章♣
中学3年生7月某日。
翔の国でも端近く、某秘境国との境近くの駅前駐車場に到着した。
翔国内ではトップ偏差値3校の一つ。私立の学校説明会に父母と車でやってきた。
これから始まる受験の前に高校について知るのはとても役立つし頑張るきっかけになれば良い云々は両親のセリフだ。あまり関心は無かったが、クラスメイトも何名か受けるらしいし共学で偏差値的にも悪くないので付いて来たのだ。
駅から学校まで小高い丘を説明会に向かう人が連なっている。
横ではママが「学校に行くのに坂を登るなんてドラマみたいだねー」と呟いている。
坂を切り返し登っていくと木々に囲まれて参道のようだ。部活帰り風の高校生が楽しそうに擦れ違いで帰って行く。10分も歩くと4,5つの建物と体育館風建物が見えてくる。
今度はパパが、「大学みたいな空気が流れてるねー。でも勉強より遊びが楽しそうだなこりゃ」と話しかけてくる。体育館での説明会前に、時間があるので少し奥まで見てみることにする。近場の駅に向かうバス停や教室棟などゆとりのある土地と流れてくる森林の空気に、これが高校か…と思わずぼーとしてしまう。
体育館に戻ると先生と坂道系の正統派JKがこちらですよと案内してくれる。整った綺麗な顔立ち、健康的でハキハキと笑顔で対応する様を見ていると、パパが「育ちの良さそうなお嬢さん方が多いなー。」とか「大事に育てられてる感じがするねー」と話している。ママも「うちだって・・・・」とか楽しそうに話してる。これが高校か…テレビの学園ドラマのようで気持ちが盛り上がる。確かにJK先輩方の笑顔が眩しい。NHKで(再)放送してる学園物の〇ブライブ!が頭に浮かぶ。ここに入ればあんな楽しそうな高校生活が待っている・・・のかもしれない。
体育館に入る前に願書販売210円の表示があり、買うか?と尋ねられウンと答えた。
願書と学校案内が入ってるので読み応えはありそうだ。中に入ると大勢の参加者に圧倒される。1500名くらいは居るのだろうか。案内された場所のパイプ椅子に3人並んで座り、説明会開始まで時間があるので学校案内を読みながら待つ。勉強・部活・寮生活と楽しそうな高校生活が写されており心が弾む。高校生活は…勉強もあるだろうけどリア充にもなれるかもそれない。でも心配はある。親は否定するが僕はかわいく産まれたが背も高くないしイケメンでも無いんだよなあ。
説明会が始まった。本学の学院長(校長)らしい。暫くはテンプレ話かなと思ったが違った。在校生が希望して受験生にエールを送ってくれるとのこと。
<フレーフレー受験生!フレーフレー受験生!フレーフレー受験生!>
学ラン姿の応援団長の周りにはチアガール。暑苦しいはずの応援団でさえリア充に見える。
そんな先輩方が眩しい。
その後、学院長から学校説明が始まった。
本学は遠方からも来る方が多く、通学に2時間くらいは普通です(ふんふん:多分多くの人が聞きたいのか、周りの心の声が聞こえるようだ)。新幹線を使って1県どころか2、3県隣から来る方もいます。新幹線を使わずに鈍行で来てる方も多いです。全世界からの学生を預かっています。通えない人は寮があり住んでる方もいますが、残念ながら人数には制限があり遠方の方が優先となっています(ほほー)。
あと本学の学生は、とても優秀で論文なども提出して活躍してる人もいます(へー)。本高校に入ると本大学のネットワークに組み込まれ、余程のことが無い限り100%本大学へ進学です(ぅえ!・・・)。
説明会の途中なのに固まってしまった。
この高校って大学受験無い学校なのか!他学への受験者も少ないのか!
隣のパパが、チラリチラリと何度かこちらを見て来た。さすがに私語は無い。
自分は知らなかったが、パパも知らなかったのかな?行くつもり有るかの確認か?
一応行けるだけの貯金は有るよとは夜にママと話していたが私学って結構高いだろ、しかも大学まであるぞ?。
某チャラいと言われると運動部監督が話していた青春大学の付属高校だって、協賛金とか寄付金でお金使うから授業料だけじゃないし周りが金持ちで人付き合いが大変だとかママが話してたの知ってるぞ?。
1時間程度で学長の話は終わったが、その後に学長が何を話してたかは良く覚えていない。
学校の部活風景も観て行ってくださいとのことで体育館を出て、テニス場、野球場、サッカーグラウンドの横を通り校舎に向かう。部活動では爽やかな汗を流してる高校生が居たが、先ほどまでの眩しく見えていた学園生活も少しくすんで見える。茶道部の場所ではパパが「お父さんこちらですよ。」と言われてそのまま付いていく。パパは嬉しそうだ。お茶を飲みながら「いい学校だな。」と声を掛けてくる。確かに「そうだね。」と答えたような曖昧な記憶がある。
両親2名が楽しそうにしてるのを横目に苦悩があった。この爽やかで眩しく見えた高校生活は受験が無いからなのか。だけど…だからこの学校は行きたい高校では無かった。
なんだか落ち着かない気持ちになって来て、一人で校舎を色々と見学する。化学の実験室や情報の教室などを横目に綺麗な学舎を巡りながら、でもいい学校だなクソ―と思う。
1時間位で帰宅する人が多いのか人が減ってきた。校舎の1階には購買部があり学園グッズを販売していた。ママから「頭の良くなるパンが売ってるよ~。手提げグッズでも買おうよ。」と言われるがどうでも良いし要らないと答える。
「何を食べて帰ろうかな~お寿司かなあ?〇〇〇△△△□□□□・・・・・・・・・・・・・」
能天気で止まらないママの話を上の空で聞きながら、帰宅後2人にどう伝えれば良いかで少し悩んだ。
本物語は、誕生から大学まで続く世間で良くある受験話だ。
次から本話スタートです。
反応を見てアップを検討します。