6.分の悪い作戦
「俺が魔法陣を止める」
その言葉は誰も予想していなかったものだったのか全員が目を丸くしていた。
いや、ただ一人、マコトが発現するきっかけを与えたミランダだけは面白そうにこちらを見ている。
「待ってください、マコトさん。魔力のないあなたでは魔法陣をどうすることもできないのでは?」
「方法はある。クオリア、こないだ見せてくれたペン貸してくれ」
「ペンって"魔法の羽ペン"のこと?それはいいけど、まさかあれで書き換えを行うつもり?」
「そうだ」
クオリアの言葉にマコトは肯定する。
あれはペン先に魔力を集めて文字を書くものだ。術式魔法とは指先から魔力を流して、魔法を発動するうえでの術式を書くもの。
つまり、似たり寄ったりしたものなので出来るはずだ。
アシッドバーンは苦言を呈する。
「無茶としか言いようがありませんね。そもそも、あなたに魔法陣の書き換えができるのですか?」
「やったことはないが魔法陣を見ればどういった魔法の類なのかはすぐわかる。だったらあとは術式の文字を多少いじるだけだ」
簡単に言ってみたもののこれはかなり難しい。
術式自体は『識別』を使えば、問題ない。だが、完成されている魔法陣を書き換えるのは破壊するのよりも難しい。
しかし、おそらく破壊できないように細工されている魔法陣をどうにかするには書き換えを行うしかない。魔法師を連れて行ってもそもそも術式魔法が出来ないのであれば意味がないし、説明しながらだと時間を食う。
つまり、魔法陣の仕組みを理解できるマコトが行くのが一番手っ取り早いということだ。
「マコト、本当に出来るのか?」
「わからん、さっきも言った通りやったことがないからな」
術式の書き換えとは、簡単にいうとノートの文字を消して新たに違う文字を書くこと。
ただ、今回は全文を消すことは出来ない。破壊できないように細工されている(あくまで可能性だが)ので一部を書き換えをする必要がある。
しかも、術式が問題ないように前後の文と合わせないといけない。
誰も何も言わない。
俺の考えが現実的なのかを考えているのだろう。
「それでもやらなければ、死人は出る。ならば、そ奴に任せてみるのもありかもしれんぞ」
意外にも最初に賛同してくれたのはドノファンだった。
「こうして話しても時間の無駄じゃ。可能性があるならばそこにかけてみるべきじゃろう」
「そうですね。それにどのみち魔法陣には行かなければなりませんし、行く最中に別の案があればそちらに変更すればいいでしょう」
「少し待ってほしい。ドノファン殿、レイブン殿。本気でおっしゃっているのか?今日会ったばかりの人間に国の存亡をかけろと?」
二人の発言に待ったがかかる。まぁ、当然といえば当然だな。むしろ最初に賛同してもらったことが驚きだ。
「では、他に何かありますか?こうしている間にも刻一刻と時間は過ぎていきます。どんな作戦を立てるにも時間との勝負は明白、ならば少しでも動き出しが早い方がいいでしょう」
レイブンの言葉で皆一応に頷く。
正直、集まるのと話し合いで時間をそれなりに食っている。早くしなければ、それこそ手遅れになってしまうのだ。
「マリネット、騎士団で編成した部隊にすぐに連絡。北門前に集まるように言ってくれ。アシッドは物資の手配だ」
「「は‼」」
二人が動こうとした時、扉が勢いよく開く。
「大変です‼南門から敵襲です‼」
「何!?」
事態が切迫しているというのにさらに事態が悪い方向に進んだ。
「火が人の形をとっており、数がおよそ千。あと十分もしないうちに防衛線を築いている兵士たちと接触します」
「避難誘導の人員の半数を南門に向かわせろ。残る者には周囲の警戒を怠るなと伝えておけ」
「は!」
ドノファンがすぐに指示を出し、兵士は立ち去っていく。
しかし、まずいことになった。
「アシッド、これはどういう魔法かわかるか?」
「土魔法のゴーレムと似たような類でしょう。水魔法が使える騎士団員をすぐに向かわせるべきかと」
「なるほど・・・マリネット、編成した部隊を南門に送れ。元々今回の犯人のために編成した部隊だ。水魔法を使えるものも多い」
「わかりました、ですがそれですと北方面に向かわせる騎士がいません」
「南門には俺が向かい、指揮を執る。アシッドとマリネットはマコトと一緒に北へ向かえ」
ヴァイオスは南門に向かうべく、マリネットは部隊に伝達をおくるため部屋を出ていく。
残りの人たちも自分たちのやることをするべく、部屋を出ていく。
マコトとクオリアも一旦屋敷に戻るために席を立つ。
「少し、いいでしょうか」
だが、それを残っていたアシッドバーンが止める。
「あなたには魔力はない。見た限り戦う力もない。さらに言うならあなたはクオリア王女に仕えているがこの国出身ではない。なのに何故この国のために危険なことをするのですか」
不思議そうにマコトを見ている。
確かにその通りだ。マコトが手に入れたスキルは戦いを目的としたものじゃない。わざわざ、死ぬ可能性のあることに首を突っ込む必要もない。
だけど、逃げる気はない。
「仲間が死ぬ可能性あるのにそれを放って自分だけ逃げるなんて俺には出来ねぇよ。だからといって何もしないで死ぬなんてまっぴらごめんだ。死ぬならせめて何かしら行動をしての方がいいと思うだけだ」
せっかくの第二の人生だしなと暗に含めておく。
二度目の人生を簡単に終わらしてたまるかって話だ。
そういうとマコトは部屋から出た。
隣ではクオリアがなぜか笑っていた。
「おいどうした、なんか変なこと言ったか?」
「いいえ、変なことは言ってないわ。ただ・・・」
「?」
「マコトはマコトだなぁ~って思っただけよ」
「?意味が分かんねぇ」
クオリアはなおも笑いながら屋敷へと戻っていくのに対して、頭に疑問符を浮かべるしかなかった。
「あっ、そうだ。一つ頼みごとがあるんだがいいか?」
「何かしら、どんな無理難題でも問題ないわ!」
自分のやることがないせいか、俺の言葉にとてもよく食いついてきた。
頼もしいと思いつつ、マコトは頼みごとを告げる。
頼み事を聞いた後、クオリアは深くうなずいた。




