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異世界だろうが教師の在り方は変わらない  作者: 物語 紡
6時間目 それぞれの話1
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53/160

3.暗闇で過ごす者3

 真夜中、外には誰一人としていない中、人影が一つあった。



 暗殺者"暗闇"である。

 男は対象が住んでいる、屋敷へと着いた。

(ここが対象が住んでいる屋敷だな。一度確認していたとはいえまじかで見るとかなりでかいな)



 結局、俺は依頼を引き受けていた。

 別に話に同情したとかはない。

 王族暗殺のせいか報酬が破格だったために引き受けたのだ。

 ・・・もう一つ、理由がないわけではないがそれを誰かに伝えることはないだろう。



 たくさんのある屋敷の窓から侵入し、部屋に入る。

 ゆっくりと扉を開けて、廊下に誰もいないか確認する。

(・・・誰もいない。下調べした通りか)



 この屋敷に住む王女は魔女の血縁者らしく町の住民や貴族などから煙たがれている。そのため護衛兵などはいない。屋敷にいるのは王女と仕えているメイド一人のみ。

 メイドに関しては特に問題はなさそうだが問題は王女の方だ。



(魔法の才に秀でていると聞くが、いか程のものか)

 噂では街一つ滅ぼすほどの魔法を使えると聞くが、魔女の血縁者なせいで噂に尾ひれがついているだけの可能性が高い。

 なぜなら、王女がこの国で魔法を使ったことなどないのだから。

「ふん、噂だけで人を判断するなど滑稽なことだ」

 ただ王女がいることで街の人間が不安を抱えていると言った依頼人の言葉自体は嘘ではなかったようだが。



 警戒しつつ廊下を歩いていると人の気配を感じる。

 暗殺者たるもの、気配に鋭敏でなければ生きてはいけない。

 対象を殺すときでも逃亡を図る時でも人の気配を探れなければそれだけで不利なのだ。特に暗殺者とは闇に紛れて襲うので必然的に身に付けるべき技術の一つだ。



 気配がある部屋へと着いて、そっと扉を開けるとそこには机に向かって何やら書いている人物がいた。

 男は後ろ姿のその人物を注視する。

(性別は女、座っているが座高から身長はおそらく百四十前後、白髪・・・)

 まず間違いなく、対象である第四王女クオリア・ラインハルトだ。



 音を立てずに部屋へと入る。

(しかし、こんな若いに暗殺されるとはな・・・)

 同情の気持ちが多少沸くがすぐに振り払う。

 対象を殺す為に一歩近づき、腰に携えているナイフに柄に手をかける。



「どちら様かしら?」

 クオリアは振り返らずに声をかけてくる。

 男は少し背筋が汗をかいた。

 今まで自分の気配に気づかれたことなどで声をかけられるなんてことは初めての出来事だ。

 驚いて硬直している間に少女はこちらを振り返り、視線を向けてくる。



「ごめんなさいね。立場上、侵入者とかを警戒する必要があって。私の部屋の扉を開けると私が知覚できるように魔法をかけているのよ」

「・・・なるほど。魔法の才があるとは聞いていたがここまでとはな」

 事前に知っていたのにそのための対策などをとらなかった自分の落ち度だろう。

 魔法を使う時点でこのぐらい予測すべきではあった。



「だが、護衛がいないことには変わりない。戦闘は得意分野ではないが貴様を殺せば依頼は達成だ」

 腰からナイフを抜き取り両手に構える。



 王女は手を突き出し、魔法を放つ体勢をとっている。一瞬の静寂が訪れた後に二人は動き出した。

 男が動くのとクオリアが手から魔法が放たれるのはほぼ同時だった。

(・・・確かに魔女の血縁者と呼ばれるだけあって魔法の威力などはすごいが如何せん単純すぎる。所詮、戦いを知らぬ少女と言ったところか)

 そもそもこんな屋内ではクオリアが魔法を十分に発動することは出来ないのだが、魔法師ではない彼にはそこら辺のこと彼には分からなかった。

 魔法を躱した後、足払いをかけてクオリアを倒し腹の方に乗っかる。

 あとはその首をナイフで掻っ切れば終わりだ。

 そう思って、ナイフを首に向けようとして・・・男は動きを止めた。



「なんだ、その目は」

 クオリアは真っ直ぐ男のことを見てくる。

「死ぬのが怖くないのか」



 気づけばそう尋ねていた。

 今まで殺してきた者たちは一様に恐怖などに支配されていた。稀に怒りを持っていた者はいる。自分で自分の暗殺を依頼すると言った例外もいたがそのどれも今の王女のような目はしていないかった。

「死ぬのは怖いわ」

 俺が困惑していると先ほどの問いかけにクオリアは答え始めた。



「だけど、それ以上に後悔の方が大きいかしら。夢半ばで死んじゃうし、何より私に仕えてくれている彼女に申し訳ないから」

 彼女とは、おそらくこの屋敷の唯一のメイドのことだろう。

「悔しさとか悲しさとかはあるけれど、自分の死が迫ってきてたら目をそらさずしっかり見据えるべきだと私は思っているから。だから、私は目をそらすことだけはしない」

 その目には意思を感じられた。強い意志が。



 ナイフを首に当てているのに強い視線を向けられることに戸惑っていると、背にある扉が音を立てて開けられた。

 俺のそちらに視線を向けるときには首元に刃物が迫っていた。

「!?」

 とっさに飛びのいて回避する。



 先ほどまで自分がいたところを見てみると、そこにはメイド服を着た女が刀を構えていた。

(調べた情報では屋敷にいる者は王女とメイドが一人と聞いていたが・・・まさか、あの女が?)

 そのメイドはというと倒れたクオリアを起している。

「大丈夫ですか、お嬢様!」

「えぇ、大丈夫よ。エリカが来てくれて助かったわ」



 エリカと呼ばれたメイドはクオリアの無事を確認するとこちらに刀を向けてくる。それと同時にとてつもないほどの殺気を放つ。

(・・・この状況で王女を殺すのは難しいか。あのメイド、かなりの腕前だ。戦えばただでは済まないだろうな)

 男は窓から飛び出し逃走する。



 幸いにも向こうは追ってくることはなかったので簡単に逃げることが出来た。

 男は逃げきったことを確認し、安全な場所に着くとそこで腰を下ろした。

 今回の失敗は依頼人に伝えた方がいいだろう。一度失敗した以上、向こうは警戒を強めてくるはず。そうなれば、暗殺は難しくなる。

 それに・・・



「確認することが出来たからな・・・」

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